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答え14
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「貴族としてもあり得ないでしょう?見方によっては人の手柄を奪う行為ですよ?義母上は良しとしない、義父上はどうですか?答えてください」
「だが、奪ったと言ってもユーリですから」
「ではユーリが行ったことを頼まれたらどうするんですか?また先程の様に最近は行っていない、忘れたと嘘を付くのですか?」
ここにユーリがいれば、アレクスはユーリが言わなかったのが悪いと、ユーリのせいにしていただろうが、もうユーリはいない。
「これからは別の人から奪う気かもしれませんよ?」
「そ、そんなこと」
「そんな人間と一緒にいれない。アベリーは離れていますが、息子たちにもどんな影響があるか分からない」
「ですが」
「では義父上は、平気で嘘を付く人間を商談の席に座らせますか?信用の出来ない相手と取引しますか?」
「それは…」
アレクスには商売に例えれば、違うとは言えないと分かっていた。
「どこでどんな嘘を付いているか分からない。とても恐ろしいことだとは思いませんか?裁判でハッキリさせるのもいいかもしれませんね」
「裁判は…」
さすがのアレクスも裁判になれば何も出来ない、サイラが言ったことが本当ならば、ユーリがいなくても証人が集まるかもしれない。そんなことをすれば、メルベールはもう表を歩けない。
「では離縁に了承してください」
「離縁は…」
死ねば良かったと言われたのにも関わらず、アレクスはメルベールを擁護することが、沁みついてしまっている。
「では領地で蟄居するかですね…社交界には恐ろしくて出せません」
「王家主催でもない限り、呼ばれることもないんじゃないかしら?」
「それもそうですね…」
義母上は極めて冷静だ、どのような生活をしていたのか分からないが、情報を持ち、皆がどんな状況かを把握していると思われる。
おそらく、情報元はユーリを大事にしてきた方々だろう。敵うはずがない。
「義父上はどうして、ユーリに辛く当たっていたのですか?最後に聞かせてください。私も親になって、メルベールとユーリが娘だったら、メルベールの方がユーリより可愛いとは思えません」
「ユ、ユーリは我儘なんだ、言う通りに出来ない」
「メルベールの方が余程出来ていませんよね?成績だって、令嬢としても、夫人としても、出来ていないことばかり。義父上も嘘に気付いていたのですか?」
「お父様…」
メルベールは死ねば良かったと言ったことも忘れて、この場で味方は父親しかいないと、いつものようにお願いとじっと見た。
「ユーリは表向きは出来たかもしれないが、場を読んだり、気が利かないのだ。別に辛く当たっていたわけじゃない、注意をしていた」
「ではメルベールがユーリよりも出来たことを教えてください」
「機転が利き、素直で、優しい子だ」
「お、お父様…」
メルベールだけがアレクスを嬉しそうに見ており、他の皆は嘘を付くことを機転が利くと思っているのか、分かっていて庇っているのかと思っていた。
「ユーリが出来ないことがあったか?オーランド」
「ないな、口数は多くないが、邸のことも執事が気付けないところを、気付いてくれていたと使用人も言っていた。報告書も見ての通り完璧だ」
「その上、仕事もしていて、人脈だってメルベールとは比べ物にならない。なぜなのですか?馬鹿な子ほど可愛いということでしょうか?」
「キリアムくん、私もいいかしら?」
声を上げたサイラにキリアムが勿論ですと譲ると、今日初めてアレクスを真正面から見据えた。
「私もユーリに対する態度の理由を教えて欲しいわ。何度聞いても、先程と同じような答え」
「っな、何がだ」
「先に言っておくわ、私はラオン大公閣下夫妻にも、恥を忍んでお会いしております。つまり、ユーリが毒を飲む前に何を言ったか、お聞きしております」
皆は息を呑んだ、生きる証人にサイラは何があったか、聞いている。そして、アレクスに言ったということは、関わっているということだろうと考えた。
「だが、奪ったと言ってもユーリですから」
「ではユーリが行ったことを頼まれたらどうするんですか?また先程の様に最近は行っていない、忘れたと嘘を付くのですか?」
ここにユーリがいれば、アレクスはユーリが言わなかったのが悪いと、ユーリのせいにしていただろうが、もうユーリはいない。
「これからは別の人から奪う気かもしれませんよ?」
「そ、そんなこと」
「そんな人間と一緒にいれない。アベリーは離れていますが、息子たちにもどんな影響があるか分からない」
「ですが」
「では義父上は、平気で嘘を付く人間を商談の席に座らせますか?信用の出来ない相手と取引しますか?」
「それは…」
アレクスには商売に例えれば、違うとは言えないと分かっていた。
「どこでどんな嘘を付いているか分からない。とても恐ろしいことだとは思いませんか?裁判でハッキリさせるのもいいかもしれませんね」
「裁判は…」
さすがのアレクスも裁判になれば何も出来ない、サイラが言ったことが本当ならば、ユーリがいなくても証人が集まるかもしれない。そんなことをすれば、メルベールはもう表を歩けない。
「では離縁に了承してください」
「離縁は…」
死ねば良かったと言われたのにも関わらず、アレクスはメルベールを擁護することが、沁みついてしまっている。
「では領地で蟄居するかですね…社交界には恐ろしくて出せません」
「王家主催でもない限り、呼ばれることもないんじゃないかしら?」
「それもそうですね…」
義母上は極めて冷静だ、どのような生活をしていたのか分からないが、情報を持ち、皆がどんな状況かを把握していると思われる。
おそらく、情報元はユーリを大事にしてきた方々だろう。敵うはずがない。
「義父上はどうして、ユーリに辛く当たっていたのですか?最後に聞かせてください。私も親になって、メルベールとユーリが娘だったら、メルベールの方がユーリより可愛いとは思えません」
「ユ、ユーリは我儘なんだ、言う通りに出来ない」
「メルベールの方が余程出来ていませんよね?成績だって、令嬢としても、夫人としても、出来ていないことばかり。義父上も嘘に気付いていたのですか?」
「お父様…」
メルベールは死ねば良かったと言ったことも忘れて、この場で味方は父親しかいないと、いつものようにお願いとじっと見た。
「ユーリは表向きは出来たかもしれないが、場を読んだり、気が利かないのだ。別に辛く当たっていたわけじゃない、注意をしていた」
「ではメルベールがユーリよりも出来たことを教えてください」
「機転が利き、素直で、優しい子だ」
「お、お父様…」
メルベールだけがアレクスを嬉しそうに見ており、他の皆は嘘を付くことを機転が利くと思っているのか、分かっていて庇っているのかと思っていた。
「ユーリが出来ないことがあったか?オーランド」
「ないな、口数は多くないが、邸のことも執事が気付けないところを、気付いてくれていたと使用人も言っていた。報告書も見ての通り完璧だ」
「その上、仕事もしていて、人脈だってメルベールとは比べ物にならない。なぜなのですか?馬鹿な子ほど可愛いということでしょうか?」
「キリアムくん、私もいいかしら?」
声を上げたサイラにキリアムが勿論ですと譲ると、今日初めてアレクスを真正面から見据えた。
「私もユーリに対する態度の理由を教えて欲しいわ。何度聞いても、先程と同じような答え」
「っな、何がだ」
「先に言っておくわ、私はラオン大公閣下夫妻にも、恥を忍んでお会いしております。つまり、ユーリが毒を飲む前に何を言ったか、お聞きしております」
皆は息を呑んだ、生きる証人にサイラは何があったか、聞いている。そして、アレクスに言ったということは、関わっているということだろうと考えた。
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