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姪へ告知1
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アベリーが寄宿学校に入って、早五年が経っていた。一年に一度しか会わない分、成長を感じていたが、10歳になった頃から劇的に変わった。
「お父様、ご無沙汰しております。お元気でしたか」
その言葉だけで驚いたが、礼儀作法もみっちり教え込まれているようで、貴族令嬢らしい振る舞いになっていた。
「ああ、元気だよ。アベリーは、すっかり大人になったな」
「淑女教育も厳しくなりましたから」
「そうか」
キリアムは13歳の時の帰省の際に、修道院に入ることを話すことを決めていた。14歳ではあと僅かになり、卒業時に話すより、心積もりをして置いた方がいい、これからのあと1年弱を大事に使って欲しいという思いからだった。
ラオン大公家には、アベリーの寄宿学校の成績や報告をそのまま送っている。
そして、アベリーは13歳となった際の帰省。キリアム、マトムとレイア、そしてアレクスとサイラも立ち会うことになった。
グラーフ伯爵夫妻には11歳の時にようやく会ったが、アレクスは大きくなり、きちんとしたアベリーの人生を変えてしまったことを、酷く胸を痛めた。だからこそ、非難を受ける覚悟で立ち会うことを決めた。
メルベールも久しぶりに領地から、立ち会うために呼び寄せた。数日前から戻って来ていたが、これで元に戻れるのではないかと思っているようで、うんざりした。
あれからいつか何か問題を起こすのではないかと思っていたが、これまで人を頼りに生きて来て、誰も助けてくれない状況に、何も出来なかった。
キリアムは寄宿学校に入ってからは、アベリーに怪我をさせたことは一切、話を出さずにいた。自分で気付き、反省する言葉が出るのではないかと期待もしていた。
だが、反省の言葉は出なかった。覚えていない可能性も考えたが、覚えていなくても、事実が変わることはない。
いくら受け入れなくても、冷静に話をしなくてはならないと思った。
「アベリー、5歳の時に女の子に怪我をさせたことは覚えているか?」
「覚えているわ。あれから外に出して貰えなくなったもの」
「そうだね、今はどう思っている?」
「悪いことをしたとは分かっているわ、でもあの頃は思っていなかった。だから閉じ込められたのよね?」
「そうだね、なぜあんなことをしたのか、今では分かるかい?」
「良いなって思う物は何でも手に入ると思っていたから」
キリアムはあの時、喚いていたアベリーが、きちんと話せていることに感動すらした。メルベールも薄っすら目に涙を溜めている。
「それはどうしてか分かるかい?」
「欲しいと言えば買って貰えたし、お父様が駄目でもお祖父様、誰かが買ってくれたもの。それが当たり前だと思っていたから」
「女の子の物を奪おうとしたのは、なぜか分かるかい?」
「…可愛くて、私が持っている物より、素敵だったからだと思うわ」
「そうか、奪ってもいいと思ったのはなぜか分かるかい?」
「それは…」
「それは?」
「私が貰ってもいいじゃないという気持ちだったと思う…」
アベリーも悪いことだったとは分かっているので、バツが悪そうに下を向いた。
「修道院の話を覚えているかい?」
まだ子どもには分からないかもしれないと思いながら、アベリーは反省するために、修道院に行くことになると話してはあった。
「修道院は知っているけど…」
やはり伝わってはいなかったか、怪我をさせ、外に出して貰えなくなったことは、強い記憶として残っていたのだろう。
「アベリーは寄宿学校を卒業したら、修道院に入ることが決まっている。5歳の頃から何度か話したが、覚えていないか?」
「え?なにそれ…」
アベリーはポカンという顔で、口が開いたままになった。
「お父様、ご無沙汰しております。お元気でしたか」
その言葉だけで驚いたが、礼儀作法もみっちり教え込まれているようで、貴族令嬢らしい振る舞いになっていた。
「ああ、元気だよ。アベリーは、すっかり大人になったな」
「淑女教育も厳しくなりましたから」
「そうか」
キリアムは13歳の時の帰省の際に、修道院に入ることを話すことを決めていた。14歳ではあと僅かになり、卒業時に話すより、心積もりをして置いた方がいい、これからのあと1年弱を大事に使って欲しいという思いからだった。
ラオン大公家には、アベリーの寄宿学校の成績や報告をそのまま送っている。
そして、アベリーは13歳となった際の帰省。キリアム、マトムとレイア、そしてアレクスとサイラも立ち会うことになった。
グラーフ伯爵夫妻には11歳の時にようやく会ったが、アレクスは大きくなり、きちんとしたアベリーの人生を変えてしまったことを、酷く胸を痛めた。だからこそ、非難を受ける覚悟で立ち会うことを決めた。
メルベールも久しぶりに領地から、立ち会うために呼び寄せた。数日前から戻って来ていたが、これで元に戻れるのではないかと思っているようで、うんざりした。
あれからいつか何か問題を起こすのではないかと思っていたが、これまで人を頼りに生きて来て、誰も助けてくれない状況に、何も出来なかった。
キリアムは寄宿学校に入ってからは、アベリーに怪我をさせたことは一切、話を出さずにいた。自分で気付き、反省する言葉が出るのではないかと期待もしていた。
だが、反省の言葉は出なかった。覚えていない可能性も考えたが、覚えていなくても、事実が変わることはない。
いくら受け入れなくても、冷静に話をしなくてはならないと思った。
「アベリー、5歳の時に女の子に怪我をさせたことは覚えているか?」
「覚えているわ。あれから外に出して貰えなくなったもの」
「そうだね、今はどう思っている?」
「悪いことをしたとは分かっているわ、でもあの頃は思っていなかった。だから閉じ込められたのよね?」
「そうだね、なぜあんなことをしたのか、今では分かるかい?」
「良いなって思う物は何でも手に入ると思っていたから」
キリアムはあの時、喚いていたアベリーが、きちんと話せていることに感動すらした。メルベールも薄っすら目に涙を溜めている。
「それはどうしてか分かるかい?」
「欲しいと言えば買って貰えたし、お父様が駄目でもお祖父様、誰かが買ってくれたもの。それが当たり前だと思っていたから」
「女の子の物を奪おうとしたのは、なぜか分かるかい?」
「…可愛くて、私が持っている物より、素敵だったからだと思うわ」
「そうか、奪ってもいいと思ったのはなぜか分かるかい?」
「それは…」
「それは?」
「私が貰ってもいいじゃないという気持ちだったと思う…」
アベリーも悪いことだったとは分かっているので、バツが悪そうに下を向いた。
「修道院の話を覚えているかい?」
まだ子どもには分からないかもしれないと思いながら、アベリーは反省するために、修道院に行くことになると話してはあった。
「修道院は知っているけど…」
やはり伝わってはいなかったか、怪我をさせ、外に出して貰えなくなったことは、強い記憶として残っていたのだろう。
「アベリーは寄宿学校を卒業したら、修道院に入ることが決まっている。5歳の頃から何度か話したが、覚えていないか?」
「え?なにそれ…」
アベリーはポカンという顔で、口が開いたままになった。
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