【完結】似て非なる双子の結婚

家族会議（トスター侯爵家３）

「サファイアのネックレスを貰って、自分はハンカチ一枚って馬鹿にしているとしか思えませんし、ユーリを軽んじているとしか思えません」
「せめて母上がハンカチ一枚しか貰っていないのなら、分かりますけど」

　レイアは打破できるような考えを持っていなかった。

「自分がされたらどうですか？お祖母様にサファイアのネックレスが欲しいと言われて贈ったのに、自分はハンカチ一枚」
「もしかして、そうだったのですか？」
「そんなわけない！両親から、装飾品や靴なんかを貰っていた。まさか母上にも、そのようなことをしていたのか？」
「まさか、そのようなことはございません」

　まさかという時点で、おかしいとは分かっているじゃないかと、キリアムとオーランドは思った。

「当たり前ですよ、そんなことをすれば、嫌われてしまうことは分かっている。だからこそ嫁には嫌われないと、軽んじていたのでしょう。恥ずかしい限りです。正直、こんな例えしたくありませんが、アベリーのやったことと同じではありませんか」
「そんな！私は…善意で」
「善意なわけないでしょう！悪意しかないじゃないですか！妻の頑張って働いた給料を、むしり取って楽しかったですか！」

　ネックレスは間違いなく、ユーリの何ヶ月分かの給料だ。何が善意だ、どこをどうやっても善意など見付からない。

「ネックレスは返すわ、他にも貰った物も全部」
「いい加減にしてください！そういう問題ではありません！」
「返せば許されると思っているのですか！そもそもどこに返すのですか！」
「お前の使った物など返せても要らんだろう」
「あなたまで…」

　どうやっても、謝罪する、返す、言い訳をする相手であるユーリは、もういないということに辿り着いてしまう。

「もう否定は出来ませんよ、事実なんですから」
「でもユーリが言っていないなんて、証明出来ないでしょう！どうしてお母様を信じてはくれないの？」

　レイアはキリアムとオーランドを縋るような目で見たが、呆れたように溜息を付かれるだけだった。

「もし妻がそう言っていたとしても、遠慮するべきではありませんか？」
「そもそも、そんなに欲しいなら父上、もしくは私たちに言えば良かったではありませんか！なぜユーリやメルベールに言ったのですか！」
「…」
「何も言えないのが答えですよ、心底恥ずかしいです」
「グラーフ伯爵夫妻なら私たちに言いませんよ、あの義父上でさえね」

　レイアはマトム、キリアム、オーランドに冷めた目で見られて、崩れ落ちた。オーランドは黙って座っていたメルベールに声を掛けた。

「メルベール、妻は義父上に言われていたのかな？」
「分からないけど、贈り物には興味がないから、言っていないとは思うけど…」

　父・アレクスはお金を稼ぐことに興味はあるが、何の意図があるのか、何が入っているか分からない、贈り物などには興味はない。私からであれば、何でも喜んで見せるが、ユーリから何を贈られても、いい顔はしないかもしれない。

「でも何も贈らないとそれはそれで文句を言いそうだから、花でも贈っていたんじゃないかしら。多分、ユーリの名義ではなくクレナ伯爵家からということにして、そうすれば父も文句は言わないでしょうから。母がいれば分かると思うのだけど…」
「その可能性は高いな」

　それでも義父上がそのようなことをしていなくて、良かったと思った。

「サイラ夫人はまだ見付からないのか」
「ええ、万が一のことも考えて、自己や事件も調べましたが、似たような者はおりませんでしたので、どこかに表に出ないような場所にいらっしゃるのかもしれません」

　一体、サイラはどこへ行ってしまったのか。