似て非なる双子の結婚

夫と義母２

「恥ずかしいことをしましたと、反省を見せる方がまだマシだと思いますよ」
「私に、認めろって言うの！」

　そんなこと出来るはずないじゃない、プライドが許さない。夫もキリアムもオーランドも、母親なのに庇うべきでしょう。

「事実じゃないですか」
「ユーリがいれば、違うって言ってくれればいい話なのよ…どうしてみんな、分からないのよ」

　ユーリがいれば全て片付く話なのに。ユーリは子どもは出来なかったけど、従ってくれる理想的ないい嫁だった。これからも重宝しようと思っていたのに。

「事実を捻じ曲げて、強要するつもりですか？気色悪いことで…」
「っな、あなた、母親に向かって」
「母親なら嫁にたかるような真似をするべきではなかったし、せめて同じ対価の物を欠かさず返すべきでした。そうではありませんか？」
「…それは」

　返さなかったのは悪かったけど、嫁にそんなに高価な物を贈る必要はないじゃない。ハンカチ一枚だって、有難く受け取るものでしょう？

　強請っていたとしても、喜んで貰えたなら嬉しいことでしょう？そんな些細なことをどうして皆は責めるかしら。

　私は親にそうやって育てられたんだもの、間違っているはずがない。

「あなたがわざわざ、ここへ、言いに来ていることを見た使用人がいました。カタログまで持って来ていたそうですね？」
「どうかなって言いに来ただけだって、言っているでしょう！」
「まだ認めないのですか？いい加減、面倒なんですけど。貰うことには必死になれるけど、贈る方は出来ないんですよね？あなたは些細なことだと思っているでしょうけど、これは人間性の話ですよ？父上も同じように思っていると思いますよ」
「っそんな、それは嫁だからで」
「嫁だろうが何だろうが関係ない！あなたは厚意を返せない人だと、よく分かりました。私もこれから、あなたにはその上で対応します」

　どうしてそんな風に言うの？嫁以外にはちゃんとしていたわ、嫁ならいいはずでしょう？息子ならそのくらいいじゃないかと言ってくれるはずでしょう？間違っているのは皆の方なのに。

「でっ、でも、あなたも再婚する時に困るでしょう？」
「再婚は考えていません。こんな状況ですし、爵位も継がなくても戻せばいいだけですから」
「まだ若いんだから、再婚すべきよ！子どもだって欲しいでしょう？その時に変な噂があったら、良くないじゃない？」

　再婚するなら、いい相手でなくてはならない。変な噂で、碌でもない嫁しか来なかったら困る。メルベールも平気で嘘を付くことが分かり、もう信用は出来ない。

　誰も言わないから口にはしていないが、離縁させてもいいとも思っている。

　だからこそオーランドには、いい嫁を嫁がせなくてはならない。ユーリのように従ってくれて、もう少し明るい令嬢がいいわね、探しておかないといけないわね。

「あそこの家は、嫁にたかる姑がいると思われるということですか？」
「誤解を招くような言い方は止めて頂戴」
「誤解じゃないでしょう、確かにそんな姑がいるような家には来たくないでしょうね。断るのに使いましょうか？」
「あっ、なた」

　そんな私のせいみたいに言うなんて、良くないことだと分かっていないの？

「疲れているんです、帰ってください」
「待って、お願いよ、私は侯爵夫人なの。私がこんな状態だとあなたも困るのよ？嘘も方便っていうじゃない？ねえ」
「帰ってください、それとも父上に連絡しましょうか」

　夫もいつも私が悩んでいたら、どうしたのか聞いてくれるはずが、話し掛けても来ない。オーランドにいい返事を貰って、打開策を話すしかないと思っていたのに、呼ばれたりしたら、ますます状況が悪くなる。

「っ、分かったわ、また来るわ」
「忙しいので、来ないでください」

　何も解決しないまま、侯爵邸に戻っても、夫は一切姿を現さず、食事ももう済まされましたと言われてしまった。