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試験結果1
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「ルミナに婚約を白紙にして欲しいと言われました」
「な、なぜだ」
「正義のマスタール家に恥ずかしくないよう、嫌がらせに遭っている子を助けたら、もっと酷い目に遭うようになったと…」
「どこの家だ!」
「…顔を見たら分かると思うのですが、名前は憶えていません。見掛けたら話し掛けてはいましたが、ルミナは知っているようでした。どうすれば良かったのですか」
「学園に知らせて、任せていたら良かったっていうの!」
「確かに学園には知らせるべきだっただろうな。だが助けられた子だっているのではないか」
「そうですね」「そうよ!お兄様!」
助けられた者もいただろうが、苦しんでいる方が、浮き彫りになることを分かっていなかった。良きことよりも、悪いことの方が、話に上がるのだ。
「あとルミナがアイレットが優秀だと言っていたのですが」
「そうよ、ずっと1位だと」
「は?」
「ああ、違うんですね。何だ、やっぱりそうではないかと思っていたんですよ」
「やっぱりね」
父は机の引き出しを探って、底からアイレットの成績表を見付け出すも、確かに点数は高い。でも皆も同じようなものだと思っていた。3人は今回は何番だったなどと言って来ていたが、アイレットは何も言って来ないことから、言って来るほどでもなかったと判断していた。
「1位とは書かれていないが、これはどうなんだ?」
そこには100点満点もあり、それ以外もほぼ全て90点台の点数しか並んでいなかった。ダンスだけが唯一70点台なだけである。
「っな」「嘘でしょう」
「お前たちも同じくらいだっただろう?」
「いえ、私もさすがに満点なんて取ったことがありませんし、50点台があったこともあります」
「私もです…」
「あの子は、そんなに優秀だったのか…」
「あああああ!」
アデリーナが突然、叫び声を上げて、頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「どうしたんだ?」
「役不足、役不足です。アイレットのことをマスタールなのに、出来が良くないと言っていました…」
アデリーナは茶会や夜会で、そして縁談の顔合わせの際も、アイレットの名前が出れば、マスタールなのに恥ずかしい、出来が悪いと吹聴していた。
「それで断られたというのか」
「そりゃそうだよな、こんな点のアイレットを出来が良くないと言えば、アデリーナはもっと良いということになってしまう。だがそうではないと相手が知っていたとすれば…」
知っていた者にはアデリーナは、何を言っているんだ?姉の方はもっと成績が良かったかと思い、同級生にでも聞けばそうではないことは分かる。
「あああああ…そんな」
「おそらく、皆、アイレットの成績を知っている者が近くにいたり、聞いたりしたんだろう」
「何で、アイレットは言わないのよ!!」
「あの陰気なアイレットが1位だったの!なんていうはずないだろ」
誰もが嬉しそうに1位だったというアイレットの表情が想像できなかった。自分たちが聞いてあげなくてはならなかったのだ。
父に呼ばれて、アイレットが執務室に行くと、悩ましい表情をした父がいた。
「アイレット、ずっと成績が1位だったんだな」
「?」
「こういうことは伝えるべきことなんだ」
「何の話ですか?1位?」
「1位ではないのか?」
「1位なんてどこに書いてあったのでしょうか?」
アイレットはどこかに書いてあったのだろうか、答案用紙だろうか?成績表だろうかと思い出していた。
「試験の結果は貼り出されるだろう?」
「そうなんですか、知りませんでした」
「え?知らなかったのか」
「はい、知りません。私が見たのは答案用紙と成績表だけです」
「そうか…」
「もういいですか、1位だろうが、100位だろうが、何でもいいです」
1位だということに驚きもせず、貼り出されることに少し驚いた程度であった。父も周りから褒められていたのはアイレットのことだったのかと、ようやく理解した。
「な、なぜだ」
「正義のマスタール家に恥ずかしくないよう、嫌がらせに遭っている子を助けたら、もっと酷い目に遭うようになったと…」
「どこの家だ!」
「…顔を見たら分かると思うのですが、名前は憶えていません。見掛けたら話し掛けてはいましたが、ルミナは知っているようでした。どうすれば良かったのですか」
「学園に知らせて、任せていたら良かったっていうの!」
「確かに学園には知らせるべきだっただろうな。だが助けられた子だっているのではないか」
「そうですね」「そうよ!お兄様!」
助けられた者もいただろうが、苦しんでいる方が、浮き彫りになることを分かっていなかった。良きことよりも、悪いことの方が、話に上がるのだ。
「あとルミナがアイレットが優秀だと言っていたのですが」
「そうよ、ずっと1位だと」
「は?」
「ああ、違うんですね。何だ、やっぱりそうではないかと思っていたんですよ」
「やっぱりね」
父は机の引き出しを探って、底からアイレットの成績表を見付け出すも、確かに点数は高い。でも皆も同じようなものだと思っていた。3人は今回は何番だったなどと言って来ていたが、アイレットは何も言って来ないことから、言って来るほどでもなかったと判断していた。
「1位とは書かれていないが、これはどうなんだ?」
そこには100点満点もあり、それ以外もほぼ全て90点台の点数しか並んでいなかった。ダンスだけが唯一70点台なだけである。
「っな」「嘘でしょう」
「お前たちも同じくらいだっただろう?」
「いえ、私もさすがに満点なんて取ったことがありませんし、50点台があったこともあります」
「私もです…」
「あの子は、そんなに優秀だったのか…」
「あああああ!」
アデリーナが突然、叫び声を上げて、頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「どうしたんだ?」
「役不足、役不足です。アイレットのことをマスタールなのに、出来が良くないと言っていました…」
アデリーナは茶会や夜会で、そして縁談の顔合わせの際も、アイレットの名前が出れば、マスタールなのに恥ずかしい、出来が悪いと吹聴していた。
「それで断られたというのか」
「そりゃそうだよな、こんな点のアイレットを出来が良くないと言えば、アデリーナはもっと良いということになってしまう。だがそうではないと相手が知っていたとすれば…」
知っていた者にはアデリーナは、何を言っているんだ?姉の方はもっと成績が良かったかと思い、同級生にでも聞けばそうではないことは分かる。
「あああああ…そんな」
「おそらく、皆、アイレットの成績を知っている者が近くにいたり、聞いたりしたんだろう」
「何で、アイレットは言わないのよ!!」
「あの陰気なアイレットが1位だったの!なんていうはずないだろ」
誰もが嬉しそうに1位だったというアイレットの表情が想像できなかった。自分たちが聞いてあげなくてはならなかったのだ。
父に呼ばれて、アイレットが執務室に行くと、悩ましい表情をした父がいた。
「アイレット、ずっと成績が1位だったんだな」
「?」
「こういうことは伝えるべきことなんだ」
「何の話ですか?1位?」
「1位ではないのか?」
「1位なんてどこに書いてあったのでしょうか?」
アイレットはどこかに書いてあったのだろうか、答案用紙だろうか?成績表だろうかと思い出していた。
「試験の結果は貼り出されるだろう?」
「そうなんですか、知りませんでした」
「え?知らなかったのか」
「はい、知りません。私が見たのは答案用紙と成績表だけです」
「そうか…」
「もういいですか、1位だろうが、100位だろうが、何でもいいです」
1位だということに驚きもせず、貼り出されることに少し驚いた程度であった。父も周りから褒められていたのはアイレットのことだったのかと、ようやく理解した。
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