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姪へ告知3
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話をした後のアベリーはほとんど喋らなくなり、暗い表情になった。だが優しい言葉を掛けたところで、変わるわけでもない事柄であるため、その場しのぎでしかならないと、そっとして置くことにした。
そして、そのまま寄宿学校に戻ることになった。
メルベールは自分のことは横の置いて、結婚しようと思っていたなんて、何て娘なのかしらと言い、このまま居座ろうとしたが、ならば離縁して伯爵家に戻るかと言えば、領地に帰って行った。
どうやらサイラに伯爵家に戻れば、領地で通いの使用人だけで、軟禁すると言われているそうだ。
キリアムにはアベリーがどう思ったかは分からないが、混乱しているだろうから、しばらくして文を書いて、1年後に聞こうと考え、日々の業務に取り掛かった。
そして、1年が経ち、アベリー14歳の帰省となった―――。
同じように皆で集まったが、アベリーがとんでもないことを言い出した。
「結婚したい人がいるの」
「は?」「何だと?」
さすがにキリアムとマトムは声を上げた。
まだ14歳だ、確かに普通の貴族令嬢なら婚約者がいることはあるかもしれないが、アベリーは違う。
しかも、貴族社会の様にお膳立てされた婚約ではない。自分で見付けて来たというのか?寄宿学校で?
「去年、話したことは覚えていて、言っているんだな?」
「はい、お許し貰うことは出来ませんか」
「相手はどこの国の方だ?」
「カミオール王国の公爵家の方で…」
後ろでボソリとメルベールが「公爵?」と言っている。
「寄宿学校で知り合ったのか?」
「いえ、寄宿学校の友人から紹介された方で…」
「アベリーのしたことを話したのか?」
話した上で、アベリーと結婚したいと言っているのか?公爵家の方が?
「はい、相手は言っていませんが、それでも結婚したいと…言ってくれています」
「そうか、アベリーがラオン大公家に謝罪に行き、許しを請い、許可を得たいということだな?」
「え?」
「違うのか?」
「お父様がお許しを貰うことは…出来ないのですか?」
やはり人任せ、どうにかして欲しいという意味の方だったかと、落胆した。
「1年前に話した、アベリーだけが謝罪をしていないことは覚えていないのか?」
「それはそうですけど」
親として付き添うことは出来るが、それ以前の問題である。
「アベリーは約束を守らない、そう言いに行くことになるがいいのか?」
「それは…」
「会って貰えるかが、そもそも分からない。アベリーの寄宿学校の様子は全て、ラオン大公家に伝えている」
成長したとは言えるが、それまでのことも包み隠さず送っているので、会いたくはないと言われる可能性もある。
「え?何でそんなこと」
「当たり前だろう?寄宿学校もラオン大公家にお伺いをして、許可を得て通えているんだ。でなければ、あのまま邸から修道院に入ることになっていた。12歳で入ることになっていたと話しただろう?」
「…はい」
「私はその前に、自分のしたことを理解し、礼儀、そして学ぶことを知って貰いたい。だから寄宿学校に通う方がいいと思って、入って貰った。本当なら入る前に話したかったが、あの頃のアベリーには届かないと判断した。だから今、話しているんだ。分かるか?」
「でも、聞いて貰うことくらいは出来ませんか?」
「私がか?」
「はい…だって私は怖いもの」
確かに14歳の子どもには怖いだろうが、自分が決めたことを、説得しようという気もないのか。まだどうにかしてくれるという思いがあるのだろうか。
「お伺いをした時点で、処罰される可能性も分かって言っているんだな?」
「えっ?」
「そうだろう?アベリーは、トスター侯爵家は、約束を守らないと言うのだから。では、別の処罰を追加すると言われると思わないか?」
「えっ、でも」
「もう一つ、今回の帰省の際に話そうと決めていた話がある。それを聞いて、どうしたいかもう一度聞く。いいか?」
「はい…」
そして、そのまま寄宿学校に戻ることになった。
メルベールは自分のことは横の置いて、結婚しようと思っていたなんて、何て娘なのかしらと言い、このまま居座ろうとしたが、ならば離縁して伯爵家に戻るかと言えば、領地に帰って行った。
どうやらサイラに伯爵家に戻れば、領地で通いの使用人だけで、軟禁すると言われているそうだ。
キリアムにはアベリーがどう思ったかは分からないが、混乱しているだろうから、しばらくして文を書いて、1年後に聞こうと考え、日々の業務に取り掛かった。
そして、1年が経ち、アベリー14歳の帰省となった―――。
同じように皆で集まったが、アベリーがとんでもないことを言い出した。
「結婚したい人がいるの」
「は?」「何だと?」
さすがにキリアムとマトムは声を上げた。
まだ14歳だ、確かに普通の貴族令嬢なら婚約者がいることはあるかもしれないが、アベリーは違う。
しかも、貴族社会の様にお膳立てされた婚約ではない。自分で見付けて来たというのか?寄宿学校で?
「去年、話したことは覚えていて、言っているんだな?」
「はい、お許し貰うことは出来ませんか」
「相手はどこの国の方だ?」
「カミオール王国の公爵家の方で…」
後ろでボソリとメルベールが「公爵?」と言っている。
「寄宿学校で知り合ったのか?」
「いえ、寄宿学校の友人から紹介された方で…」
「アベリーのしたことを話したのか?」
話した上で、アベリーと結婚したいと言っているのか?公爵家の方が?
「はい、相手は言っていませんが、それでも結婚したいと…言ってくれています」
「そうか、アベリーがラオン大公家に謝罪に行き、許しを請い、許可を得たいということだな?」
「え?」
「違うのか?」
「お父様がお許しを貰うことは…出来ないのですか?」
やはり人任せ、どうにかして欲しいという意味の方だったかと、落胆した。
「1年前に話した、アベリーだけが謝罪をしていないことは覚えていないのか?」
「それはそうですけど」
親として付き添うことは出来るが、それ以前の問題である。
「アベリーは約束を守らない、そう言いに行くことになるがいいのか?」
「それは…」
「会って貰えるかが、そもそも分からない。アベリーの寄宿学校の様子は全て、ラオン大公家に伝えている」
成長したとは言えるが、それまでのことも包み隠さず送っているので、会いたくはないと言われる可能性もある。
「え?何でそんなこと」
「当たり前だろう?寄宿学校もラオン大公家にお伺いをして、許可を得て通えているんだ。でなければ、あのまま邸から修道院に入ることになっていた。12歳で入ることになっていたと話しただろう?」
「…はい」
「私はその前に、自分のしたことを理解し、礼儀、そして学ぶことを知って貰いたい。だから寄宿学校に通う方がいいと思って、入って貰った。本当なら入る前に話したかったが、あの頃のアベリーには届かないと判断した。だから今、話しているんだ。分かるか?」
「でも、聞いて貰うことくらいは出来ませんか?」
「私がか?」
「はい…だって私は怖いもの」
確かに14歳の子どもには怖いだろうが、自分が決めたことを、説得しようという気もないのか。まだどうにかしてくれるという思いがあるのだろうか。
「お伺いをした時点で、処罰される可能性も分かって言っているんだな?」
「えっ?」
「そうだろう?アベリーは、トスター侯爵家は、約束を守らないと言うのだから。では、別の処罰を追加すると言われると思わないか?」
「えっ、でも」
「もう一つ、今回の帰省の際に話そうと決めていた話がある。それを聞いて、どうしたいかもう一度聞く。いいか?」
「はい…」
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