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違和感
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下の兄・フィーストの婚約者はメディコ伯爵家のルミナ。2人でお茶を飲みながら、話をしたり、出掛けたり、関係は悪くなかったはずだった。
ルミナがアデリーナもご一緒にどうぞと言うので、同席することになった。
「お2人はアイレット様を出来が悪いとおっしゃっていますよね?」
「事実じゃないか」
「皆様はアイレット様より優秀で、アイレット様は出来が悪いのですよね?」
「表立って言うことではないが、そうだな」「ええ、恥ずかしいことだけど」
2人は不思議そうな顔をして、何を今さら言っているのかという風に答えている。
「入学してずっと1位の成績で、礼儀、乗馬も完璧なアイレット様を」
「は?」「誰かと勘違いされているのではなくて?」
2人は既に学園を卒業しているが、ルミナは3年生で在学中である。最近はあまり聞かなくなったが、さすがマスタールというアイレットの噂は聞こえて来ていた。
元々、ルミナはフィーストがずっとアイレットを下に見ていることに、違和感がずっとあった。無口ではあるが、会えばきちんと挨拶をし、所作も美しく、何を持って不出来だと言っているのかと考えていた。
アイレットとは学年は違うが、噂を聞く度に、やっぱり不出来なんかではなかったと思っていたが、フィーストやアデリーナ、そして上の兄・ハービスがアイレットのことを、今でも恥ずかしい存在だと話していることを聞き、両親に報告した。
「アイレットはずっと聖書を読んでいるような変わり者だよ?」
「変わり者でも能力の高さは事実です。アイレット様で出来が悪いのなら、私はそんな力量を持っておりません。ですので、白紙に戻していただきたいのです。既に両親には話してあります。今日はきちんと事実を確認するように言われて、伺ったのでございます」
「そんなはず」「でたらめよ」
「いえ、成績表は分かりませんが、試験結果に関しては貼り出されることなので、私も前回の結果を確認をしましたが、1位でした」
「アイレットは、そんなこと一言も…」「嘘でしょ」
アイレットは未だに試験の結果を見たこともなければ、試験用紙に1位と書かれているわけでもないので知らなかった。優秀と言われていたきょうだいも1位を取ったことはない、30位以内に入っていれば優秀だと言われていたからである。
「待ってくれ、それでも婚約を白紙に戻すなんて。アイレットは優秀だった、私たちは知らなかった。それでいいじゃないか」
「それだけではありません。皆様が嫌がらせに遭って助けた方が、もっと陰湿に嫌がらせを受けるようになったことをご存知でしたか」
「えっ」「そんなことありえないわ」
これも3人が学園を卒業してから、助けた生徒と関わることがなくなり、下位貴族であれば、会うこともないので知ることはなかった。
「やはりご存知なかったのですね、正義は素晴らしいと思います。ただ皆様のせいで怒りを買い、学園ではやらなくなりましたが、学園外で行うようになったそうです。なぜ学園側に任せなかったのですか、公爵様にご相談されなかったのですか」
「…それは」「その場で止めないといけないでしょう」
その場で止めることが悪いことではないのは確かだが、その場限りではなく、別の者に頼むなり、学園や父親に話して、フォローすべきだっただろう。
「私も知らなかったので言う資格はないのかもしれませんが、1人は耐えきれず自殺未遂を起こして病院へ、1人はその嫌がらせをしていた者に、愛人にされているそうです。もっと他にもいらっしゃるのかもしれません。私は胸が痛くなりましたわ」
ルミナはマスタール家を尊敬していた、だがアイレットのこともだが、その場で助けただけで何もしていなかったことに、嫁ぐことは出来ないと判断したのだ。
「そんな」「どこですの?言いに行ってやりますわ」
「今からでも遅くないかもしれません。ですが、彼女たちのの人生は返って来ません。あとは家同士で話してください」
ルミナはフィーストが止めても、失礼しますとそそくさと帰って行ってしまい、2人はちょうど邸にいた父親の執務室に押し掛けることとなった。
ルミナがアデリーナもご一緒にどうぞと言うので、同席することになった。
「お2人はアイレット様を出来が悪いとおっしゃっていますよね?」
「事実じゃないか」
「皆様はアイレット様より優秀で、アイレット様は出来が悪いのですよね?」
「表立って言うことではないが、そうだな」「ええ、恥ずかしいことだけど」
2人は不思議そうな顔をして、何を今さら言っているのかという風に答えている。
「入学してずっと1位の成績で、礼儀、乗馬も完璧なアイレット様を」
「は?」「誰かと勘違いされているのではなくて?」
2人は既に学園を卒業しているが、ルミナは3年生で在学中である。最近はあまり聞かなくなったが、さすがマスタールというアイレットの噂は聞こえて来ていた。
元々、ルミナはフィーストがずっとアイレットを下に見ていることに、違和感がずっとあった。無口ではあるが、会えばきちんと挨拶をし、所作も美しく、何を持って不出来だと言っているのかと考えていた。
アイレットとは学年は違うが、噂を聞く度に、やっぱり不出来なんかではなかったと思っていたが、フィーストやアデリーナ、そして上の兄・ハービスがアイレットのことを、今でも恥ずかしい存在だと話していることを聞き、両親に報告した。
「アイレットはずっと聖書を読んでいるような変わり者だよ?」
「変わり者でも能力の高さは事実です。アイレット様で出来が悪いのなら、私はそんな力量を持っておりません。ですので、白紙に戻していただきたいのです。既に両親には話してあります。今日はきちんと事実を確認するように言われて、伺ったのでございます」
「そんなはず」「でたらめよ」
「いえ、成績表は分かりませんが、試験結果に関しては貼り出されることなので、私も前回の結果を確認をしましたが、1位でした」
「アイレットは、そんなこと一言も…」「嘘でしょ」
アイレットは未だに試験の結果を見たこともなければ、試験用紙に1位と書かれているわけでもないので知らなかった。優秀と言われていたきょうだいも1位を取ったことはない、30位以内に入っていれば優秀だと言われていたからである。
「待ってくれ、それでも婚約を白紙に戻すなんて。アイレットは優秀だった、私たちは知らなかった。それでいいじゃないか」
「それだけではありません。皆様が嫌がらせに遭って助けた方が、もっと陰湿に嫌がらせを受けるようになったことをご存知でしたか」
「えっ」「そんなことありえないわ」
これも3人が学園を卒業してから、助けた生徒と関わることがなくなり、下位貴族であれば、会うこともないので知ることはなかった。
「やはりご存知なかったのですね、正義は素晴らしいと思います。ただ皆様のせいで怒りを買い、学園ではやらなくなりましたが、学園外で行うようになったそうです。なぜ学園側に任せなかったのですか、公爵様にご相談されなかったのですか」
「…それは」「その場で止めないといけないでしょう」
その場で止めることが悪いことではないのは確かだが、その場限りではなく、別の者に頼むなり、学園や父親に話して、フォローすべきだっただろう。
「私も知らなかったので言う資格はないのかもしれませんが、1人は耐えきれず自殺未遂を起こして病院へ、1人はその嫌がらせをしていた者に、愛人にされているそうです。もっと他にもいらっしゃるのかもしれません。私は胸が痛くなりましたわ」
ルミナはマスタール家を尊敬していた、だがアイレットのこともだが、その場で助けただけで何もしていなかったことに、嫁ぐことは出来ないと判断したのだ。
「そんな」「どこですの?言いに行ってやりますわ」
「今からでも遅くないかもしれません。ですが、彼女たちのの人生は返って来ません。あとは家同士で話してください」
ルミナはフィーストが止めても、失礼しますとそそくさと帰って行ってしまい、2人はちょうど邸にいた父親の執務室に押し掛けることとなった。
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