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 アベリーを見送ったキリアムは、トスカーとミエルと改めて話をすることにした。

「どうしてユーリのこと言わなかったんだ?」
「だって言ったら、会えなくなってしまうと思ったから」
「そうだよ、二人で決めたんだ」

 幼い頃は話せば、ユーリに会えなくなると思って、言わなかったことは理解が出来る。だが二人は一切、ユーリのことを話さなかった。

「怒っているわけじゃない、亡くなった後も言わなかったのは?」
「…」「…」
「何を言っても、怒ったりしない。怒るようなことではないんだ」
「どうしてなのかと思ったよ」「信じたくなかったんだ…」
「でも事情を聞いてからは怒ってたんだ、皆に」「僕も」
「そうだよな…ユーリを殺したと思っても仕方ない。実際、皆で追い詰めたんだ…私も加担していたようなものだ」

 キリアムも表立っていないだけで、ユーリに辛い目に遭わせたことが、あっただろうと思っている。止めることが出来なかったことも罪であり、あの日の領地でのことは今でも思い出すだけで、吐き気がする。

「僕たちは双子だったから、誰もいなくてもミエルがいたから良かった。でもユーリちゃんは双子だから辛い目に遭ったんだよね」
「そうだな…」

 トスカーとミエルにはアベリーのことや、メルベールのこと、両親ことで、メイドや家庭教師に任せきりにしてしまっていた時もあった。

「急死したって聞いた時は、病気だと思っていたけど、毒を飲んだと聞いて、どうして死ななくちゃならなかったんだって、トスカーとずっと考えていた」
「ああ、何一つ、ユーリに死ぬ理由なんてなかった」
「そうだよね」「うん」

 トスカーとミエルは一卵性の双子であるため、二人はそっくりの表情をして、目に涙を溜めていた。

「双子で良かったと思って欲しいって、ユーリちゃん言ってたんだ」「うん」
「ユーリが?」
「楽しいことも、嬉しいことも、悲しいことも、辛いことも、怒るようなことも、折角双子なんだから半分ずつ、そうあって欲しいって」
「僕たちも幼かったから、よく分からなくて、後からスカラット侯爵夫人に教えて貰ったんだ」

 キリアムはきっとユーリの願いだったのではないかと思った。良きことだけメルベールに奪われて、負の部分だけを押し付けられる人生に、せめて全て半分ずつの人生を歩んで欲しいと願ったのだろう。

 キリアムは気付くと、涙が零れていた。

「聞かせてくれて、ありがとう。きっとそれがユーリの希望だったんだろうな」
「だからミエルと話して、僕たちは双子で良かったって言える人生を、天国のユーリちゃんに届けようって決めたんだ」「うん」
「そうか、それはきっとユーリも喜ぶな」

 親がなくとも子は育つと言うが、まさに二人はちゃんと、育っていた。いや、人生の僅かな時間を過ごしただけのユーリが、導いてくれたのかもしれない。

 私はユーリに謝罪ではなく、お礼を言わなければならなかったのだ。

「一緒に墓参りに行けばよかったな」
「行ったことあるよ、何度も」「うん」
「え?スカラット夫人か?」
「うん」「何度も連れて行って貰ってる、花だって植えたんだ」
「そうか…そうだったのか」

 あの花の中にトスカーとミエルの植えたものがあったのか。

「僕たちは大丈夫だよ、お母様やお姉様のこと聞かれることもあるけど、よく知らないって言ってるし」
「言いたい奴には言わせておけばいいって、二人で開き直っているんだ」
「すまない…」

 やはり聞いて来る者がいるのか、仕方ないことだが、二人には関係ないのに、申し訳ない。だが、貴族というものはそういうものなのだ。

「大丈夫、僕たちは双子なんだから」「お父様もそうでしょう?」
「ああ、そうだな、私も双子なんだから、力を合わせないといけないな」
「そうだよ!」「うん」

 キリアムは状況は伝えていたが、久しぶりにオーランドに会いに行こうと思った。
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