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姉2
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ユーリはアベリー、キリアム、メルベール、アレクスの命を守ったとも言える。それなのに、どうしてそんな言葉が出るのかが理解が出来ない。
「キリアムが言っていた、生きていなかったというのも本当なの?」
「理解していなかったの?親だもの、産んで終わりなら、私もあなたと話し合いなんてしていないわ。あなたは親として何をした?」
私も良い親ではなかったことは分かっている、それを言っていいのはユーリだけだ。メルベールに言わせるつもりはない。
「私だってアベリーと話したわ」
「でも途中で諦めたんでしょう?」
確かに始めは責任を感じていたのか、アベリーと話をしていた。でも何を言っても理解して貰えないと分かって、見ない様にするようになった。
再び自分のことしか考えない生活に戻り、アベリーを寄宿学校に入れれば、また元通りの生活が出来ると思っていたに違いない。
シュアト公爵夫人が言っていた、どうやって呼び出そうかと思ったら、あちらから接触して来るとは思わなかった、罠に引っ掛かりに来るようなものなのに、愚かだと気付かないのねと、怒りに満ちていた。
社交界にメルベールの居場所はない。ユーリがフォローすることで成り立っていた、メルベールの浅はかさは露呈した。
レイア夫人の話を聞いた時には、怒りで一杯だった。元々、見下すような素振りはあったが、必死で働く姿を見て、ようやく静めることが出来ている。
「それは…」
「キリアムくんもアベリーとは話にならなくて、でも親として出来ることをと思って、ラオン大公家に様子を伺い、ずっと謝罪を続けて、医師に話を聞きに行ったりもしているのよ?」
キリアムは負担にならない程度に、ラオン大公家に謝罪を続けており、だからこそ寄宿学校のことも問い合わせることが出来たのだ。
医師はラオン大公家に紹介するようなことはしないが、脳に詳しい医師に話を聞きに行ったり、もし後遺症が出たらどうするべきかなど、相談していた。
「そんなこと一言も…」
「あなたに言っても、仕方ないと思ったんじゃない?聞いたところで、私も一緒にではなく、キリアムくんがしているからいいと、あなたは思ったんじゃない?」
夫婦なのだからと、自分もしたような気になっていたはずだ。
「そんなことないわ」
「だったら、別のことでもいいわ。何か行おうと思わなかった?あなたも親というなら、しようと思うでしょう?私も定期的にお伺いの文を送っているわよ」
「えっ、お母様も?」
「ええ、当たり前じゃない。どうしてあなたは何もしていないの?」
メルベールではなく、ユーリならきっと心の籠った手紙も書くことが出来ただろう。いや、ユーリが生きていたら、メルベールに代わり書いてと書かされていた可能性が高いかもしれない。
「それは…」
「そういうところよね、何もしていないことが問題なのよ」
気配りもだが、謝罪もきちんと出来ない、直接謝ったからもういいと思っていたに違いない。アベリーのためにも、何かしようと思うことすらない。
「自分のことしか考えられないから、何もする気がないのよね?」
「…」
「ユーリはね、アンジュリー様に痛み止めをお持ちしようかと思ったそうよ。でもね、加害者側が持って行っても、信用は出来ないだろうと止めたそうよ」
「何が言いたいの?ユーリは薬師だったんだから」
「分からない?ユーリは一番に、怪我をしたアンジュリー様のことを考えたの。その次はラオン大公家、その次は国。あなたなら考えられた?」
「私だって」
「あなたには無理よ」
あの日、メルベールがいたとしても、何てことをしてくれたのかと、アベリーやアレクスを責め立てただろう。
ユーリもメルベールのように、責め立てて、逃げてくれても良かった。でもそれが出来ないようにしてしまったのが、私たちの罪だ。
「キリアムが言っていた、生きていなかったというのも本当なの?」
「理解していなかったの?親だもの、産んで終わりなら、私もあなたと話し合いなんてしていないわ。あなたは親として何をした?」
私も良い親ではなかったことは分かっている、それを言っていいのはユーリだけだ。メルベールに言わせるつもりはない。
「私だってアベリーと話したわ」
「でも途中で諦めたんでしょう?」
確かに始めは責任を感じていたのか、アベリーと話をしていた。でも何を言っても理解して貰えないと分かって、見ない様にするようになった。
再び自分のことしか考えない生活に戻り、アベリーを寄宿学校に入れれば、また元通りの生活が出来ると思っていたに違いない。
シュアト公爵夫人が言っていた、どうやって呼び出そうかと思ったら、あちらから接触して来るとは思わなかった、罠に引っ掛かりに来るようなものなのに、愚かだと気付かないのねと、怒りに満ちていた。
社交界にメルベールの居場所はない。ユーリがフォローすることで成り立っていた、メルベールの浅はかさは露呈した。
レイア夫人の話を聞いた時には、怒りで一杯だった。元々、見下すような素振りはあったが、必死で働く姿を見て、ようやく静めることが出来ている。
「それは…」
「キリアムくんもアベリーとは話にならなくて、でも親として出来ることをと思って、ラオン大公家に様子を伺い、ずっと謝罪を続けて、医師に話を聞きに行ったりもしているのよ?」
キリアムは負担にならない程度に、ラオン大公家に謝罪を続けており、だからこそ寄宿学校のことも問い合わせることが出来たのだ。
医師はラオン大公家に紹介するようなことはしないが、脳に詳しい医師に話を聞きに行ったり、もし後遺症が出たらどうするべきかなど、相談していた。
「そんなこと一言も…」
「あなたに言っても、仕方ないと思ったんじゃない?聞いたところで、私も一緒にではなく、キリアムくんがしているからいいと、あなたは思ったんじゃない?」
夫婦なのだからと、自分もしたような気になっていたはずだ。
「そんなことないわ」
「だったら、別のことでもいいわ。何か行おうと思わなかった?あなたも親というなら、しようと思うでしょう?私も定期的にお伺いの文を送っているわよ」
「えっ、お母様も?」
「ええ、当たり前じゃない。どうしてあなたは何もしていないの?」
メルベールではなく、ユーリならきっと心の籠った手紙も書くことが出来ただろう。いや、ユーリが生きていたら、メルベールに代わり書いてと書かされていた可能性が高いかもしれない。
「それは…」
「そういうところよね、何もしていないことが問題なのよ」
気配りもだが、謝罪もきちんと出来ない、直接謝ったからもういいと思っていたに違いない。アベリーのためにも、何かしようと思うことすらない。
「自分のことしか考えられないから、何もする気がないのよね?」
「…」
「ユーリはね、アンジュリー様に痛み止めをお持ちしようかと思ったそうよ。でもね、加害者側が持って行っても、信用は出来ないだろうと止めたそうよ」
「何が言いたいの?ユーリは薬師だったんだから」
「分からない?ユーリは一番に、怪我をしたアンジュリー様のことを考えたの。その次はラオン大公家、その次は国。あなたなら考えられた?」
「私だって」
「あなたには無理よ」
あの日、メルベールがいたとしても、何てことをしてくれたのかと、アベリーやアレクスを責め立てただろう。
ユーリもメルベールのように、責め立てて、逃げてくれても良かった。でもそれが出来ないようにしてしまったのが、私たちの罪だ。
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