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調査結果2
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「触れないでくれ、お前も分かっていると思うが、奪おうとしたり、食べようとする輩がいるからな」
「こんなもの、相手まで分かりません。仕入れが書いてあるだけじゃないですか、しかも麻薬と書いてあるわけじゃない」
確かに麻薬と書いてあるわけではない、だが現在商会には麻薬が届いている状態だ。だからこそ、今動いたのだ。
「だがここにお前の商会の従業員のサインがある」
自身の名前にしたら、押し付けられなくなる。だが、相手に不信感を抱かせないためにも、受け取りのサインは必要、だから適当に従業員に名前を書かせている。
知らない従業員は受け取りだと思って、サインする。万が一、露呈した時も、おそらく罪を押し付ける駒でもあったのだろう。
「じゃあ、そいつが勝手にやったんでしょう」
「そんなわけないだろう!この者がどうやって、他の者の罪状に紛れ込ますというのだ!既に証拠は陛下に届けてある」
「っな、私ではありません」
「ではソック前伯爵か?」
「父でもありません!どうして信じて下さらないのですか!私がそんなことするはずないではありませんか」
「もう邸にも商会にも王宮から調査が入っている」
「え…」
ソック伯爵は目をギョロギョロと動かし、汗を拭い始めている。薬物も使用しているのかもしれない。
「バートロ伯爵家の事件からか?上手くいって味を占めたのか?」
「…」
「罪深い者だからいいと思ったのか?確かに酷い領主だった。クーデターが起きなくても、なくなっていた家だっただろう」
税を上げる癖に、災害が起きても、自分たちのことばかりで、領地も領民のことも考えず、作物が駄目になっても、お前たちの管理が悪いと言い、聞く耳を持たず、まさに何もしない領主だった。
「そ、そうでしょう…」
「だからと言って、犯してもいない罪をなぜ償わなければならない?」
「どうせ死んだじゃないですか」
「生きていた者もいる」
「あんな奴ら、罪を重くしてやったんだから、有難いと思って欲しいくらいですよ」
「ふざけるな!」
「途中で止めて置けば良かったのに、一度上手くいくと強欲になるんだろうね。麻薬はいい金になっただろうね、連れて行ってくれ」
騎士がソック伯爵の両腕を持つと、醜く顔を歪ませた。
「お偉いさんだって使ってますよ、いいんですか」
「いいんじゃないか?麻薬をやっているようなものは要らないよ」
「このくらい微罪だろう!金が必要なんだよ!領地にだって使っている!皆、有難く使っているさ!」
「麻薬を使った者がどうなるか分からないはずないだろう?どうしてそう考えられないのだ…」
「そんなことは知らない。勝手に使ったんだ。売り先に困らないから、楽な仕事だったよ。あああああ!マスタール侯爵だけなら良かったのに、ずっと気付かなかった!そうだろう?」
「皆を信じていたからな」
「そうだ、そうだよ、やり易かったさ。何が正義のマスタールだ!笑えるな!」
「連れていけ!」
はははははと笑いながら、ソック伯爵は連れて行かれ、マスタール侯爵は何とも言えない気持ちになった。
「娘は?」
「妻が足止めしております。後で王宮に連れて参ります」
妻と息子は既に拘束されていることだろう。
リリンナは何も知らなかったとしても、そのお金を享受していたことは明らかだ。最近もドレスを強請って買って貰っていたそうだ。
ハービスとは離縁とするしかない。子どもたち4人中、誰も結婚していないとなるが、仕方ないことだ。
「そうか…」
「もう一人、話をしなければなりません」
「ああ…」
罪を犯していたのはソック伯爵家だけではなかった。だからこそこれまで上手くいってしまっていたのだ。何が正義のマスタールだと、調査をしながらずっと自分を戒めるしかなかった。
「こんなもの、相手まで分かりません。仕入れが書いてあるだけじゃないですか、しかも麻薬と書いてあるわけじゃない」
確かに麻薬と書いてあるわけではない、だが現在商会には麻薬が届いている状態だ。だからこそ、今動いたのだ。
「だがここにお前の商会の従業員のサインがある」
自身の名前にしたら、押し付けられなくなる。だが、相手に不信感を抱かせないためにも、受け取りのサインは必要、だから適当に従業員に名前を書かせている。
知らない従業員は受け取りだと思って、サインする。万が一、露呈した時も、おそらく罪を押し付ける駒でもあったのだろう。
「じゃあ、そいつが勝手にやったんでしょう」
「そんなわけないだろう!この者がどうやって、他の者の罪状に紛れ込ますというのだ!既に証拠は陛下に届けてある」
「っな、私ではありません」
「ではソック前伯爵か?」
「父でもありません!どうして信じて下さらないのですか!私がそんなことするはずないではありませんか」
「もう邸にも商会にも王宮から調査が入っている」
「え…」
ソック伯爵は目をギョロギョロと動かし、汗を拭い始めている。薬物も使用しているのかもしれない。
「バートロ伯爵家の事件からか?上手くいって味を占めたのか?」
「…」
「罪深い者だからいいと思ったのか?確かに酷い領主だった。クーデターが起きなくても、なくなっていた家だっただろう」
税を上げる癖に、災害が起きても、自分たちのことばかりで、領地も領民のことも考えず、作物が駄目になっても、お前たちの管理が悪いと言い、聞く耳を持たず、まさに何もしない領主だった。
「そ、そうでしょう…」
「だからと言って、犯してもいない罪をなぜ償わなければならない?」
「どうせ死んだじゃないですか」
「生きていた者もいる」
「あんな奴ら、罪を重くしてやったんだから、有難いと思って欲しいくらいですよ」
「ふざけるな!」
「途中で止めて置けば良かったのに、一度上手くいくと強欲になるんだろうね。麻薬はいい金になっただろうね、連れて行ってくれ」
騎士がソック伯爵の両腕を持つと、醜く顔を歪ませた。
「お偉いさんだって使ってますよ、いいんですか」
「いいんじゃないか?麻薬をやっているようなものは要らないよ」
「このくらい微罪だろう!金が必要なんだよ!領地にだって使っている!皆、有難く使っているさ!」
「麻薬を使った者がどうなるか分からないはずないだろう?どうしてそう考えられないのだ…」
「そんなことは知らない。勝手に使ったんだ。売り先に困らないから、楽な仕事だったよ。あああああ!マスタール侯爵だけなら良かったのに、ずっと気付かなかった!そうだろう?」
「皆を信じていたからな」
「そうだ、そうだよ、やり易かったさ。何が正義のマスタールだ!笑えるな!」
「連れていけ!」
はははははと笑いながら、ソック伯爵は連れて行かれ、マスタール侯爵は何とも言えない気持ちになった。
「娘は?」
「妻が足止めしております。後で王宮に連れて参ります」
妻と息子は既に拘束されていることだろう。
リリンナは何も知らなかったとしても、そのお金を享受していたことは明らかだ。最近もドレスを強請って買って貰っていたそうだ。
ハービスとは離縁とするしかない。子どもたち4人中、誰も結婚していないとなるが、仕方ないことだ。
「そうか…」
「もう一人、話をしなければなりません」
「ああ…」
罪を犯していたのはソック伯爵家だけではなかった。だからこそこれまで上手くいってしまっていたのだ。何が正義のマスタールだと、調査をしながらずっと自分を戒めるしかなかった。
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