53 / 118
夫と弟3
しおりを挟む
「亡くなった日に、母がキリアム様とメルベール姉様に早文を出したそうです。なのに連絡がない、一体何をしているのかと言っていました。それから母上に聞くのを忘れていて、なぜだったんですか?」
何を聞かれるのかと背筋を伸ばしたが、そんなことかと思ってしまった。
「キリアムは滞在するホテルを変えたそうだ」
「ホテルを?なぜですか?」
「そこまでは知らないが…」
ホテルを変えることくらいあるだろう、別におかしなことではない。
「それで届かなかったんですか、どうせメルベール姉様が我儘を言ったんでしょうね…新しいホテルとかだったんじゃないですか?」
「え?」
どこのホテルに泊まったかなどは聞いていないが、知らせもせずに滞在先を変えたというのか?悪天候だった、体の具合が悪かったなどではなく?
私も人のことは言えないが、私の管轄は王家で、道が塞がれたせいで、なかなか届かなかっただけで、所在は王家には分かっていた。キリアムは次期当主として、所在を明らかにしておくべきだったはずだ。
「自分の思い通りにしようとするじゃないですか!誕生日の食事だって、贈り物だって、メルベール姉様の好きなものばかりで、ユーリも好きよねって言うんです。私も何が好きか詳しくは知りませんけど、何一つ好きな物はなかったと思います」
「…そうだったのか」
まさか誕生日の贈り物の話とは、何の因果なのだろうか。
「幼い頃に、二人に絵を描いてプレゼントしたんです。二人とも凄く嬉しいって言ってくれて、でもメルベール姉様は部屋に飾っていましたけど、ユーリ姉様は飾っていなかった。嬉しくなかったんだと思いました。でもその後、メルベール姉様は汚れて、剥がれ落ちたら、ゴミのように捨てて。でもユーリ姉様は大事に机の中に隠して、開けては見ていたそうです。母上が教えてくれました…この前、机を開いてみたら、まだあるんですよ。綺麗なまま…最近、そんなことばかり思い出して…」
ルオンの目には涙が溜まっており、ユーリへの思いは彼なりにあり、きっとこんなはずではなかったと思っているのだろうと感じた。
「実は、私の母がユーリに高価な誕生日の贈り物を強請っていたことが分かって」
「…え」
口にすることも情けないが、メルベールも関わっていることから、ルオンにも知っておいてもらった方がいいと、話すことにした。
「恥ずかしい限りだと思っている。父は返金したいと言っているが、もう相手がいない。しかもメルベールもユーリと一緒に買ったと、買ってもいないのに嘘を付いたこともあったそうだ」
「侯爵夫人は分かりませんけど、メルベール姉様ならそのくらいしますよ。両親にもしていたかもしれませんね、その延長じゃないですか?」
「え?そうなのか?」
「ええ、メルベール姉様はきっと大したことではないと思っていますよ」
「クレナ伯爵家から、グラーフ伯爵家に贈り物などは届いていただろうか?」
「ああ、両親の誕生日に毎年、花が届いていましたよ」
「そうか…」
おそらくそのメルベールが言った通り、クレナ伯爵家からとして、ユーリが手配していたのだろう。
「メルベール姉様からは一切ありませんけどね。母上に確認したので、間違いないです。でも自分は父上にこれが欲しいって言うんですよ、今でもですよ」
「え?」
「まあ、たまにお菓子?くらいは持って来ていましたけど、両親の誕生日には何もなかったです。もしクレナ伯爵家からでなければ、それも自分も一緒に贈っていると言ったかもしれませんね。悪意まではないから、質が悪いんですよ」
ルオンは話して少しすっきりしたのか、母が見付かったら教えて欲しいと言って、帰って行った。
何を聞かれるのかと背筋を伸ばしたが、そんなことかと思ってしまった。
「キリアムは滞在するホテルを変えたそうだ」
「ホテルを?なぜですか?」
「そこまでは知らないが…」
ホテルを変えることくらいあるだろう、別におかしなことではない。
「それで届かなかったんですか、どうせメルベール姉様が我儘を言ったんでしょうね…新しいホテルとかだったんじゃないですか?」
「え?」
どこのホテルに泊まったかなどは聞いていないが、知らせもせずに滞在先を変えたというのか?悪天候だった、体の具合が悪かったなどではなく?
私も人のことは言えないが、私の管轄は王家で、道が塞がれたせいで、なかなか届かなかっただけで、所在は王家には分かっていた。キリアムは次期当主として、所在を明らかにしておくべきだったはずだ。
「自分の思い通りにしようとするじゃないですか!誕生日の食事だって、贈り物だって、メルベール姉様の好きなものばかりで、ユーリも好きよねって言うんです。私も何が好きか詳しくは知りませんけど、何一つ好きな物はなかったと思います」
「…そうだったのか」
まさか誕生日の贈り物の話とは、何の因果なのだろうか。
「幼い頃に、二人に絵を描いてプレゼントしたんです。二人とも凄く嬉しいって言ってくれて、でもメルベール姉様は部屋に飾っていましたけど、ユーリ姉様は飾っていなかった。嬉しくなかったんだと思いました。でもその後、メルベール姉様は汚れて、剥がれ落ちたら、ゴミのように捨てて。でもユーリ姉様は大事に机の中に隠して、開けては見ていたそうです。母上が教えてくれました…この前、机を開いてみたら、まだあるんですよ。綺麗なまま…最近、そんなことばかり思い出して…」
ルオンの目には涙が溜まっており、ユーリへの思いは彼なりにあり、きっとこんなはずではなかったと思っているのだろうと感じた。
「実は、私の母がユーリに高価な誕生日の贈り物を強請っていたことが分かって」
「…え」
口にすることも情けないが、メルベールも関わっていることから、ルオンにも知っておいてもらった方がいいと、話すことにした。
「恥ずかしい限りだと思っている。父は返金したいと言っているが、もう相手がいない。しかもメルベールもユーリと一緒に買ったと、買ってもいないのに嘘を付いたこともあったそうだ」
「侯爵夫人は分かりませんけど、メルベール姉様ならそのくらいしますよ。両親にもしていたかもしれませんね、その延長じゃないですか?」
「え?そうなのか?」
「ええ、メルベール姉様はきっと大したことではないと思っていますよ」
「クレナ伯爵家から、グラーフ伯爵家に贈り物などは届いていただろうか?」
「ああ、両親の誕生日に毎年、花が届いていましたよ」
「そうか…」
おそらくそのメルベールが言った通り、クレナ伯爵家からとして、ユーリが手配していたのだろう。
「メルベール姉様からは一切ありませんけどね。母上に確認したので、間違いないです。でも自分は父上にこれが欲しいって言うんですよ、今でもですよ」
「え?」
「まあ、たまにお菓子?くらいは持って来ていましたけど、両親の誕生日には何もなかったです。もしクレナ伯爵家からでなければ、それも自分も一緒に贈っていると言ったかもしれませんね。悪意まではないから、質が悪いんですよ」
ルオンは話して少しすっきりしたのか、母が見付かったら教えて欲しいと言って、帰って行った。
735
お気に入りに追加
3,676
あなたにおすすめの小説
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
旦那様、離縁の申し出承りますわ
ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」
大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。
領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。
旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。
その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。
離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに!
*女性軽視の言葉が一部あります(すみません)
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる