5 / 67
試験結果1
しおりを挟む
「ルミナに婚約を白紙にして欲しいと言われました」
「な、なぜだ」
「正義のマスタール家に恥ずかしくないよう、嫌がらせに遭っている子を助けたら、もっと酷い目に遭うようになったと…」
「どこの家だ!」
「…顔を見たら分かると思うのですが、名前は憶えていません。見掛けたら話し掛けてはいましたが、ルミナは知っているようでした。どうすれば良かったのですか」
「学園に知らせて、任せていたら良かったっていうの!」
「確かに学園には知らせるべきだっただろうな。だが助けられた子だっているのではないか」
「そうですね」「そうよ!お兄様!」
助けられた者もいただろうが、苦しんでいる方が、浮き彫りになることを分かっていなかった。良きことよりも、悪いことの方が、話に上がるのだ。
「あとルミナがアイレットが優秀だと言っていたのですが」
「そうよ、ずっと1位だと」
「は?」
「ああ、違うんですね。何だ、やっぱりそうではないかと思っていたんですよ」
「やっぱりね」
父は机の引き出しを探って、底からアイレットの成績表を見付け出すも、確かに点数は高い。でも皆も同じようなものだと思っていた。3人は今回は何番だったなどと言って来ていたが、アイレットは何も言って来ないことから、言って来るほどでもなかったと判断していた。
「1位とは書かれていないが、これはどうなんだ?」
そこには100点満点もあり、それ以外もほぼ全て90点台の点数しか並んでいなかった。ダンスだけが唯一70点台なだけである。
「っな」「嘘でしょう」
「お前たちも同じくらいだっただろう?」
「いえ、私もさすがに満点なんて取ったことがありませんし、50点台があったこともあります」
「私もです…」
「あの子は、そんなに優秀だったのか…」
「あああああ!」
アデリーナが突然、叫び声を上げて、頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「どうしたんだ?」
「役不足、役不足です。アイレットのことをマスタールなのに、出来が良くないと言っていました…」
アデリーナは茶会や夜会で、そして縁談の顔合わせの際も、アイレットの名前が出れば、マスタールなのに恥ずかしい、出来が悪いと吹聴していた。
「それで断られたというのか」
「そりゃそうだよな、こんな点のアイレットを出来が良くないと言えば、アデリーナはもっと良いということになってしまう。だがそうではないと相手が知っていたとすれば…」
知っていた者にはアデリーナは、何を言っているんだ?姉の方はもっと成績が良かったかと思い、同級生にでも聞けばそうではないことは分かる。
「あああああ…そんな」
「おそらく、皆、アイレットの成績を知っている者が近くにいたり、聞いたりしたんだろう」
「何で、アイレットは言わないのよ!!」
「あの陰気なアイレットが1位だったの!なんていうはずないだろ」
誰もが嬉しそうに1位だったというアイレットの表情が想像できなかった。自分たちが聞いてあげなくてはならなかったのだ。
父に呼ばれて、アイレットが執務室に行くと、悩ましい表情をした父がいた。
「アイレット、ずっと成績が1位だったんだな」
「?」
「こういうことは伝えるべきことなんだ」
「何の話ですか?1位?」
「1位ではないのか?」
「1位なんてどこに書いてあったのでしょうか?」
アイレットはどこかに書いてあったのだろうか、答案用紙だろうか?成績表だろうかと思い出していた。
「試験の結果は貼り出されるだろう?」
「そうなんですか、知りませんでした」
「え?知らなかったのか」
「はい、知りません。私が見たのは答案用紙と成績表だけです」
「そうか…」
「もういいですか、1位だろうが、100位だろうが、何でもいいです」
1位だということに驚きもせず、貼り出されることに少し驚いた程度であった。父も周りから褒められていたのはアイレットのことだったのかと、ようやく理解した。
「な、なぜだ」
「正義のマスタール家に恥ずかしくないよう、嫌がらせに遭っている子を助けたら、もっと酷い目に遭うようになったと…」
「どこの家だ!」
「…顔を見たら分かると思うのですが、名前は憶えていません。見掛けたら話し掛けてはいましたが、ルミナは知っているようでした。どうすれば良かったのですか」
「学園に知らせて、任せていたら良かったっていうの!」
「確かに学園には知らせるべきだっただろうな。だが助けられた子だっているのではないか」
「そうですね」「そうよ!お兄様!」
助けられた者もいただろうが、苦しんでいる方が、浮き彫りになることを分かっていなかった。良きことよりも、悪いことの方が、話に上がるのだ。
「あとルミナがアイレットが優秀だと言っていたのですが」
「そうよ、ずっと1位だと」
「は?」
「ああ、違うんですね。何だ、やっぱりそうではないかと思っていたんですよ」
「やっぱりね」
父は机の引き出しを探って、底からアイレットの成績表を見付け出すも、確かに点数は高い。でも皆も同じようなものだと思っていた。3人は今回は何番だったなどと言って来ていたが、アイレットは何も言って来ないことから、言って来るほどでもなかったと判断していた。
「1位とは書かれていないが、これはどうなんだ?」
そこには100点満点もあり、それ以外もほぼ全て90点台の点数しか並んでいなかった。ダンスだけが唯一70点台なだけである。
「っな」「嘘でしょう」
「お前たちも同じくらいだっただろう?」
「いえ、私もさすがに満点なんて取ったことがありませんし、50点台があったこともあります」
「私もです…」
「あの子は、そんなに優秀だったのか…」
「あああああ!」
アデリーナが突然、叫び声を上げて、頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「どうしたんだ?」
「役不足、役不足です。アイレットのことをマスタールなのに、出来が良くないと言っていました…」
アデリーナは茶会や夜会で、そして縁談の顔合わせの際も、アイレットの名前が出れば、マスタールなのに恥ずかしい、出来が悪いと吹聴していた。
「それで断られたというのか」
「そりゃそうだよな、こんな点のアイレットを出来が良くないと言えば、アデリーナはもっと良いということになってしまう。だがそうではないと相手が知っていたとすれば…」
知っていた者にはアデリーナは、何を言っているんだ?姉の方はもっと成績が良かったかと思い、同級生にでも聞けばそうではないことは分かる。
「あああああ…そんな」
「おそらく、皆、アイレットの成績を知っている者が近くにいたり、聞いたりしたんだろう」
「何で、アイレットは言わないのよ!!」
「あの陰気なアイレットが1位だったの!なんていうはずないだろ」
誰もが嬉しそうに1位だったというアイレットの表情が想像できなかった。自分たちが聞いてあげなくてはならなかったのだ。
父に呼ばれて、アイレットが執務室に行くと、悩ましい表情をした父がいた。
「アイレット、ずっと成績が1位だったんだな」
「?」
「こういうことは伝えるべきことなんだ」
「何の話ですか?1位?」
「1位ではないのか?」
「1位なんてどこに書いてあったのでしょうか?」
アイレットはどこかに書いてあったのだろうか、答案用紙だろうか?成績表だろうかと思い出していた。
「試験の結果は貼り出されるだろう?」
「そうなんですか、知りませんでした」
「え?知らなかったのか」
「はい、知りません。私が見たのは答案用紙と成績表だけです」
「そうか…」
「もういいですか、1位だろうが、100位だろうが、何でもいいです」
1位だということに驚きもせず、貼り出されることに少し驚いた程度であった。父も周りから褒められていたのはアイレットのことだったのかと、ようやく理解した。
694
お気に入りに追加
2,403
あなたにおすすめの小説
婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜
みおな
恋愛
王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。
「お前との婚約を破棄する!!」
私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。
だって、私は何ひとつ困らない。
困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
【完結】恋は、終わったのです
楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。
今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。
『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』
身長を追い越してしまった時からだろうか。
それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。
あるいは――あの子に出会った時からだろうか。
――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。

もう、愛はいりませんから
さくたろう
恋愛
ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。
王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。
さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】
私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。
もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。
※マークは残酷シーン有り
※(他サイトでも投稿中)

恋人に夢中な婚約者に一泡吹かせてやりたかっただけ
棗
恋愛
伯爵令嬢ラフレーズ=ベリーシュは、王国の王太子ヒンメルの婚約者。
王家の忠臣と名高い父を持ち、更に隣国の姫を母に持つが故に結ばれた完全なる政略結婚。
長年の片思い相手であり、婚約者であるヒンメルの隣には常に恋人の公爵令嬢がいる。
婚約者には愛を示さず、恋人に夢中な彼にいつか捨てられるくらいなら、こちらも恋人を作って一泡吹かせてやろうと友達の羊の精霊メリー君の妙案を受けて実行することに。
ラフレーズが恋人役を頼んだのは、人外の魔術師・魔王公爵と名高い王国最強の男――クイーン=ホーエンハイム。
濡れた色香を放つクイーンからの、本気か嘘かも分からない行動に涙目になっていると恋人に夢中だった王太子が……。
※小説家になろう・カクヨム様にも公開しています
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

婚約解消したら後悔しました
せいめ
恋愛
別に好きな人ができた私は、幼い頃からの婚約者と婚約解消した。
婚約解消したことで、ずっと後悔し続ける令息の話。
ご都合主義です。ゆるい設定です。
誤字脱字お許しください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる