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悩める夫たち1
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ルオンから聞いた話を父・マトムとキリアムに義母上は娘を見殺しにした罪は負わないといけないと出て行ったこと。
義父上・アレクスも探していて、見付かっておらず、連絡もないことを伝えた。メルベールの話は父には話すのは、キリアムに話してからにしようと思っていた。
皮肉にもマトムも、キリアムも、オーランドも、アレクスも、妻のことで悩ましい思いをする日々となっていた。
マトムが執務に戻ると、オーランドはキリアムに向かって話し始めた。
「メルベールもあまり出さない方がいいかもしれない」
「何かあったのか?」
「メルベールが言った通り、グラーフ伯爵家には私は関知していないが、ユーリが誕生日に花を贈っていた」
「そうか…」
「メルベールは一度も贈っていないそうだ。ルオンが義母上に確認したそうだから、間違いないと。手土産に菓子を持って来るくらいだったそうだ」
「そう、なのか。何度か聞いたことがあるか、何か贈っておくと言っていたはずだ。私は毎年夫妻から貰っていたぞ?」
「私もだ」
グラーフ伯爵家からシャツやタイ、万年筆、靴などを貰っていた。
「メルベールは今年も貰っていなかったか?」
ユーリは誕生日を迎える前に亡くなっていたが、メルベールは今年も貰っているかもしれない。
「確か…イヤリングを貰ったと」
「おそらく母上と同じで、これが欲しいと義父上に買って貰っているそうだ。まあ、実の親だけマシかもしれないがな」
やっていることは同じでも、嫁と実父に強請るのは大きく違うだろう。
「は?それなのに母上のことを嫌悪していたのか?」
「同族嫌悪ってやつじゃないか?あと、メルベールは悪いとも思っていないだろうと言っていた。母上のことを話したのだが、メルベールならやり兼ねないと、自分の両親にもしていたかもしれないとまで」
「嘘だろう…?」
以前にもユーリに買わせて、二人で一緒に買ったのと言っていたのか?母上のせいかのように言っていたが、元々していたのか?
「ユーリは文句を言わないだろうからな。花もクレナ伯爵家からではなければ、自分も一緒に贈ったと言ったかもしれないと。メルベールにとって、大したことではないと、元々あったんじゃなか」
「たかが贈り物でも、それこそ礼儀の問題だよな…」
貴族として、家族として最低限の礼儀は必要だろう。
「ああ、私も人のことは言えない。ルオンにも愛人がいると思われて、警戒されていたようだしな」
「それは自業自得だろう?シュアト公爵家も把握していると思うぞ?」
「分かっている。ユーリがいたからこそ、何も言わなかっただけだろうな…責任を取って側近を辞めようかとも考えている」
「それ、は」
「まだ殿下に止められてはいるが、評価の悪い私がいることも良くないだろう?」
妻が亡くなったことを責められるようなことはないが、生家のトスター侯爵家の評判は下がり、愛人の騒動のことも知っている者は知っている。
元々、継がなくてはならない家ではないため、クレナ伯爵家はどうにでもなる。
正直、再婚をすればいいのではないかという声や、お寂しいでしょうと言い寄って来る相手にも、今や嫌悪感しかない。
医院に挨拶に行った時も、私を見付けて、ユーリのお悔やみを言いながら、邸に行ってみたいなどいう不躾な女もいたくらいだ。
「結構だ!」
「でもぉ、私ユーリ先輩と親しかったんですよ。心配なんです」
「親しいならユーリの呼び名を知っているか?」
「っえ、ユーだったかな?」
「違うが?親しいなどと嘘を付いて、詐欺師なのか君は」
「そんな、違います」
「詐欺師にしか見えない!今後近付いてきたら警備を呼ぶ」
そう言うとようやく去って行き、メルベールはメル、ルルなどと呼ばれていたが、ユーリに呼び名などない。
義父上・アレクスも探していて、見付かっておらず、連絡もないことを伝えた。メルベールの話は父には話すのは、キリアムに話してからにしようと思っていた。
皮肉にもマトムも、キリアムも、オーランドも、アレクスも、妻のことで悩ましい思いをする日々となっていた。
マトムが執務に戻ると、オーランドはキリアムに向かって話し始めた。
「メルベールもあまり出さない方がいいかもしれない」
「何かあったのか?」
「メルベールが言った通り、グラーフ伯爵家には私は関知していないが、ユーリが誕生日に花を贈っていた」
「そうか…」
「メルベールは一度も贈っていないそうだ。ルオンが義母上に確認したそうだから、間違いないと。手土産に菓子を持って来るくらいだったそうだ」
「そう、なのか。何度か聞いたことがあるか、何か贈っておくと言っていたはずだ。私は毎年夫妻から貰っていたぞ?」
「私もだ」
グラーフ伯爵家からシャツやタイ、万年筆、靴などを貰っていた。
「メルベールは今年も貰っていなかったか?」
ユーリは誕生日を迎える前に亡くなっていたが、メルベールは今年も貰っているかもしれない。
「確か…イヤリングを貰ったと」
「おそらく母上と同じで、これが欲しいと義父上に買って貰っているそうだ。まあ、実の親だけマシかもしれないがな」
やっていることは同じでも、嫁と実父に強請るのは大きく違うだろう。
「は?それなのに母上のことを嫌悪していたのか?」
「同族嫌悪ってやつじゃないか?あと、メルベールは悪いとも思っていないだろうと言っていた。母上のことを話したのだが、メルベールならやり兼ねないと、自分の両親にもしていたかもしれないとまで」
「嘘だろう…?」
以前にもユーリに買わせて、二人で一緒に買ったのと言っていたのか?母上のせいかのように言っていたが、元々していたのか?
「ユーリは文句を言わないだろうからな。花もクレナ伯爵家からではなければ、自分も一緒に贈ったと言ったかもしれないと。メルベールにとって、大したことではないと、元々あったんじゃなか」
「たかが贈り物でも、それこそ礼儀の問題だよな…」
貴族として、家族として最低限の礼儀は必要だろう。
「ああ、私も人のことは言えない。ルオンにも愛人がいると思われて、警戒されていたようだしな」
「それは自業自得だろう?シュアト公爵家も把握していると思うぞ?」
「分かっている。ユーリがいたからこそ、何も言わなかっただけだろうな…責任を取って側近を辞めようかとも考えている」
「それ、は」
「まだ殿下に止められてはいるが、評価の悪い私がいることも良くないだろう?」
妻が亡くなったことを責められるようなことはないが、生家のトスター侯爵家の評判は下がり、愛人の騒動のことも知っている者は知っている。
元々、継がなくてはならない家ではないため、クレナ伯爵家はどうにでもなる。
正直、再婚をすればいいのではないかという声や、お寂しいでしょうと言い寄って来る相手にも、今や嫌悪感しかない。
医院に挨拶に行った時も、私を見付けて、ユーリのお悔やみを言いながら、邸に行ってみたいなどいう不躾な女もいたくらいだ。
「結構だ!」
「でもぉ、私ユーリ先輩と親しかったんですよ。心配なんです」
「親しいならユーリの呼び名を知っているか?」
「っえ、ユーだったかな?」
「違うが?親しいなどと嘘を付いて、詐欺師なのか君は」
「そんな、違います」
「詐欺師にしか見えない!今後近付いてきたら警備を呼ぶ」
そう言うとようやく去って行き、メルベールはメル、ルルなどと呼ばれていたが、ユーリに呼び名などない。
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