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弟と従姉妹1
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「「お従兄様っ!」」
ルオンの元へいかにも貴族という名前の17歳のリルフォーミュア・パーシと、15歳のミリージュアン・パーシ姉妹がやって来た。ようやく来なくなった、叔父であるトアス・パーシ子爵の娘たちである。
大層な名前を付けて貰っているが、いつ聞いても名前負けとしか思えない。
パーシ子爵家は一回の援助がなかっただけで、父・アレクスがどれほど渡していたのか、それとも贅沢過ぎたのかは知らないが、支払いが滞り、かなり厳しい状況になっていることは分かっている。
グラーフ伯爵家では門前払いさせるために、ルオンの出掛けた馬車が帰って来るのを、待ち構えていたようだ。
「どうされますか?」
「父は不在か?」
「はい、夕方には戻られると聞いています」
「父親から娘なら何とかしてくれると思って寄こしたのか?まあ、最後かもしれないから会っておこうか」
本邸の方の応接室に通して、話をすることにした。これでいつ父が帰って来るか分からない状況となるだろう。
「お従兄様、私たち困っているの。従兄なんだから助けてくれるでしょう?」
「父親に頼まれたのか?」
「違うわ」「私たちの意思で来たの」
「ならば父上に頼みなさい」
「伯父様は…」
パーシ子爵家にとって、父は機嫌を損ねてはならない存在だ。おそらく会っても、怖くて話せないだろう。
「パパが支払いが出来ないって、頼んだはずのドレスも売ることになって、パーティーで着る予定だったのよ」
「そうよ、楽しみにしていたのに」
「援助金を当てにして?」
「だってそんなこと知らなかったもの」「そうよ…私たちは悪くないわ」
それほど身の丈に合わない生活をしていたということだろう。ドレスなどと言い出すような者は、知っていようがいまいが、関係ない。
「私には権利がない」
「でも、困っているの…だからお従兄様から、伯父様に言って欲しいの」
「パパが邸を売るしかないって、そんなの困るわ」
「身の丈に合わない贅沢をしたからだろう?お前たちは生まれてからずっとだから、当たり前だと思っていたんだろうが、今後は改めた方がいい」
「でも家族として援助して貰えば…」
「家族ね?都合のいい時だけだろう?」
叔父もこの姉妹もユーリ姉様の葬式にも来なかった。グラーフ伯爵家は金蔓としか思っていない。金がなくなった時にしか現れないのが、物語っている。今もユーリ姉様へのお悔やみの言葉すら言わない。
「でも伯母様だって、邸がなくなったら嫌なはずよ」
「そんなことはない、母上はずっと前から売ればいいと思っているよ。自分を売ったようにね?」
「え?」「どういう意味?」
「母上はパーシ子爵家の贅沢のために、君の祖父母と父親に売られたようなものだ、その上で援助をしていたに過ぎない」
母上は父上に逆らえなかったのは、援助が原因だ。ユーリのことがきっかけにはなったが、私たち子どものことを思って伯爵家にいたに過ぎない。子どもも幼い子ではないとすれば、母がここにいる理由はない。
「じゃあ、援助を…」
「善意だからね?止めると言われたら、そこでお終いだよ」
「でも、従兄じゃない!どうして…」
「そうよ!グラーフ伯爵家はお金持ちなんでしょう?分けてくれてもいいじゃない」
「じゃあ、我が家が今、実はお金に困っていると言ったら、借金をしてでも、パーシ子爵家は用意してくれるのか?」
「え」「それは…」
するはずがない、与えられることだけしか考えていない。正直、お金だけで繋がっているような関係だった。
グラーフ伯爵家も母上も出て行って、父上が連れて行った先でアベリーが事件を起こして、ユーリが亡くなって、今後どうなるかは分からない。
私たちも邸を売ることになるかもしれない。
ルオンの元へいかにも貴族という名前の17歳のリルフォーミュア・パーシと、15歳のミリージュアン・パーシ姉妹がやって来た。ようやく来なくなった、叔父であるトアス・パーシ子爵の娘たちである。
大層な名前を付けて貰っているが、いつ聞いても名前負けとしか思えない。
パーシ子爵家は一回の援助がなかっただけで、父・アレクスがどれほど渡していたのか、それとも贅沢過ぎたのかは知らないが、支払いが滞り、かなり厳しい状況になっていることは分かっている。
グラーフ伯爵家では門前払いさせるために、ルオンの出掛けた馬車が帰って来るのを、待ち構えていたようだ。
「どうされますか?」
「父は不在か?」
「はい、夕方には戻られると聞いています」
「父親から娘なら何とかしてくれると思って寄こしたのか?まあ、最後かもしれないから会っておこうか」
本邸の方の応接室に通して、話をすることにした。これでいつ父が帰って来るか分からない状況となるだろう。
「お従兄様、私たち困っているの。従兄なんだから助けてくれるでしょう?」
「父親に頼まれたのか?」
「違うわ」「私たちの意思で来たの」
「ならば父上に頼みなさい」
「伯父様は…」
パーシ子爵家にとって、父は機嫌を損ねてはならない存在だ。おそらく会っても、怖くて話せないだろう。
「パパが支払いが出来ないって、頼んだはずのドレスも売ることになって、パーティーで着る予定だったのよ」
「そうよ、楽しみにしていたのに」
「援助金を当てにして?」
「だってそんなこと知らなかったもの」「そうよ…私たちは悪くないわ」
それほど身の丈に合わない生活をしていたということだろう。ドレスなどと言い出すような者は、知っていようがいまいが、関係ない。
「私には権利がない」
「でも、困っているの…だからお従兄様から、伯父様に言って欲しいの」
「パパが邸を売るしかないって、そんなの困るわ」
「身の丈に合わない贅沢をしたからだろう?お前たちは生まれてからずっとだから、当たり前だと思っていたんだろうが、今後は改めた方がいい」
「でも家族として援助して貰えば…」
「家族ね?都合のいい時だけだろう?」
叔父もこの姉妹もユーリ姉様の葬式にも来なかった。グラーフ伯爵家は金蔓としか思っていない。金がなくなった時にしか現れないのが、物語っている。今もユーリ姉様へのお悔やみの言葉すら言わない。
「でも伯母様だって、邸がなくなったら嫌なはずよ」
「そんなことはない、母上はずっと前から売ればいいと思っているよ。自分を売ったようにね?」
「え?」「どういう意味?」
「母上はパーシ子爵家の贅沢のために、君の祖父母と父親に売られたようなものだ、その上で援助をしていたに過ぎない」
母上は父上に逆らえなかったのは、援助が原因だ。ユーリのことがきっかけにはなったが、私たち子どものことを思って伯爵家にいたに過ぎない。子どもも幼い子ではないとすれば、母がここにいる理由はない。
「じゃあ、援助を…」
「善意だからね?止めると言われたら、そこでお終いだよ」
「でも、従兄じゃない!どうして…」
「そうよ!グラーフ伯爵家はお金持ちなんでしょう?分けてくれてもいいじゃない」
「じゃあ、我が家が今、実はお金に困っていると言ったら、借金をしてでも、パーシ子爵家は用意してくれるのか?」
「え」「それは…」
するはずがない、与えられることだけしか考えていない。正直、お金だけで繋がっているような関係だった。
グラーフ伯爵家も母上も出て行って、父上が連れて行った先でアベリーが事件を起こして、ユーリが亡くなって、今後どうなるかは分からない。
私たちも邸を売ることになるかもしれない。
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