【完結】似て非なる双子の結婚

野村にれ

文字の大きさ
上 下
97 / 118

姪へ告知3

しおりを挟む
 話をした後のアベリーはほとんど喋らなくなり、暗い表情になった。だが優しい言葉を掛けたところで、変わるわけでもない事柄であるため、その場しのぎでしかならないと、そっとして置くことにした。

 そして、そのまま寄宿学校に戻ることになった。

 メルベールは自分のことは横の置いて、結婚しようと思っていたなんて、何て娘なのかしらと言い、このまま居座ろうとしたが、ならば離縁して伯爵家に戻るかと言えば、領地に帰って行った。

 どうやらサイラに伯爵家に戻れば、領地で通いの使用人だけで、軟禁すると言われているそうだ。

 キリアムにはアベリーがどう思ったかは分からないが、混乱しているだろうから、しばらくして文を書いて、1年後に聞こうと考え、日々の業務に取り掛かった。

 そして、1年が経ち、アベリー14歳の帰省となった―――。

 同じように皆で集まったが、アベリーがとんでもないことを言い出した。

「結婚したい人がいるの」
「は?」「何だと?」

 さすがにキリアムとマトムは声を上げた。

 まだ14歳だ、確かに普通の貴族令嬢なら婚約者がいることはあるかもしれないが、アベリーは違う。

 しかも、貴族社会の様にお膳立てされた婚約ではない。自分で見付けて来たというのか?寄宿学校で?

「去年、話したことは覚えていて、言っているんだな?」
「はい、お許し貰うことは出来ませんか」
「相手はどこの国の方だ?」
「カミオール王国の公爵家の方で…」

 後ろでボソリとメルベールが「公爵?」と言っている。

「寄宿学校で知り合ったのか?」
「いえ、寄宿学校の友人から紹介された方で…」
「アベリーのしたことを話したのか?」

 話した上で、アベリーと結婚したいと言っているのか?公爵家の方が?

「はい、相手は言っていませんが、それでも結婚したいと…言ってくれています」
「そうか、アベリーがラオン大公家に謝罪に行き、許しを請い、許可を得たいということだな?」
「え?」
「違うのか?」
「お父様がお許しを貰うことは…出来ないのですか?」

 やはり人任せ、どうにかして欲しいという意味の方だったかと、落胆した。

「1年前に話した、アベリーだけが謝罪をしていないことは覚えていないのか?」
「それはそうですけど」

 親として付き添うことは出来るが、それ以前の問題である。

「アベリーは約束を守らない、そう言いに行くことになるがいいのか?」
「それは…」
「会って貰えるかが、そもそも分からない。アベリーの寄宿学校の様子は全て、ラオン大公家に伝えている」

 成長したとは言えるが、それまでのことも包み隠さず送っているので、会いたくはないと言われる可能性もある。

「え?何でそんなこと」
「当たり前だろう?寄宿学校もラオン大公家にお伺いをして、許可を得て通えているんだ。でなければ、あのまま邸から修道院に入ることになっていた。12歳で入ることになっていたと話しただろう?」
「…はい」
「私はその前に、自分のしたことを理解し、礼儀、そして学ぶことを知って貰いたい。だから寄宿学校に通う方がいいと思って、入って貰った。本当なら入る前に話したかったが、あの頃のアベリーには届かないと判断した。だから今、話しているんだ。分かるか?」
「でも、聞いて貰うことくらいは出来ませんか?」
「私がか?」
「はい…だって私は怖いもの」

 確かに14歳の子どもには怖いだろうが、自分が決めたことを、説得しようという気もないのか。まだどうにかしてくれるという思いがあるのだろうか。

「お伺いをした時点で、処罰される可能性も分かって言っているんだな?」
「えっ?」
「そうだろう?アベリーは、トスター侯爵家は、約束を守らないと言うのだから。では、別の処罰を追加すると言われると思わないか?」
「えっ、でも」
「もう一つ、今回の帰省の際に話そうと決めていた話がある。それを聞いて、どうしたいかもう一度聞く。いいか?」
「はい…」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】

雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。 誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。 ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。 彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。 ※読んでくださりありがとうございます。 ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

愛は全てを解決しない

火野村志紀
恋愛
デセルバート男爵セザールは当主として重圧から逃れるために、愛する女性の手を取った。妻子や多くの使用人を残して。 それから十年後、セザールは自国に戻ってきた。高い地位に就いた彼は罪滅ぼしのため、妻子たちを援助しようと思ったのだ。 しかしデセルバート家は既に没落していた。 ※なろう様にも投稿中。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

貴妃エレーナ

無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」 後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。 「急に、どうされたのですか?」 「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」 「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」 そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。 どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。 けれど、もう安心してほしい。 私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。 だから… 「陛下…!大変です、内乱が…」 え…? ーーーーーーーーーーーーー ここは、どこ? さっきまで内乱が… 「エレーナ?」 陛下…? でも若いわ。 バッと自分の顔を触る。 するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。 懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

【完結】離縁したいのなら、もっと穏便な方法もありましたのに。では、徹底的にやらせて頂きますね

との
恋愛
離婚したいのですか?  喜んでお受けします。 でも、本当に大丈夫なんでしょうか? 伯爵様・・自滅の道を行ってません? まあ、徹底的にやらせて頂くだけですが。 収納スキル持ちの主人公と、錬金術師と異名をとる父親が爆走します。 (父さんの今の顔を見たらフリーカンパニーの団長も怯えるわ。ちっちゃい頃の私だったら確実に泣いてる) ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 32話、完結迄予約投稿済みです。 R15は念の為・・

処理中です...