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姉5
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「一人で頑張ってみる」
物は言いようではあるが、どちらにも行きたくないという意味だろう。
「だから、貴族籍は置いておいて欲しいの」
「それは出来ないわ。これから迷惑を被るのはルオンなのよ。あなたがどこで嘘を付くか分からないのに、籍を残すことは出来ないわ。覚悟を決めて、一人で頑張ってみると言ったのではないの?」
「それはそうだけど、家族がいるって安心が欲しいの!」
「安心ではなく、責任を取って貰う相手でしょう?」
「どうしてそんな酷いことが言えるの?お父様から聞いていないの?」
「何も聞いていないわ」
メルベールは了承していないアレクスが、サイラを説得してくれていると、だからこそ一人で頑張ってみると言って、同情を誘うつもりだった。
そうすれば、そんな覚悟があるなら、再婚先もしくは、ここにいてもいいと言って貰えると信じていた。仕事もしたくはないけど、してもいいと考えていた。
「書類はこちらで出しておくから、サインして、出て行きなさい」
「サインなんてしないわ」
「一人で頑張るのでしょう?あなたが言ったんじゃない」
「サインはしない」
サインしなければ、このままグラーフ伯爵家のままでいられるとメルベールは思った。だが、問題がある場合は片方の訴えだけで、籍を抜くことは出来る。
「そう、分かったわ。じゃあ、こちらで手続きをするわ。さあ、出て行って」
「待って、ルオンともこれからは仲良くするし、仕事だって、手伝えることがあればするわ。それでいいじゃない」
「何も良くないわ、無理やり放り出されたくなければ、出て行きなさい」
「嫌よ、ここは私の家よ」
「もういいわ、追い出して。もし、邸の周りをうろついたりするようなら、騎士団を呼びますから」
暴れるメルベールをメイドや護衛で馬車に乗せ、サイラも同乗して、最後の仕上げだと港まで連れて行き、船賃だけを渡した。
賑やかで活気があるが、行きかう多くの人々、貴族もいれば平民もいる。誰が悪い人かなど見ただけでは分からない。言葉の通じない国に行ってしまえば、話すことすら出来ない。頼れる人もいない。
「これが最後の餞別よ、好きなところに行くといいわ」
「待って…私には無理よ」
いくらお金を渡されても、自分一人で生きていく現実を見たメルベールは、一気に不安に襲われた。
これまでお膳立てされた人生で、足が竦んで動けなかった。いつもユーリが、キリアムが、アレクスが、サイラが困ったら助けてくれていた。
「好きにしたらいいわ。ただし、もう縁は切れたの。それだけは理解しなさい」
グラーフ伯爵家やトスター侯爵家に二度と入ることは出来ないが、王都で暮らすなとは言っていない。このお金で王都にいることも出来るが、メルベールにはそんな考えは浮かんでいなかった。
他国に行く選択もしやすいように、港に連れて来ただけである。
「……施設に行くわ」
「はあ…それでいいのね?」
わざと連れて来たわけではなく、本当に送って来ただけだったのだが、まさかここで怖気付くとは思わなかった。小心者だったことを初めて知った。
「…はい」
結局、邸に戻ることになり、後日、メルベールは更生保護施設に入所した。修道院を選ばなかったのは、アベリーと同じであることが嫌だったこと、病院なら更生保護施設の方がマシだと思ったからだ。
サイラはどの選択をしてもいいと思っていたが、強制的に己の虚言癖と向き合うことになる施設に、入って貰いたかった。
そして、もし虚言癖のきっかけ、原因が明確にあるのであれば知りたかった。
「無事、送り届けて参りました」
「そうか、ご苦労だったな」
アレクスはメルベールの言いなりにはならなくなっていたが、強く𠮟ったりすることはまだ出来ないでいた。
物は言いようではあるが、どちらにも行きたくないという意味だろう。
「だから、貴族籍は置いておいて欲しいの」
「それは出来ないわ。これから迷惑を被るのはルオンなのよ。あなたがどこで嘘を付くか分からないのに、籍を残すことは出来ないわ。覚悟を決めて、一人で頑張ってみると言ったのではないの?」
「それはそうだけど、家族がいるって安心が欲しいの!」
「安心ではなく、責任を取って貰う相手でしょう?」
「どうしてそんな酷いことが言えるの?お父様から聞いていないの?」
「何も聞いていないわ」
メルベールは了承していないアレクスが、サイラを説得してくれていると、だからこそ一人で頑張ってみると言って、同情を誘うつもりだった。
そうすれば、そんな覚悟があるなら、再婚先もしくは、ここにいてもいいと言って貰えると信じていた。仕事もしたくはないけど、してもいいと考えていた。
「書類はこちらで出しておくから、サインして、出て行きなさい」
「サインなんてしないわ」
「一人で頑張るのでしょう?あなたが言ったんじゃない」
「サインはしない」
サインしなければ、このままグラーフ伯爵家のままでいられるとメルベールは思った。だが、問題がある場合は片方の訴えだけで、籍を抜くことは出来る。
「そう、分かったわ。じゃあ、こちらで手続きをするわ。さあ、出て行って」
「待って、ルオンともこれからは仲良くするし、仕事だって、手伝えることがあればするわ。それでいいじゃない」
「何も良くないわ、無理やり放り出されたくなければ、出て行きなさい」
「嫌よ、ここは私の家よ」
「もういいわ、追い出して。もし、邸の周りをうろついたりするようなら、騎士団を呼びますから」
暴れるメルベールをメイドや護衛で馬車に乗せ、サイラも同乗して、最後の仕上げだと港まで連れて行き、船賃だけを渡した。
賑やかで活気があるが、行きかう多くの人々、貴族もいれば平民もいる。誰が悪い人かなど見ただけでは分からない。言葉の通じない国に行ってしまえば、話すことすら出来ない。頼れる人もいない。
「これが最後の餞別よ、好きなところに行くといいわ」
「待って…私には無理よ」
いくらお金を渡されても、自分一人で生きていく現実を見たメルベールは、一気に不安に襲われた。
これまでお膳立てされた人生で、足が竦んで動けなかった。いつもユーリが、キリアムが、アレクスが、サイラが困ったら助けてくれていた。
「好きにしたらいいわ。ただし、もう縁は切れたの。それだけは理解しなさい」
グラーフ伯爵家やトスター侯爵家に二度と入ることは出来ないが、王都で暮らすなとは言っていない。このお金で王都にいることも出来るが、メルベールにはそんな考えは浮かんでいなかった。
他国に行く選択もしやすいように、港に連れて来ただけである。
「……施設に行くわ」
「はあ…それでいいのね?」
わざと連れて来たわけではなく、本当に送って来ただけだったのだが、まさかここで怖気付くとは思わなかった。小心者だったことを初めて知った。
「…はい」
結局、邸に戻ることになり、後日、メルベールは更生保護施設に入所した。修道院を選ばなかったのは、アベリーと同じであることが嫌だったこと、病院なら更生保護施設の方がマシだと思ったからだ。
サイラはどの選択をしてもいいと思っていたが、強制的に己の虚言癖と向き合うことになる施設に、入って貰いたかった。
そして、もし虚言癖のきっかけ、原因が明確にあるのであれば知りたかった。
「無事、送り届けて参りました」
「そうか、ご苦労だったな」
アレクスはメルベールの言いなりにはならなくなっていたが、強く𠮟ったりすることはまだ出来ないでいた。
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