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夫と弟2
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「それは誤解だ」
「だからユーリ姉様のことはどうでもいいのかと…」
オーランドはそんな風に思われていたのかと改めて思った。だが愛人がいる、妊娠していると聞かされたら、そう思う以外ないかと理解もした。
「そんなことはない、関係を持ったことがある女性だったことは認める。だが愛人でも恋人でもなければ、私の子どもでもない」
「そうだったんですか…てっきり嫌っているのかと思っていました」
「私は今さら間違えてしまったことに気付いたが、ユーリを大事に思っていた…それだけは信じて欲しい」
そう言って、頭を下げるオーランドに、ルオンも分かりましたと答えた。
「父は面倒なことは、ユーリ姉様に押し付けるのです。私もあの時は、父の機嫌を取ることが出来るし、役に立てて良かったじゃないかと思っていました。でもまさか命まで懸けるとは思いませんでした」
「義父上にユーリは、呼び出されたりしていたのか?」
「最近はなかったと思いますけど、それこそ…あの、子どもが出来ないことを詰っていることはありました」
「っな」
そんなことを言われていたのか…ユーリが言うはずはないが、行かなくていいと言っても駄目だったのか。
「母上が止めていましたが、父はユーリ姉様には理不尽だろうが、何だろうが、ぶつけていい存在として扱っていたのだと思います。私には止められません、あんな風になりたくないとも思っていました」
「私にでも言ってくれれば」
私が知っていれば意見して、距離を置かせることも出来ただろう。
「出来ませんよ、母上に矛先が向くかもしれない、もっと酷くなるかと思ったら怖いですから。私もなるべく近付かないようにしていました、ユーリ姉様もそうだったと思います。私は弱いと分かっています。メルベール姉様だけが幸せだったんじゃないですか、あの家で」
「メルベールだけ?」
メルベールはユーリを庇っていることもあった、義父上のことも怒っており、死ねば良かったとまで言ったのに?
「ええ、ユーリ姉様を庇うことで、思いやりのある優しい子だと言われて、ユーリ姉様はそのことで、余計に父の当たりは酷くなって…気付かないようにしているだけだと思っています」
「そんな、ことは…」
だが、ルオンは私よりも家族の中で見てきた人物だろう。
「私もですけど、ユーリ姉様が一番優秀じゃないですか。母上にも言われました。実力の世界だったらあなたは淘汰される存在だと…メルベール姉様は特に同じ顔をした双子です。父に愛されていること以外、すべてに劣っているんです」
「メルベールは嫌っていたのか?」
まさかメルベールは庇うようなことをしながらも、実は嫌っていたのか?いや、そんな素振りは見たことがない。悪口だって聞いたこともない。
「嫌ってはいませんよ、大事だったと思います。愛されないユーリ姉様がいることで、自尊心が満たされたのだと思いますよ。私は愛されている。学力なんかは比べられない様に、ユーリ姉様を凄いでしょうと嬉しそうに褒めたりして、上手く誘導していたと思います」
「そうだったのか…」
確かに成績は薬師になっていることも見ても、ユーリの方が明らかに優秀だろう。私もユーリは凄いのよと言っているのを聞いたことがある。比べて卑屈になったりしないのだなと、同じ双子だからこそ思っていた。
「ユーリ姉様が声を上げていれば違ったでしょうけど、姉様は言いませんからね。メルベール姉様には都合が良かったんですよ」
ルオンにはそんな風に見えていたのか、だが贈り物の一件で、今となってはとても説得力がある。
「私からも一つ聞いていいですか?」
「何だろうか?」
「だからユーリ姉様のことはどうでもいいのかと…」
オーランドはそんな風に思われていたのかと改めて思った。だが愛人がいる、妊娠していると聞かされたら、そう思う以外ないかと理解もした。
「そんなことはない、関係を持ったことがある女性だったことは認める。だが愛人でも恋人でもなければ、私の子どもでもない」
「そうだったんですか…てっきり嫌っているのかと思っていました」
「私は今さら間違えてしまったことに気付いたが、ユーリを大事に思っていた…それだけは信じて欲しい」
そう言って、頭を下げるオーランドに、ルオンも分かりましたと答えた。
「父は面倒なことは、ユーリ姉様に押し付けるのです。私もあの時は、父の機嫌を取ることが出来るし、役に立てて良かったじゃないかと思っていました。でもまさか命まで懸けるとは思いませんでした」
「義父上にユーリは、呼び出されたりしていたのか?」
「最近はなかったと思いますけど、それこそ…あの、子どもが出来ないことを詰っていることはありました」
「っな」
そんなことを言われていたのか…ユーリが言うはずはないが、行かなくていいと言っても駄目だったのか。
「母上が止めていましたが、父はユーリ姉様には理不尽だろうが、何だろうが、ぶつけていい存在として扱っていたのだと思います。私には止められません、あんな風になりたくないとも思っていました」
「私にでも言ってくれれば」
私が知っていれば意見して、距離を置かせることも出来ただろう。
「出来ませんよ、母上に矛先が向くかもしれない、もっと酷くなるかと思ったら怖いですから。私もなるべく近付かないようにしていました、ユーリ姉様もそうだったと思います。私は弱いと分かっています。メルベール姉様だけが幸せだったんじゃないですか、あの家で」
「メルベールだけ?」
メルベールはユーリを庇っていることもあった、義父上のことも怒っており、死ねば良かったとまで言ったのに?
「ええ、ユーリ姉様を庇うことで、思いやりのある優しい子だと言われて、ユーリ姉様はそのことで、余計に父の当たりは酷くなって…気付かないようにしているだけだと思っています」
「そんな、ことは…」
だが、ルオンは私よりも家族の中で見てきた人物だろう。
「私もですけど、ユーリ姉様が一番優秀じゃないですか。母上にも言われました。実力の世界だったらあなたは淘汰される存在だと…メルベール姉様は特に同じ顔をした双子です。父に愛されていること以外、すべてに劣っているんです」
「メルベールは嫌っていたのか?」
まさかメルベールは庇うようなことをしながらも、実は嫌っていたのか?いや、そんな素振りは見たことがない。悪口だって聞いたこともない。
「嫌ってはいませんよ、大事だったと思います。愛されないユーリ姉様がいることで、自尊心が満たされたのだと思いますよ。私は愛されている。学力なんかは比べられない様に、ユーリ姉様を凄いでしょうと嬉しそうに褒めたりして、上手く誘導していたと思います」
「そうだったのか…」
確かに成績は薬師になっていることも見ても、ユーリの方が明らかに優秀だろう。私もユーリは凄いのよと言っているのを聞いたことがある。比べて卑屈になったりしないのだなと、同じ双子だからこそ思っていた。
「ユーリ姉様が声を上げていれば違ったでしょうけど、姉様は言いませんからね。メルベール姉様には都合が良かったんですよ」
ルオンにはそんな風に見えていたのか、だが贈り物の一件で、今となってはとても説得力がある。
「私からも一つ聞いていいですか?」
「何だろうか?」
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