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バートロ伯爵家の罪1
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アイレットは王宮図書館にいた。修道院に入る前に、最後に今は亡き、生家であるバートロ伯爵家の事件のことを見ておきたかった。現祖父と父が監査をして、あぶり出された事件ではあったが、父側ではなく、中立な立場から事件を知りたい。
確かに前世は裕福で、困ることのない生活をしていたことは事実で、冤罪などとは思っていないが、見せてくださいと言って見せて貰えるものなのか分からないが、教師に相談してみることにした。
「家族がよく話して議論していたので、詳しい資料などを読んでみたいのですが、許可が下りますか」
「聞いてみましょう」
すると学年1位のマスタールのご令嬢が読んでみたいというのなら、読ませてみたいと言って貰えて、なぜかフォリッチ公爵が動いてくれたそうだ。おかげで図書館の特別個室で、事件の資料や、罪状、処罰までもが並べられている。
「ありがとうございます」
「いや、御父上に頼んでも良かっただろうに」
「おそらく、父側の意見しかないのではないかと思ったのです。毎回、同じことしか言っておりませんでしたので」
「ははは。それは手厳しい。だが、私も興味がある」
「冤罪などと言うつもりはありませんので、心配しないでください」
「そうか、何か足りないものがあれば、そこの彼に言いなさい。私に伝えてくれるようになっている」
「トワス・ビイズと申します、よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いいたします」
アイレットは罪状に、証拠となる資料を読み進めた、生き残った使用人からの証言もあり、あの時、彼が言ったことは間違いではなかった。
両親は子どもに興味のない人たちだった。
領民に耳を貸さず、子どもの連れ去りには関与していないが、何もしない領主ということで、目を付けられたのだろうということだ。
邸の間取り図には懐かしい気持ちになった。私の部屋に、両親の部屋に、そしてあの人がいた部屋。遺体は邸と共に、崩れ落ちたのだろう。
胸が苦しくなったが、間取り図にワイン貯蔵庫と書かれていることが気になった。両親も祖父もなぜかワインを好まなかった。ゆえにワイン貯蔵庫などない。私も何度か行ったことがあるが、ワイン貯蔵庫となっているのはただの物置で、食料貯蔵庫はキッチンの側にあったはずだ。客用のワインなどもそこに置いてあったはずだ。
罪状には高級ワインを安いワインのラベルに変えて、ワインを密輸したとあった。お酒と言えば、祖父と父がたまにウイスキーを飲んでいたくらいだ。客人にはお勧めされたワインだと言って出していたが、飲みもしない、味も分からないものをわざわざ密輸するだろうか。
購入リストにもワインは客が来る時にしか注文していない。年に数回だけだ。だが、ワイン貯蔵庫には密輸された割れたワインが沢山あったと書いてある。売るために隠していたのか、だがワインは温度管理が必要だと聞く。このワイン貯蔵庫は元々ただの部屋だった場所だ。温度管理などされていない。
おかしいと感じるがこれといった証拠は出せない。処刑された娘だと言っても誰も信じないだろう。管理が杜撰だったと言われればそれまでだ。
だが、焼け落ちてどこか分からないはずなのに、わざわざワイン貯蔵庫と書いた者がいる。ワインがあったから適当に書いたのかもしれないが、私が最後に見た時は使わなくなった食器が置いてあったくらいだ。
税を上げてまで贅沢をしていたのなら、お金のために好まないとしても、高級ワインを物置に置くとは考えられない。
「ビイズ様、ワインの密輸とありますが、この銘柄は高級ワインなのでしょうか」
「えっと、はい、これは高級ワインですね。輸入の税が高くなりますから、密輸したのでしょう」
「何か気になりますか」
「お願いがあるのですが」
「はい、何なりとお申し付けください」
「ワインの密輸に似た、お酒などの密輸の事件で、マスタールが関わった案件を調べることは出来ますか」
確かに前世は裕福で、困ることのない生活をしていたことは事実で、冤罪などとは思っていないが、見せてくださいと言って見せて貰えるものなのか分からないが、教師に相談してみることにした。
「家族がよく話して議論していたので、詳しい資料などを読んでみたいのですが、許可が下りますか」
「聞いてみましょう」
すると学年1位のマスタールのご令嬢が読んでみたいというのなら、読ませてみたいと言って貰えて、なぜかフォリッチ公爵が動いてくれたそうだ。おかげで図書館の特別個室で、事件の資料や、罪状、処罰までもが並べられている。
「ありがとうございます」
「いや、御父上に頼んでも良かっただろうに」
「おそらく、父側の意見しかないのではないかと思ったのです。毎回、同じことしか言っておりませんでしたので」
「ははは。それは手厳しい。だが、私も興味がある」
「冤罪などと言うつもりはありませんので、心配しないでください」
「そうか、何か足りないものがあれば、そこの彼に言いなさい。私に伝えてくれるようになっている」
「トワス・ビイズと申します、よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いいたします」
アイレットは罪状に、証拠となる資料を読み進めた、生き残った使用人からの証言もあり、あの時、彼が言ったことは間違いではなかった。
両親は子どもに興味のない人たちだった。
領民に耳を貸さず、子どもの連れ去りには関与していないが、何もしない領主ということで、目を付けられたのだろうということだ。
邸の間取り図には懐かしい気持ちになった。私の部屋に、両親の部屋に、そしてあの人がいた部屋。遺体は邸と共に、崩れ落ちたのだろう。
胸が苦しくなったが、間取り図にワイン貯蔵庫と書かれていることが気になった。両親も祖父もなぜかワインを好まなかった。ゆえにワイン貯蔵庫などない。私も何度か行ったことがあるが、ワイン貯蔵庫となっているのはただの物置で、食料貯蔵庫はキッチンの側にあったはずだ。客用のワインなどもそこに置いてあったはずだ。
罪状には高級ワインを安いワインのラベルに変えて、ワインを密輸したとあった。お酒と言えば、祖父と父がたまにウイスキーを飲んでいたくらいだ。客人にはお勧めされたワインだと言って出していたが、飲みもしない、味も分からないものをわざわざ密輸するだろうか。
購入リストにもワインは客が来る時にしか注文していない。年に数回だけだ。だが、ワイン貯蔵庫には密輸された割れたワインが沢山あったと書いてある。売るために隠していたのか、だがワインは温度管理が必要だと聞く。このワイン貯蔵庫は元々ただの部屋だった場所だ。温度管理などされていない。
おかしいと感じるがこれといった証拠は出せない。処刑された娘だと言っても誰も信じないだろう。管理が杜撰だったと言われればそれまでだ。
だが、焼け落ちてどこか分からないはずなのに、わざわざワイン貯蔵庫と書いた者がいる。ワインがあったから適当に書いたのかもしれないが、私が最後に見た時は使わなくなった食器が置いてあったくらいだ。
税を上げてまで贅沢をしていたのなら、お金のために好まないとしても、高級ワインを物置に置くとは考えられない。
「ビイズ様、ワインの密輸とありますが、この銘柄は高級ワインなのでしょうか」
「えっと、はい、これは高級ワインですね。輸入の税が高くなりますから、密輸したのでしょう」
「何か気になりますか」
「お願いがあるのですが」
「はい、何なりとお申し付けください」
「ワインの密輸に似た、お酒などの密輸の事件で、マスタールが関わった案件を調べることは出来ますか」
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