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義兄の調査1
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「確か、奥様とユーリ様と字がとても似ていると仰っていましたよね」
「嘘だろう…」
メルベールが内密に頼める相手で、相手がやってくれる存在とすれば、ユーリしかいない。ユーリがわざわざ言うこともない。
「思い返せば、時折、奥様が内密にユーリ様を呼んでいたことがありました」
「ここへか?」
「はい、キリアム様には内緒にして欲しいと、姉妹のことですからと言われれば、特に言うことはありませんでしたが…」
「報告されても、そうかとしか思わなかっただろうな。仕事もしていないのに、書類までユーリに任せていたのか?」
「字はよく似ておりますが、数字の書き方が違うように思いまして」
「確かに」
以前の報告書の数字は傾いて書かれているが、メルベール今回書いた数字は少し傾いてはいるが、丸の大きさや7の書き方が明らかに違う。
「これも嘘だったのか…オーランドに報告書を見せて貰えば、明らかになるだろうな…こんなことまでやらせていたのか…信じられない」
「こちらに関しては可能性が高いと思います」
「全て嘘なのではないかと思えて来たよ、やりたくないことは、全部ユーリにやって貰っていたんじゃないのか?」
「お調べになりますか?」
「オーランドに相談してみるよ、さすがに母上でも自分でやっていたことだ」
いくら恥知らずな母親でも、執務はきちんと行っていた。メルベールとユーリも嫁ぐ前に、レイアから指導を受けている。
「書類は任せておいては間に合いませんでしょう、私も手伝います」
「悪いな…」
「いえ、ですがユーリ様がいなくなって、何かが崩れ始めているように思いますね」
「本当にそうだな」
二人は書類に取り掛かり、メルベールには何も言わないことになり、メルベールは大丈夫だったのねとしか思っていなかった。
キリアムはオーランドを以前の支出報告書を持って、訪ねることにした。
「収支はユーリがやっていたのか?」
「そうだ。執事にも手伝うように言っていたが、多分手伝っていないだろうな」
「ああ…実はユーリの支出報告書を見せて欲しいんだ」
「構わないが、どうしてだ?」
「メルベールがユーリにやらせていた可能性がある」
「は?嘘だろ…」
そう言いながら、オーランドは信じられない気持ちもあるが、メルベールならやり兼ねないと思えることが、積み重ねってしまっている。
「嘘だといいが、おそらく可能性は高い。アベリーのことがあって、ずっと私がやっていたんだが、元に戻したら、滅茶苦茶でな。執事によるとユーリを内密に呼び出していたことがあったと」
「ちょっと待ってくれ」
オーランドがそう言って棚から書類を出すと、キリアムが持って来た書類と、字体や数字、書き方も明らかに同じであった。
「同じだな…」
「ああ、書き方など変えようとは思うようなものではないからな」
「何てことだ…」
「どうするつもりだ?」
これからのことを考えれば、見て見ぬ振りをしていい問題ではないが、キリアムはどうするつもりなのだろうか。
「メルベールにはまだ何も言っていない。もし問い詰めても、私がが書いた物だと言い張るか、ユーリに清書して貰っただけだとか言いそうじゃないか?」
「ルオンが言っていた、悪意まではないから、質が悪いと」
「その通りだな。出来ないからやって貰ったとは言い出さない、嘘で塗り固めているだけだ。正直、信じられないんだよ、もう。全部、嘘なんじゃないか?」
キリアムはソファの背にもたれ掛かり、天井を見ながら、溜息を付いた。
「例えば?」
「ノートの写しとか、刺繍のハンカチとか、手作りのお菓子とか…ユーリにやって貰ったんじゃないか?」
「それは…私には分からないが」
可能性はあるが、証拠が残っていても、いくらでも言い逃れは出来るだろう。
「嘘だろう…」
メルベールが内密に頼める相手で、相手がやってくれる存在とすれば、ユーリしかいない。ユーリがわざわざ言うこともない。
「思い返せば、時折、奥様が内密にユーリ様を呼んでいたことがありました」
「ここへか?」
「はい、キリアム様には内緒にして欲しいと、姉妹のことですからと言われれば、特に言うことはありませんでしたが…」
「報告されても、そうかとしか思わなかっただろうな。仕事もしていないのに、書類までユーリに任せていたのか?」
「字はよく似ておりますが、数字の書き方が違うように思いまして」
「確かに」
以前の報告書の数字は傾いて書かれているが、メルベール今回書いた数字は少し傾いてはいるが、丸の大きさや7の書き方が明らかに違う。
「これも嘘だったのか…オーランドに報告書を見せて貰えば、明らかになるだろうな…こんなことまでやらせていたのか…信じられない」
「こちらに関しては可能性が高いと思います」
「全て嘘なのではないかと思えて来たよ、やりたくないことは、全部ユーリにやって貰っていたんじゃないのか?」
「お調べになりますか?」
「オーランドに相談してみるよ、さすがに母上でも自分でやっていたことだ」
いくら恥知らずな母親でも、執務はきちんと行っていた。メルベールとユーリも嫁ぐ前に、レイアから指導を受けている。
「書類は任せておいては間に合いませんでしょう、私も手伝います」
「悪いな…」
「いえ、ですがユーリ様がいなくなって、何かが崩れ始めているように思いますね」
「本当にそうだな」
二人は書類に取り掛かり、メルベールには何も言わないことになり、メルベールは大丈夫だったのねとしか思っていなかった。
キリアムはオーランドを以前の支出報告書を持って、訪ねることにした。
「収支はユーリがやっていたのか?」
「そうだ。執事にも手伝うように言っていたが、多分手伝っていないだろうな」
「ああ…実はユーリの支出報告書を見せて欲しいんだ」
「構わないが、どうしてだ?」
「メルベールがユーリにやらせていた可能性がある」
「は?嘘だろ…」
そう言いながら、オーランドは信じられない気持ちもあるが、メルベールならやり兼ねないと思えることが、積み重ねってしまっている。
「嘘だといいが、おそらく可能性は高い。アベリーのことがあって、ずっと私がやっていたんだが、元に戻したら、滅茶苦茶でな。執事によるとユーリを内密に呼び出していたことがあったと」
「ちょっと待ってくれ」
オーランドがそう言って棚から書類を出すと、キリアムが持って来た書類と、字体や数字、書き方も明らかに同じであった。
「同じだな…」
「ああ、書き方など変えようとは思うようなものではないからな」
「何てことだ…」
「どうするつもりだ?」
これからのことを考えれば、見て見ぬ振りをしていい問題ではないが、キリアムはどうするつもりなのだろうか。
「メルベールにはまだ何も言っていない。もし問い詰めても、私がが書いた物だと言い張るか、ユーリに清書して貰っただけだとか言いそうじゃないか?」
「ルオンが言っていた、悪意まではないから、質が悪いと」
「その通りだな。出来ないからやって貰ったとは言い出さない、嘘で塗り固めているだけだ。正直、信じられないんだよ、もう。全部、嘘なんじゃないか?」
キリアムはソファの背にもたれ掛かり、天井を見ながら、溜息を付いた。
「例えば?」
「ノートの写しとか、刺繍のハンカチとか、手作りのお菓子とか…ユーリにやって貰ったんじゃないか?」
「それは…私には分からないが」
可能性はあるが、証拠が残っていても、いくらでも言い逃れは出来るだろう。
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