【完結】似て非なる双子の結婚

別れ

「だったら、離縁状にサインしてくれ」
「っな、本気で言っているの？」
「アベリーに話してから、君にも話そうと思っていた。別れた方が正解なんだろう？じゃあ、してくれ」

　キリアム以外は皆、止める様子もなければ、何も言わない。

「分かったわよ、サインすればいいんでしょう」

　メルベールはキリアムの執事が差し出した離縁状にサインをした、既に用意してあったということだ。

「ありがとう、後はグラーフ伯爵家にお任せしてよろしいですか」
「ああ、すまなかった」
「ええ、こちらで対処します。今までご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
「いえ、私の見る目がなかった。何も見えていなかっただけです」

　これでメルベールとトスター侯爵家の縁は切れた。アベリー、双子の弟トスカーとミエルも、こちらで縁を切った書類を出せばいい。

「脅されて大変な目に遭わなくて良かったわ」

　メルベールは負け惜しみにも聞こえなくもないが、自分は関係ない、清々したと言わんばかりである。

「アベリーは相手を言っていないんだよな？」
「はい、相手は高位貴族だと、誰にも言っていないわ」

　高位貴族の子を怪我させてしまったと話した、公爵家だったら王家だと分かっただろうが、ギリギリ侯爵家だったことで、だったら同じ公爵家が相手だったら、話を聞いてくれるのではないかという話になったのだ。

　こっそり調べられるようなことをしない限りは、相手は公爵家だと思っている。

「調べれば分かるかもしれないが、分かったところで逃げていくさ。お金欲しさに、ラオン大公家を敵に回すバカはいない。脅したところで、待っているのは重い処罰だ、愚か者だったら別だがな」
「はあ？黙したの？」

　メルベールは下品に顔を歪ませながら、キリアムに詰め寄った。

「騙してはいない、君が何も分かっていないだけだよ」
「離縁は無効よ！」

　そう言い出すとは思っていたが、執事はサインを貰って、既に部屋にはおらず、書類を出しに行っている。

「いいえ、メルベールはサインしたのだから、グラーフ伯爵家に戻して、部屋に閉じ込めておいて貰える？」

　サイラは後ろに控えていた従者とメイドに指示を出した。

　アレクスとサイラは話し合いによっては離縁することをキリアムから聞いており、騒ぐようなら連れて帰るために連れて来ていた。

「お母様！？」
「もうあなたはトスター侯爵家とは縁が切れたの、関わりがない、あとはグラーフ伯爵家で話をしましょう」

　抵抗はしたものの、従者とメイドに連れられて、メルベールは退出させられた。

「お騒がせしました」
「お母様はあのような方だったのですね。私は似てしまったのでしょう。これからは、そう思われない様に頑張ります」
「ああ、期待している」
「はい。お祖母様、母はどうなるのでしょうか？」
「王都には置いておけないわ。領地で軟禁するか、虚言癖があるから更生保護施設か、修道院。修道院になった場合は、別のところにするから安心して頂戴ね」

　メルベールと一緒の修道院に入れられたら、それどころではなくなってしまう。

「お祖母様、ありがとうございます。お父様、希望が叶うなら、ユーリ叔母様のお墓参りに行ける修道院にしていただくことは出来ませんか」
「そうだな、分かった。調べてみよう」

　ユーリのお墓は王都の端の方にある、その近く、もしくは移動できる距離に修道院があれば、参ることは可能だろう。

「ありがとうございます」
「アベリー、明日一緒に行こう。ユーリ叔母様のお墓に」
「っはい！」

　そう言うと、アベリーは急にボロボロと涙を流した。キリアムはその姿を見て、きちんと分かり合えるようになって良かったと、改めて実感した。