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バートロ伯爵家の罪5
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「調査はマスタール侯爵の方が上手だろうからね、私は調べにくいだろうから、引き続きソック伯爵家を調べよう。アイレット嬢は私が送るよ、我が家と関りがあると思わせておいた方が都合がいい」
「ありがとうございます、よろしくお願いいたします」
マスタール侯爵はフォリッチ公爵の力を借りて、調査に乗り出すことになった。内部に仲間がいるかもしれないということで、慎重に動く必要がある。
バートロ伯爵家に関しては証拠も少なく、アイレットが言ったことが全てであったが、他の2件に関しては再調査が必要だ。微罪とは言い難いが、フォリッチ公爵が言うように大きな事件の裏に隠してあるように感じる。
1つはバートロ伯爵家のクーデター、1つはカットリーオ商会の人身売買。そしてもう1つはサオン子爵家の麻薬の製造と密売、まさに麻薬の事件であった。
ディオス・マスタールは邸ではなく、王宮の自身の執務室で、トワス・ビイズとこれからの調査について話し合い、方針を固めた。事実ならば、責任を取らなくてはいけない立場だ、無論、隠そうという気はない。
フォリッチ公爵なら秘密裏に調べることが出来ただろうが、見付けたのがアイレットで良かった。アイレットは事情を知っているが、むやみに誰かに話すことはない。それよりも、アイレットとこんなにも言葉を交わしたこと自体が初めてであった。
きっかけは違和感だったのだろうが、探れば探るほど、疑わしい。事実でなければいいと思うが、心証としては疑わざる得ない。
トワスに指示を出し、疲労困憊で邸に戻り、お茶を飲んでいると、ようやくアイレットも帰って来た。フォリッチ公爵と話でもしていたのだろう。
「フォリッチ公爵様に送って貰ったのか?」
「いえ、トレース様とパルシエ様が送ってくださいました」
「そうか」
パルシエ様とアイレットは同じ年だったはずだ、面識があったのだろうか。
「知り合いだったのか?」
「パルシエ様とは学園で挨拶はしたことがありますが、トレース様は初めてお会いしました」
「そうだったのか」
「どういうこと!」
面倒な者に見付かってしまった、扉を開けたまま話していたので、アデリーナに聞こえてしまったようだ。
「何でアイレットがトレース様なんて言ってるの!」
「お姉様、私は妹君のパルシエ様に招かれただけです。そこにトレース様がいらっしゃっただけです」
「どうして名前呼んでいるのよ!」
「それはフォリッチ公爵令息様と呼ぶのは長いから、そう呼んでくれとおっしゃったからです。そう言われて、呼ばない方が失礼ではありませんか」
「そう言って、トレース様が自分を好きだなんて思っていないでしょうね?ああ、恥ずかしい。お子様は勘違いしない方が身のためよ」
名前を呼ぶ許可を貰って、浮かれているんじゃないの!イライラする。
「アデリーナ、お前がとやかく言うことではない」
「でも、なんであんたがフォリッチ公爵家と関わる必要があるのよ!」
一時は自分が嫁ぐはずだった場所にアイレットが行っていたことが許せない。あの時、余計なことを言わなければ、もう嫁いでいたかもしれない。そもそも、アイレットなんていなければ良かったのにとすら思っている。
「ですからパルシエ様に招かれたと申し上げています」
「じゃあ、私を褒めてくれたの!変なこと言ってないでしょうね」
「アデリーナ!いい加減にしなさい、お前は何を言っているんだ!」
ふんと言いながら、アデリーナは去って行った。
「前にトレース様と縁談があったのだが、上手くいかなかったんだ」
「そうでしたか、もう部屋に戻ってよろしいですか」
「アイレット、今日はありがとう」
「いえ、全ては偶然ですから」
夕食でもアデリーナは面白くなかったようで、アイレットを見ては睨み付けており、父はこれでは縁談など来るはずないと感じた。
「ありがとうございます、よろしくお願いいたします」
マスタール侯爵はフォリッチ公爵の力を借りて、調査に乗り出すことになった。内部に仲間がいるかもしれないということで、慎重に動く必要がある。
バートロ伯爵家に関しては証拠も少なく、アイレットが言ったことが全てであったが、他の2件に関しては再調査が必要だ。微罪とは言い難いが、フォリッチ公爵が言うように大きな事件の裏に隠してあるように感じる。
1つはバートロ伯爵家のクーデター、1つはカットリーオ商会の人身売買。そしてもう1つはサオン子爵家の麻薬の製造と密売、まさに麻薬の事件であった。
ディオス・マスタールは邸ではなく、王宮の自身の執務室で、トワス・ビイズとこれからの調査について話し合い、方針を固めた。事実ならば、責任を取らなくてはいけない立場だ、無論、隠そうという気はない。
フォリッチ公爵なら秘密裏に調べることが出来ただろうが、見付けたのがアイレットで良かった。アイレットは事情を知っているが、むやみに誰かに話すことはない。それよりも、アイレットとこんなにも言葉を交わしたこと自体が初めてであった。
きっかけは違和感だったのだろうが、探れば探るほど、疑わしい。事実でなければいいと思うが、心証としては疑わざる得ない。
トワスに指示を出し、疲労困憊で邸に戻り、お茶を飲んでいると、ようやくアイレットも帰って来た。フォリッチ公爵と話でもしていたのだろう。
「フォリッチ公爵様に送って貰ったのか?」
「いえ、トレース様とパルシエ様が送ってくださいました」
「そうか」
パルシエ様とアイレットは同じ年だったはずだ、面識があったのだろうか。
「知り合いだったのか?」
「パルシエ様とは学園で挨拶はしたことがありますが、トレース様は初めてお会いしました」
「そうだったのか」
「どういうこと!」
面倒な者に見付かってしまった、扉を開けたまま話していたので、アデリーナに聞こえてしまったようだ。
「何でアイレットがトレース様なんて言ってるの!」
「お姉様、私は妹君のパルシエ様に招かれただけです。そこにトレース様がいらっしゃっただけです」
「どうして名前呼んでいるのよ!」
「それはフォリッチ公爵令息様と呼ぶのは長いから、そう呼んでくれとおっしゃったからです。そう言われて、呼ばない方が失礼ではありませんか」
「そう言って、トレース様が自分を好きだなんて思っていないでしょうね?ああ、恥ずかしい。お子様は勘違いしない方が身のためよ」
名前を呼ぶ許可を貰って、浮かれているんじゃないの!イライラする。
「アデリーナ、お前がとやかく言うことではない」
「でも、なんであんたがフォリッチ公爵家と関わる必要があるのよ!」
一時は自分が嫁ぐはずだった場所にアイレットが行っていたことが許せない。あの時、余計なことを言わなければ、もう嫁いでいたかもしれない。そもそも、アイレットなんていなければ良かったのにとすら思っている。
「ですからパルシエ様に招かれたと申し上げています」
「じゃあ、私を褒めてくれたの!変なこと言ってないでしょうね」
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ふんと言いながら、アデリーナは去って行った。
「前にトレース様と縁談があったのだが、上手くいかなかったんだ」
「そうでしたか、もう部屋に戻ってよろしいですか」
「アイレット、今日はありがとう」
「いえ、全ては偶然ですから」
夕食でもアデリーナは面白くなかったようで、アイレットを見ては睨み付けており、父はこれでは縁談など来るはずないと感じた。
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