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長兄の後悔2

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「君のようにちゃんと間違いだったと、周囲にも言った方がいい。自分でどんどん価値を下げている」
「妹君に嫌がらせのようなことは、していないよな?」
「それはもちろんだ、話し掛けてくることもないから、誰もまともに話したこともないはずだ」

 ハービスは何度かアイレットに話し掛けたが、何を話せばいいか分からず、結局は体調や、学園で不便はないかなどと差しさわりのない会話しか出来なかった。

「だからずっと1位だったなんて」
「私だったら親に言ってしまうな」
「順位が貼り出されることを知らなかったそうだ」
「「「は?」」」
「驚くよな、順位に興味がないんだ」
「天才というのはそういうものなのかもしれないな」
「学園でもそうらしいよ。本を読んでいたり、勉強をしていたりで、話し掛ける隙もないらしい。皆はそれを眺めているのが日常らしい」
「そうなのか…」

 まともに話したこともないが、友人が訪ねて来ることも、教会と図書館に行くところ以外見たことがない。

「ああ、弟が学園に通っているからね。ダンスだけはあまり得意ではなかったそうだが、どんどん上達しているってさ。ポテンシャルが高いんだろうな。弟は30位になって喜んでいたけど、順位など関係ないか、そうだよな、身に付いていればいい話だ。帰ったら話してやろう」
「ああ、本人も全く同じことを言っていたよ…」
「1位の言葉なら説得力があるな」

 アイレットは学園で目立とうとしなくとも、目立ってしまっているのだろう。ずっと1位など家族に話す機会も多いだろう、ということは、皆アイレットが優秀だと知っているということ。それなのに、自身の成績を棚に上げて、不出来だと言ってしまっていたことは、滑稽でしかないだろう。

「縁談も多いんじゃないか」
「いや、妹は進路を決めているから」
「王宮にでもスカウトされたか?」
「えっ」
「あの頭脳だ、スカウトがあってもおかしくないだろう」

 成績が上位の者は素行が悪いものは除くが、スカウトされることもあるということは聞いている。だがアイレットは受けても行かないだろう。

「いや、修道女になりたいそうなんだ」
「はあ?」
「幼い頃から毎週、欠かさず礼拝に通って、本人が望んでいるんだよ」
「そうなのか…勿体ないと思う者も多いだろうな」

 3人にはとても残念な顔をしている。これがアイレットの世間の評判なのだろう。

 リリンナにも誤りであったことをきちんと伝えなくてはならないと思った。弟と妹から聞いた時に伝えて置くべきだったが、私ですら関わりがほぼないのに、直接関係はないだろうと話さなかったのだ。

「リリンナ、アイレットを不出来だというのは間違いだった」
「え?」
「私の言葉を信じたのだろうが、事実ではなかった。成績も礼儀も優秀だった。だからもう咎めるようなことを言うのは控えてくれ。出来れば周りに言ったのなら訂正しておいた方がいい」

 さすがに遠巻きにされているのは女性は敏感に気付くというから、私が言わなくても分かるだろう。

「私はそこまで言っておりませんが…」
「私のせいなのは分かっている。だが、不出来は誤りだった。きちんと認めなくてはならない」
「分かりましたわ、今度ちゃんと訂正しておきますわ」
「そうした方がいい、すまなかった」

 だが、リリンナは訂正することはなかった。ハービスから修道女になると聞いている義妹なんてどうでもいいからだ。それよりも誘いがなくなった、皆忙しいのかしらと、気付くことはなかった。

 ハービスは自身で分かるだろうと言葉足らずなことが多く、せめてきちんと話すべきだっただろう。
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