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結婚したい姉
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部屋に戻ったアデリーナは侍女を下がらせて、クッションを叩き付けた。
「どうしてよ、やっぱり婚約は継続したっていうことなの!」
もしかして、来るはずないとおっしゃっていたけど、実はお父様が反対したのかしら?婚約者がいるような令息は絶対に嫌うものね。お気持ちだけでも伝えておけば良かったのかしら…でも今さら言えないわ。
マスタールの娘じゃなければ、話し掛けてみることも出来ただろうが、生まれた定めだもの、仕方ないと思うしかない。
でも周りは皆、結婚しているのに、どうして私だけが出来ないのよ。
お父様も何かしてみたらいいと言っていたけど、慈善事業でもしろというの?何をしたらいいか分からない。お兄様のように父の補佐でもさせてくれればいいのに。
フィーストお兄様が上手く言っていないのは、私だけじゃないと思えて、ちょっと救いだった。アイレットは修道女になるのだから関係ない。縁談なんてあんな陰気な子にあるわけがない。比べるまでもないこと。
それでも待つだけでは駄目だと実感したアデリーナは、あの新調したドレスを着て、パーティーに参加した。ジェイスとキアーナも2人で参加しており、ただ見つめるしかなかった。
友人であるスチューノ・マルドアが声を掛けて来た。スチューノももちろん結婚していて、マルドア侯爵家に嫁いでいる。
「ジェイス様とキアーナ様、ついに結婚されるそうよ」
「そ、そうなの?」
「ジェイス様に恋慕した令嬢が上手く言っていないって、噂を流して仲違いさせたかったようだけど、噂のせいでようやく結婚することになったんですって、おかげで背中を押したお馬鹿さんってわけよ」
「嘘だったの?」
「そうよ、よく喧嘩はしているけど、いつものことだもの。いつ結婚するかだけだったのよ、入る余地なんてなしよ」
「そう、おめでたいことね」
思ってもいなかったが、そう言うしかない。スチューノに勘違いしたなんて恥ずかしくて言えない。でもお父様の言ったことは何だったのだろうか、別の誰かのことだったのだろうか。まさかルミナが…フィーストお兄様に聞いてみようと思った。
「アデリーナもいい出会いがあるわよ」
「そうかしら…もう自信がないわ」
「まあ、妹のことを言い過ぎたのは良くなかったわね」
スチューノにはアイレットのことで縁談を断られたことを話していた。スチューノもその時は知らなかったが、その後でアデリーナはのことを咎めるような話をいくつか聞いたが、アデリーナには言えなかった。
スチューノもアイレットに会ったことはあったが、挨拶を交わす程度で、アデリーナから不出来だというのを聞かされていたので、信じていた。だが覆しようもない学園での事実は間違っていたとしか言えない。同調はしていたが、一緒になって糾弾しなくて良かったとすら思っていた。
「私だって知っていたら言わなかったわ」
「そうよね」
結局、パーティーでは結婚していない令息との縁はなかった。
下位貴族であれば、侯爵家と縁続きになれるならと喜ぶ者も多いだろうが、アデリーナは結婚相手は高位貴族以上だと思っているため、話をすることもない。
高位貴族はというとアイレットを暗いというだけで、不出来だと言っていたことを直接聞いたり、周りから聞いて知っているので、アデリーナはの正義のマスタールという部分は疑われてもいる。
ハービスとフィーストも同じではあったが、二人は知らなかったが、恥ずかしいのは私たちの方だったと反省を口にするようになった。本心かはともかく見せかけだけでも、二人は過ちを認めていた。
ただアデリーナはアイレットは勉強はたまたま出来る子だっただけ、勉強は出来ると言ってくれれば不出来など言うことはなかったと、結局変わらなかった。
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本日もお読みいただきありがとうございます。
連載中の投稿をすべて同じ時間にしていたので、
こちらは12時に変更させていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
「どうしてよ、やっぱり婚約は継続したっていうことなの!」
もしかして、来るはずないとおっしゃっていたけど、実はお父様が反対したのかしら?婚約者がいるような令息は絶対に嫌うものね。お気持ちだけでも伝えておけば良かったのかしら…でも今さら言えないわ。
マスタールの娘じゃなければ、話し掛けてみることも出来ただろうが、生まれた定めだもの、仕方ないと思うしかない。
でも周りは皆、結婚しているのに、どうして私だけが出来ないのよ。
お父様も何かしてみたらいいと言っていたけど、慈善事業でもしろというの?何をしたらいいか分からない。お兄様のように父の補佐でもさせてくれればいいのに。
フィーストお兄様が上手く言っていないのは、私だけじゃないと思えて、ちょっと救いだった。アイレットは修道女になるのだから関係ない。縁談なんてあんな陰気な子にあるわけがない。比べるまでもないこと。
それでも待つだけでは駄目だと実感したアデリーナは、あの新調したドレスを着て、パーティーに参加した。ジェイスとキアーナも2人で参加しており、ただ見つめるしかなかった。
友人であるスチューノ・マルドアが声を掛けて来た。スチューノももちろん結婚していて、マルドア侯爵家に嫁いでいる。
「ジェイス様とキアーナ様、ついに結婚されるそうよ」
「そ、そうなの?」
「ジェイス様に恋慕した令嬢が上手く言っていないって、噂を流して仲違いさせたかったようだけど、噂のせいでようやく結婚することになったんですって、おかげで背中を押したお馬鹿さんってわけよ」
「嘘だったの?」
「そうよ、よく喧嘩はしているけど、いつものことだもの。いつ結婚するかだけだったのよ、入る余地なんてなしよ」
「そう、おめでたいことね」
思ってもいなかったが、そう言うしかない。スチューノに勘違いしたなんて恥ずかしくて言えない。でもお父様の言ったことは何だったのだろうか、別の誰かのことだったのだろうか。まさかルミナが…フィーストお兄様に聞いてみようと思った。
「アデリーナもいい出会いがあるわよ」
「そうかしら…もう自信がないわ」
「まあ、妹のことを言い過ぎたのは良くなかったわね」
スチューノにはアイレットのことで縁談を断られたことを話していた。スチューノもその時は知らなかったが、その後でアデリーナはのことを咎めるような話をいくつか聞いたが、アデリーナには言えなかった。
スチューノもアイレットに会ったことはあったが、挨拶を交わす程度で、アデリーナから不出来だというのを聞かされていたので、信じていた。だが覆しようもない学園での事実は間違っていたとしか言えない。同調はしていたが、一緒になって糾弾しなくて良かったとすら思っていた。
「私だって知っていたら言わなかったわ」
「そうよね」
結局、パーティーでは結婚していない令息との縁はなかった。
下位貴族であれば、侯爵家と縁続きになれるならと喜ぶ者も多いだろうが、アデリーナは結婚相手は高位貴族以上だと思っているため、話をすることもない。
高位貴族はというとアイレットを暗いというだけで、不出来だと言っていたことを直接聞いたり、周りから聞いて知っているので、アデリーナはの正義のマスタールという部分は疑われてもいる。
ハービスとフィーストも同じではあったが、二人は知らなかったが、恥ずかしいのは私たちの方だったと反省を口にするようになった。本心かはともかく見せかけだけでも、二人は過ちを認めていた。
ただアデリーナはアイレットは勉強はたまたま出来る子だっただけ、勉強は出来ると言ってくれれば不出来など言うことはなかったと、結局変わらなかった。
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