似て非なる双子の結婚

答え２

「後押しをしたのは間違いないでしょう」
「どういうことなの！」

　声を上げたのはメルベール。アレクスは驚いてはいるが、黙ったままである。

「あの事件の前に私の子どもを妊娠していると、邸にやって来た女がいたんだ」
「何よそれ！そんなこと聞いてないわ」
「その女は前に関係を持ったことがあった。子どもは私の子ではなかったが、不貞の事実に変わりはない」

　リリア・コートの子どもは結局、養子に出されたようで、必要ないかもしれないが、父親に目星は付いていた。顔は似ていないが私に背格好の似ている騎士がいた、あの子どもと色味も合う。コート子爵のおかげか、リリアは接触して来ないことから、何も言ってはいないが、何かあれば動く予定であった。

「最低じゃない！どうして今まで言わなかったのよ！」

　メルベールは立ち上がって、オーランドに掴み掛かりそうな勢いだったが、キリアムが落ち着けと、無理矢理に座らせた。

「キリアムも知っていたの？知っていて庇っていたの？」
「メルベールは黙っていなさい！」
「黙っていられるわけがないじゃない！ユーリは裏切られていたのよ！怒って当然でしょう」
「そうじゃないわ、話が進まないから、黙っていなさいと言っているの。分からないの？」

　メルベールは不満そうではあったが、サイラの言葉に黙らざる得なかった。

「最低です。知られなかったら、言わなかったと思います」
「オーランドくんは結婚しても、不貞を繰り返していたのはなぜですか？」
「―――っ」

　オーランドの喉がキュッと締まった感覚に陥った、サイラの誘導尋問ではない断定的な言い方に、全て知られているのだと思った。

「他にもいたって言うの！」
「メルベール！黙りなさいというのが聞こえないの？本当に堪え性のない」

　呆れるサイラに、オーランドはメルベールを無視して、素直に認めることにした。

「私は結婚前は、情報を聞き出すために、女性と関係を持つことがありました。その延長で、結婚しても簡単に関係を持っていました…」
「認めてくれてありがとう。名前を読み上げる手間が省けたわ」

　その言葉に驚いたのはマトムとレイアだった。

「申し訳ございません」
「私に謝られても困るわ、もう二度と届くことはない。そう言ったはずよ」
「はい…その通りです」

　サイラに謝って、ユーリに謝った気になるなということだろう。

「医院に、何人か来ていたそうです」
「―――っ」

　まさか…リリア・コートのこと、そしてシュアト公爵家に他の相手も知られているかもしれないと思ってはいたが、ユーリも知っていたというのか。

「恋人だの、愛人だの、愛し合っているなどと言っていたそうですが、邸に来たのがリリア・コートだっただけなのですよ」
「ユーリは、ずっと知っていたと、いうのですか」
「最低じゃない！どうしてユーリは私に相談してくれなかったの？キリアムがいるから相談にしにくかったのかしら」
「メルベール、黙りなさいと言ったはずよ。あなたの言葉は今、誰も求めていないの。次に話したら、呼ぶまで追い出します」
「酷い！私はユーリのために」
「そうだ！メルベールはユーリのために言っているんだろうが！」

　いつもなら自分の主軸に話が進むことが当たり前のメルベールは、自分が中心になっていないことに、不満で仕方なかった。

「あなたも出てて貰って構わないわ。私は今、オーランド君と話しているの」
「っな」
「私は何てことを…」

　マトムとサイラは黙って聞いていたが、さすがに口を挟んでどうにかなるような、話ではない。

「リリア・コートのことは、邸に来る前から知っていたそうです」
「…え」
「調べていたのかと思ってるのでしょう？違いますよ」
「どういう、ことですか」