25 / 67
調査結果1
しおりを挟む
マスタール侯爵は、マット・ソック伯爵を呼び出した。
マットはいつものように仕立てのいい服を着てやって来たが、フォリッチ公爵もいることに酷く驚き、座るように言われるも、後ろには屈強な護衛が4人構えていることに緊張が走った。
「フォリッチ公爵様、マスタール侯爵様、何かあったのでしょうか」
「麻薬の密輸を調査して欲しいんだ」
「ああ、はい、勿論です。てっきり何かあったのかと思いました」
フォリッチ公爵の言葉に、明らかにホッとした表情になり、驚かせないでくださいと言わんばかりの口ぶりだ。
「君はこれまでも麻薬の調査を行っていると聞いている」
「はい、何度かございますので、是非とも、お任せください」
いいカモがやって来たと思っているのだろう、急に生き生きし始めた。証拠が出なければ、紛れ込ませるまで、調査をさせようと思っていた。
だが、事が事だけに、許せない者がきちんといた。
泳がせる必要はないが、フォリッチ公爵は話をしてみたいと言った。
「麻薬の事件はいつまで経ってもなくならない」
「その通りにございます」
「やはり金が欲しくてやるのか」
「そうでございましょう、お金になると言いますから」
「罰されても、また同じことをする者はどう思ってやっておるのかの?もっと重い罰にしなければならないということかと、マスタール侯爵とも考えておったのだ。処刑も視野に入れるべきだと陛下に進言すべきかと、君はどう思う?」
現在、麻薬の所持・使用、密輸・密売も懲役刑である。薬漬けにして、犯罪を犯させるなど、あまりに悪質な場合で、終身刑が最大となっている。
「…そうですね、よろしいかと思います」
「そうか、ならばその心意気で、調査を始めて貰いたい」
「はっ、はい。お任せください。調査対象はどちらでしょうか」
「言っていなかったな、伯爵家だ」
「どちらの伯爵家、もしかして、バール伯爵家でしょうか。最近、羽振りがいいと聞きます」
今一番勢いのある伯爵家と言われている、同じ伯爵家として気に食わなかった。まさか麻薬を扱っているとは、ふざけた真似をしてくれたものだとソック伯爵は思っていた。
「バール伯爵家に君の罪状を紛れ込ませる気か?」
「え?」
「調査はソック伯爵家だよ」
「マット・ソック伯爵。ワインの密輸に、麻薬の密輸に密売、認めるか?」
「マスタール侯爵まで、何の話ですか?もしかして、私を疑ってらっしゃるのですか?私はそのようなことはやっておりません」
さすがにソック伯爵も、冗談ではないとは分かっていることだろうが、罪を認めるわけにはいかないというところだろう。
「金の流れも調べさせてもらった、なぜこんなに金があるのだ?税や商会の売り上げで、ここまでの暮らしは出来ない」
「遺産です」
「誰の遺産だ?」
「前に世話をした者がお礼だと」
「そうか、ならば申告はしていないようだが?収支が合わない」
「忘れておりまして、ははは」
「金は遺産というならば申告をしてからだな。それでワインの密輸に、麻薬の密輸に密売は?」
「私ではありません。なぜそのようなことを?証拠があるんですか!」
「あるさ、私が証拠もなしに話すはずがないだろう?」
マスタール侯爵は仕入れの伝票をソック伯爵の目の前に掲げた。罪を擦り付けるために仕入れの伝票は証拠として必要だったのだろう、従業員から2枚だけ先にこちらに渡して貰っていた。
そして、今頃、ソック伯爵家には王宮から調査員と騎士団員が証拠を押さえるために入っている。後ろの騎士も王宮からの騎士である。
マットはいつものように仕立てのいい服を着てやって来たが、フォリッチ公爵もいることに酷く驚き、座るように言われるも、後ろには屈強な護衛が4人構えていることに緊張が走った。
「フォリッチ公爵様、マスタール侯爵様、何かあったのでしょうか」
「麻薬の密輸を調査して欲しいんだ」
「ああ、はい、勿論です。てっきり何かあったのかと思いました」
フォリッチ公爵の言葉に、明らかにホッとした表情になり、驚かせないでくださいと言わんばかりの口ぶりだ。
「君はこれまでも麻薬の調査を行っていると聞いている」
「はい、何度かございますので、是非とも、お任せください」
いいカモがやって来たと思っているのだろう、急に生き生きし始めた。証拠が出なければ、紛れ込ませるまで、調査をさせようと思っていた。
だが、事が事だけに、許せない者がきちんといた。
泳がせる必要はないが、フォリッチ公爵は話をしてみたいと言った。
「麻薬の事件はいつまで経ってもなくならない」
「その通りにございます」
「やはり金が欲しくてやるのか」
「そうでございましょう、お金になると言いますから」
「罰されても、また同じことをする者はどう思ってやっておるのかの?もっと重い罰にしなければならないということかと、マスタール侯爵とも考えておったのだ。処刑も視野に入れるべきだと陛下に進言すべきかと、君はどう思う?」
現在、麻薬の所持・使用、密輸・密売も懲役刑である。薬漬けにして、犯罪を犯させるなど、あまりに悪質な場合で、終身刑が最大となっている。
「…そうですね、よろしいかと思います」
「そうか、ならばその心意気で、調査を始めて貰いたい」
「はっ、はい。お任せください。調査対象はどちらでしょうか」
「言っていなかったな、伯爵家だ」
「どちらの伯爵家、もしかして、バール伯爵家でしょうか。最近、羽振りがいいと聞きます」
今一番勢いのある伯爵家と言われている、同じ伯爵家として気に食わなかった。まさか麻薬を扱っているとは、ふざけた真似をしてくれたものだとソック伯爵は思っていた。
「バール伯爵家に君の罪状を紛れ込ませる気か?」
「え?」
「調査はソック伯爵家だよ」
「マット・ソック伯爵。ワインの密輸に、麻薬の密輸に密売、認めるか?」
「マスタール侯爵まで、何の話ですか?もしかして、私を疑ってらっしゃるのですか?私はそのようなことはやっておりません」
さすがにソック伯爵も、冗談ではないとは分かっていることだろうが、罪を認めるわけにはいかないというところだろう。
「金の流れも調べさせてもらった、なぜこんなに金があるのだ?税や商会の売り上げで、ここまでの暮らしは出来ない」
「遺産です」
「誰の遺産だ?」
「前に世話をした者がお礼だと」
「そうか、ならば申告はしていないようだが?収支が合わない」
「忘れておりまして、ははは」
「金は遺産というならば申告をしてからだな。それでワインの密輸に、麻薬の密輸に密売は?」
「私ではありません。なぜそのようなことを?証拠があるんですか!」
「あるさ、私が証拠もなしに話すはずがないだろう?」
マスタール侯爵は仕入れの伝票をソック伯爵の目の前に掲げた。罪を擦り付けるために仕入れの伝票は証拠として必要だったのだろう、従業員から2枚だけ先にこちらに渡して貰っていた。
そして、今頃、ソック伯爵家には王宮から調査員と騎士団員が証拠を押さえるために入っている。後ろの騎士も王宮からの騎士である。
465
お気に入りに追加
2,315
あなたにおすすめの小説
永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……
矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。
『もう君はいりません、アリスミ・カロック』
恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。
恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。
『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』
『えっ……』
任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。
私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。
それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。
――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。
※このお話の設定は架空のものです。
※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)
【完結】私を裏切った最愛の婚約者の幸せを願って身を引く事にしました。
Rohdea
恋愛
和平の為に、長年争いを繰り返していた国の王子と愛のない政略結婚する事になった王女シャロン。
休戦中とはいえ、かつて敵国同士だった王子と王女。
てっきり酷い扱いを受けるとばかり思っていたのに婚約者となった王子、エミリオは予想とは違いシャロンを温かく迎えてくれた。
互いを大切に想いどんどん仲を深めていく二人。
仲睦まじい二人の様子に誰もがこのまま、平和が訪れると信じていた。
しかし、そんなシャロンに待っていたのは祖国の裏切りと、愛する婚約者、エミリオの裏切りだった───
※初投稿作『私を裏切った前世の婚約者と再会しました。』
の、主人公達の前世の物語となります。
こちらの話の中で語られていた二人の前世を掘り下げた話となります。
❋注意❋ 二人の迎える結末に変更はありません。ご了承ください。
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
真実の愛は素晴らしい、そう仰ったのはあなたですよ元旦那様?
わらびもち
恋愛
王女様と結婚したいからと私に離婚を迫る旦那様。
分かりました、お望み通り離婚してさしあげます。
真実の愛を選んだ貴方の未来は明るくありませんけど、精々頑張ってくださいませ。
妻の私は旦那様の愛人の一人だった
アズやっこ
恋愛
政略結婚は家と家との繋がり、そこに愛は必要ない。
そんな事、分かっているわ。私も貴族、恋愛結婚ばかりじゃない事くらい分かってる…。
貴方は酷い人よ。
羊の皮を被った狼。優しい人だと、誠実な人だと、婚約中の貴方は例え政略でも私と向き合ってくれた。
私は生きる屍。
貴方は悪魔よ!
一人の女性を護る為だけに私と結婚したなんて…。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 設定ゆるいです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
報われない恋の行方〜いつかあなたは私だけを見てくれますか〜
矢野りと
恋愛
『少しだけ私に時間をくれないだろうか……』
彼はいつだって誠実な婚約者だった。
嘘はつかず私に自分の気持ちを打ち明け、学園にいる間だけ想い人のこともその目に映したいと告げた。
『想いを告げることはしない。ただ見ていたいんだ。どうか、許して欲しい』
『……分かりました、ロイド様』
私は彼に恋をしていた。だから、嫌われたくなくて……それを許した。
結婚後、彼は約束通りその瞳に私だけを映してくれ嬉しかった。彼は誠実な夫となり、私は幸せな妻になれた。
なのに、ある日――彼の瞳に映るのはまた二人になっていた……。
※この作品の設定は架空のものです。
※お話の内容があわないは時はそっと閉じてくださいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる