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姪へ告知5
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これまでも何度も聞いたことだったが、私は悪くない、あの子が悪いとしか言わなかった。だが今のアベリーは様子を伺うように、メルベールをチラッと見た。
「あの頃は…お母様の真似したら、叶うって分かって…特にお祖父様は何でも買ってくれて、何でもいいよって言ってくれたから」
「っま」
メルベールは声を上げそうになったが、キリアムに睨まれて黙った。アレクスは言われるがまま与えた責任を痛感していた。
「親がしていることは間違っていないと思っていたから…」
「そうか」
「レイアお祖母様もお母様に、これが欲しいって言っていたでしょう?」
アベリーもそのやり取りを見ていた。レイアは居たたまれず、顔を伏せた。
「それを見て、女の人は言ってもいいんだって…思って。でも今は、良くないって分かってる。お母様もお祖母様も間違っていたのよね?」
「そうだ」
間違ったと言われたメルベールもレイアも何も言えなかった。
「私があの子だったら渡さないのに、自分は欲しいっておかしいもの。寄宿学校にもいたの、素敵ね、いいな、私には買えないなんて言いながら、自分にくれるように仕向けようとする子が…」
「その子を見て思ったのか?」
「最初は図々しいなって思っていたの、でも私がしたことも同じじゃないかって。それでどうしてあんなことをしたんだろうって考えたの。それで凄く恥ずかしい気持ちになったの…私もその子を嫌だなって思っていたから」
自ら気付くことが出来たのならば、良かったと言えるだろう。
「あのテディベア、とても可愛くて、キラキラして見えて…だから欲しいと思って、頂戴って言ったと、思う。それで駄目だと言われて、どうしてよって押したの…本当にごめんなさい…」
両手で顔を覆いながら、アベリーは頭を下げた。
「私からも二つだけいいかしら?」
「どうぞ、義母上」
「アベリーが奪おうとしたアンジュリー様が持っていたぬいぐるみは、大公閣下からの贈り物だったの」
「…あっ、そういえば、そう言っていた気がします」
アンジュリーはお祖父様に買って貰ったものだと告げていた。
「宝石の付いたリボンが付いていたのだけど、それは国王陛下がウェーブ王国に行くアンジュリー様へ、お守りだと言って付けたもので、だからアンジュリー様は肌身離さず持ってらしたの」
「そんな、大事なものを…」
皆も初めて聞く事実に、何て物を奪おうとしたのだと、息が苦しくなった。
「だから国王陛下は責任を強く感じてしまったそうなの。もしかしたら、宝石のせいではないかと、自分があんなものを付けたからと…おそらく狙われたのだと思ったのだろうと、でも相手が子どもだと分かって、それでも自分を責められたそうよ」
サイラはラオン大公閣下から、どうして国王陛下があそこまで怒ったのかの理由を聞いていた。元々、穏やかではないが、お守りだなんて言ってしまったこと。
そもそも、弟が贈ったぬいぐるみを、アンジュリーが大事にしているのに嫉妬し、ぬいぐるみを贈るのは大人げない。だからリボンを贈ったのに、目に付いてしまったのではないか、仇になってしまったのではないかと感じていた。
サイラはこのことはアベリーに一番に告げなくてはいけないと思っていたので、グラーフ伯爵家では言わなかった。
「そんな…ほ、宝石はよく覚えていないけど、リボンは付いていたと思う」
アベリーは宝石が欲しかったわけではない。でも結果は同じことであることも分かっているので、言っても仕方ない。
「知らなかったとはいえ、大事な物だということは分かるわね?」
「はい、渡すわけない…」
「そう、人の大事な物は人によるの。あなたも大事な物があったら、分かったのかもしれないわね」
アベリーはすぐに飽きてしまうので、長い間大事にしている物はなかった。
「…はい」
「あの頃は…お母様の真似したら、叶うって分かって…特にお祖父様は何でも買ってくれて、何でもいいよって言ってくれたから」
「っま」
メルベールは声を上げそうになったが、キリアムに睨まれて黙った。アレクスは言われるがまま与えた責任を痛感していた。
「親がしていることは間違っていないと思っていたから…」
「そうか」
「レイアお祖母様もお母様に、これが欲しいって言っていたでしょう?」
アベリーもそのやり取りを見ていた。レイアは居たたまれず、顔を伏せた。
「それを見て、女の人は言ってもいいんだって…思って。でも今は、良くないって分かってる。お母様もお祖母様も間違っていたのよね?」
「そうだ」
間違ったと言われたメルベールもレイアも何も言えなかった。
「私があの子だったら渡さないのに、自分は欲しいっておかしいもの。寄宿学校にもいたの、素敵ね、いいな、私には買えないなんて言いながら、自分にくれるように仕向けようとする子が…」
「その子を見て思ったのか?」
「最初は図々しいなって思っていたの、でも私がしたことも同じじゃないかって。それでどうしてあんなことをしたんだろうって考えたの。それで凄く恥ずかしい気持ちになったの…私もその子を嫌だなって思っていたから」
自ら気付くことが出来たのならば、良かったと言えるだろう。
「あのテディベア、とても可愛くて、キラキラして見えて…だから欲しいと思って、頂戴って言ったと、思う。それで駄目だと言われて、どうしてよって押したの…本当にごめんなさい…」
両手で顔を覆いながら、アベリーは頭を下げた。
「私からも二つだけいいかしら?」
「どうぞ、義母上」
「アベリーが奪おうとしたアンジュリー様が持っていたぬいぐるみは、大公閣下からの贈り物だったの」
「…あっ、そういえば、そう言っていた気がします」
アンジュリーはお祖父様に買って貰ったものだと告げていた。
「宝石の付いたリボンが付いていたのだけど、それは国王陛下がウェーブ王国に行くアンジュリー様へ、お守りだと言って付けたもので、だからアンジュリー様は肌身離さず持ってらしたの」
「そんな、大事なものを…」
皆も初めて聞く事実に、何て物を奪おうとしたのだと、息が苦しくなった。
「だから国王陛下は責任を強く感じてしまったそうなの。もしかしたら、宝石のせいではないかと、自分があんなものを付けたからと…おそらく狙われたのだと思ったのだろうと、でも相手が子どもだと分かって、それでも自分を責められたそうよ」
サイラはラオン大公閣下から、どうして国王陛下があそこまで怒ったのかの理由を聞いていた。元々、穏やかではないが、お守りだなんて言ってしまったこと。
そもそも、弟が贈ったぬいぐるみを、アンジュリーが大事にしているのに嫉妬し、ぬいぐるみを贈るのは大人げない。だからリボンを贈ったのに、目に付いてしまったのではないか、仇になってしまったのではないかと感じていた。
サイラはこのことはアベリーに一番に告げなくてはいけないと思っていたので、グラーフ伯爵家では言わなかった。
「そんな…ほ、宝石はよく覚えていないけど、リボンは付いていたと思う」
アベリーは宝石が欲しかったわけではない。でも結果は同じことであることも分かっているので、言っても仕方ない。
「知らなかったとはいえ、大事な物だということは分かるわね?」
「はい、渡すわけない…」
「そう、人の大事な物は人によるの。あなたも大事な物があったら、分かったのかもしれないわね」
アベリーはすぐに飽きてしまうので、長い間大事にしている物はなかった。
「…はい」
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