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調査
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そのリリンナはというと、邸に戻って、ハービスをカゼット侯爵家の夜会のことで問い詰めていた。
「どうしてカゼット侯爵家の夜会のことを教えてくれなかったの!」
「ああ、誘われなかったんだ」
「どうしてよ、あなたの友人じゃない」
「色々あったんだよ」
「もう!私にまでとばっちりじゃない!トリーヌに言われて恥を掻いたわ」
「すまなかった…それより友人との集まりだったんだろう?どうだったんだ?」
「楽しかったわよ」
説教されてイラっとしたけど、それ以外は楽しかった。トリーヌが結婚したら、同じ侯爵家になってしまうけど、それまでは私が一番上っていうのも気分がいい。
「アイレットのことは訂正してくれたのか?」
「あーええ、もちろんよ。皆、驚いていたわ」
「そうか、それなら良かった」
「トリーヌってば、まだ結婚しないんですって」
「慌ててしてもいいことはないからね」
「とにかく、喧嘩か何か知らないけど、今度は参加させてもらうように言ってよ」
「ああ…そうだな」
誘ってくれるかどうかは分からないが、理解はしてくれただろうと思う。だが、当分は難しいかもしれない。リリンナに言ったところで、怒りを助長させるだけだ。
父上もまた忙しくしているようで、私は頼まれた書類の整理に明け暮れている。
アイレットが皆の前で家族との良好な関係を示してくれればと思ったが、父上は修道女になることを変えるつもりはないらしい。誰か断れない縁談でもあればと思うが、現状の私が何を言っても悪い方に取られてしまうのは分かっている。
不出来と言ったことは不味かったが、勉強が出来るからと言って優秀だとは言えない、頭でっかちになって、使えない者もいるとよく聞く。
リリンナも誘われないことで機嫌が悪く、フィーストもあまりうまくいっていない様子、アデリーナはアイレットをまた目の敵にしているようだが、あんな態度でいたら縁談も来るはずがない。
だが、そんなアイレットも勉強だけは出来たという功績だけ持って、修道女になれば、皆の記憶から消えていくのかもしれない。社交界の噂は新しいものに塗り替えられるのが常だ。
ソック伯爵家の調査はハービスにも知らされずに、着々と進んではいたが、仕入れの証拠は厳重に隠してあり、見付けることは出来なかった。
内部告発をしてくれる者を注意深く探していると、弟が麻薬中毒になっているという商会の従業員が見付かった。
「内部告発して貰えませんか、弟君のことはこちらでお守りします」
「マスタール侯爵家、フォリッチ公爵家!?ですが、マスタール侯爵家はソック伯爵家と親しい間柄ではありませんか」
「だからこそです、罪は償わなくてはならない。弟君のような犠牲はあってはならない、気付けず申し訳なかった」
「犠牲者を増やさないためにも協力してくれませんか」
弟も以前は一緒に働いていたが、ソック伯爵に睡眠薬だと麻薬を勧められたそうだ。おそらく試すために使ったのだろう、現在は更生施設に入っているが、人質に取られているようなものだという。
「…麻薬を隠して密輸しています、でもいつの間にか証拠がなくなっているのです」
「なるほど、仕入れの証拠は手に入れられますか」
「金庫にあります」
フォリッチ公爵から使用人も潜入させており、金庫を見張らせてある。
そうとも知らないリリンナは、父であるソック伯爵に、次のお茶会に着て行くドレスを強請りに実家に行っていた。
「お父様、ドレスを買って頂戴」
「ハービス殿に買って貰えないのか?」
「着て行く宛てのないドレスは駄目だって言うの!友人と会う時だって、ドレスは必要なのに分かっていないのよ。マスタール侯爵家ってお金持ちじゃなかったの?」
「よし、ドレスは私が買ってやろう」
「嬉しい!お父様、大好き」
「どうしてカゼット侯爵家の夜会のことを教えてくれなかったの!」
「ああ、誘われなかったんだ」
「どうしてよ、あなたの友人じゃない」
「色々あったんだよ」
「もう!私にまでとばっちりじゃない!トリーヌに言われて恥を掻いたわ」
「すまなかった…それより友人との集まりだったんだろう?どうだったんだ?」
「楽しかったわよ」
説教されてイラっとしたけど、それ以外は楽しかった。トリーヌが結婚したら、同じ侯爵家になってしまうけど、それまでは私が一番上っていうのも気分がいい。
「アイレットのことは訂正してくれたのか?」
「あーええ、もちろんよ。皆、驚いていたわ」
「そうか、それなら良かった」
「トリーヌってば、まだ結婚しないんですって」
「慌ててしてもいいことはないからね」
「とにかく、喧嘩か何か知らないけど、今度は参加させてもらうように言ってよ」
「ああ…そうだな」
誘ってくれるかどうかは分からないが、理解はしてくれただろうと思う。だが、当分は難しいかもしれない。リリンナに言ったところで、怒りを助長させるだけだ。
父上もまた忙しくしているようで、私は頼まれた書類の整理に明け暮れている。
アイレットが皆の前で家族との良好な関係を示してくれればと思ったが、父上は修道女になることを変えるつもりはないらしい。誰か断れない縁談でもあればと思うが、現状の私が何を言っても悪い方に取られてしまうのは分かっている。
不出来と言ったことは不味かったが、勉強が出来るからと言って優秀だとは言えない、頭でっかちになって、使えない者もいるとよく聞く。
リリンナも誘われないことで機嫌が悪く、フィーストもあまりうまくいっていない様子、アデリーナはアイレットをまた目の敵にしているようだが、あんな態度でいたら縁談も来るはずがない。
だが、そんなアイレットも勉強だけは出来たという功績だけ持って、修道女になれば、皆の記憶から消えていくのかもしれない。社交界の噂は新しいものに塗り替えられるのが常だ。
ソック伯爵家の調査はハービスにも知らされずに、着々と進んではいたが、仕入れの証拠は厳重に隠してあり、見付けることは出来なかった。
内部告発をしてくれる者を注意深く探していると、弟が麻薬中毒になっているという商会の従業員が見付かった。
「内部告発して貰えませんか、弟君のことはこちらでお守りします」
「マスタール侯爵家、フォリッチ公爵家!?ですが、マスタール侯爵家はソック伯爵家と親しい間柄ではありませんか」
「だからこそです、罪は償わなくてはならない。弟君のような犠牲はあってはならない、気付けず申し訳なかった」
「犠牲者を増やさないためにも協力してくれませんか」
弟も以前は一緒に働いていたが、ソック伯爵に睡眠薬だと麻薬を勧められたそうだ。おそらく試すために使ったのだろう、現在は更生施設に入っているが、人質に取られているようなものだという。
「…麻薬を隠して密輸しています、でもいつの間にか証拠がなくなっているのです」
「なるほど、仕入れの証拠は手に入れられますか」
「金庫にあります」
フォリッチ公爵から使用人も潜入させており、金庫を見張らせてある。
そうとも知らないリリンナは、父であるソック伯爵に、次のお茶会に着て行くドレスを強請りに実家に行っていた。
「お父様、ドレスを買って頂戴」
「ハービス殿に買って貰えないのか?」
「着て行く宛てのないドレスは駄目だって言うの!友人と会う時だって、ドレスは必要なのに分かっていないのよ。マスタール侯爵家ってお金持ちじゃなかったの?」
「よし、ドレスは私が買ってやろう」
「嬉しい!お父様、大好き」
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