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夫と義兄3
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キリアムは両親とはオーランドも一緒に話をした方がいいと、先にオーランドに会いに行った。
メルベールと、両親、特に母上が行っていたことを話すと、オーランドは母上に怒りを感じたようだった。
「メルベールのことはすまないと言っても、もうどうしようもないのだが」
「私に怒る資格はない。何も知らなかった…母上の要求も、確認してみるが、私は何も聞いていない。ユーリが一人で支払ったのだと思う」
ユーリを不躾に扱い、サイラに叱られた執事・アークルは解雇されているため、把握している者はいないだろう。
「ユーリは収支を付けていたそうだ。分かるか?」
「いいや、私は何も知らない…部屋を探してはみるが」
ユーリの部屋はあのまま手付かずの状態で残している。
「やっぱりそうか…ならば、茶葉のブレンドをしていたことも知らないんだな?」
「…知らない」
「やはり、シュアト公爵夫人に聞くしかないな」
「シュアト公爵夫人?」
「ユーリはシュアト公爵夫人、コンクエッツ公爵夫人と、マクシス伯爵夫人と、スカラット侯爵夫人と、ガルツ侯爵夫人と親しかったそうだ」
「っな」
語り合うような時間はなかったが、そのような話を聞いたこともない。茶会なども行っている様子はあったが、相手まで聞くことはなかった。
私はユーリについて何も知らなかった。知ろうとしなかった。
「おそらくマクシス伯爵夫人が、同じ医院の医師だからだろうな。その方々が集まる茶会で、母上とメルベールは自分の愚かな行為を暴露されたそうだ」
「ユーリが言ったのか?いや、想像が出来ないのだが…」
「ああ、私もそうだよ。ユーリが言ったことは思えない。誰かに見られていたか、使用人が話したとも考えられる」
手紙ではなく、言いに行っていたようだから、誰かに聞かれていてもおかしくはない。手紙だと証拠が残るとでも思っていたのだろうか。
直接言う方が、よほどみっともないとは思わないのか。
「母上はただのたかりじゃないか」
「ああ、そうだ。だがメルベールはバレないと思って、ユーリに半分払ったと嘘までついてしまった。シュアト公爵夫人が会ってくれるかどうかだが、オーランドが支払っていないなら、ユーリに支払うことも出来ない」
「ああ、私に払うくらいなら義母上に払って欲しい」
「居場所が分かったのか?」
義母・サイラはグラーフ伯爵家に戻っておらず、サイラの弟・トアス・パーシ子爵が当分、金の無心に来ていたが、何度門前払いしてもやって来るので、通報すると言ってからは、ようやく来なくなった。サイラからの連絡はまだない。
「いや、分からない。見付かったら義母上に支払ってくれ。それがユーリにとって一番いいだろう」
「そうだな…」
義父・アレクスに渡すことは、ユーリにとって最も不本意だろう。トアス・パーシ子爵は論外である。
「明日、両親に時間を貰った。話をするから、仕事が終わってからでいい、オーランドも付き合ってくれ。いくらユーリが亡くなったからと言って、御夫人方の前で暴露されて、このままというわけにはいかない」
「そうだな…母上はどういうつもりで、たかりのようなことをしたのか知りたい」
「私たちの両親はそんなに非常識な人だったのかと思っていた」
キリアムとオーランドにとって、両親は頼りになる存在だった。
「おそらく、私たちには言わず、嫁だから言っていたんだろうな。嫌われたくない存在だから、言っても構わないだろうと」
「義母上に言われたら、贈るかもしれないが…言わないだろうな」
「そうなんだよ、義母上も、あんな義父上でも私たちには言わないだろう?余計にどれだけ常識外れか、分かると言うものだ…」
二人は溜息を付き、また明日と別れた。オーランドは意を決して、ユーリの本棚や机の引き出しを探したが、それらしきものはなかった。
メルベールと、両親、特に母上が行っていたことを話すと、オーランドは母上に怒りを感じたようだった。
「メルベールのことはすまないと言っても、もうどうしようもないのだが」
「私に怒る資格はない。何も知らなかった…母上の要求も、確認してみるが、私は何も聞いていない。ユーリが一人で支払ったのだと思う」
ユーリを不躾に扱い、サイラに叱られた執事・アークルは解雇されているため、把握している者はいないだろう。
「ユーリは収支を付けていたそうだ。分かるか?」
「いいや、私は何も知らない…部屋を探してはみるが」
ユーリの部屋はあのまま手付かずの状態で残している。
「やっぱりそうか…ならば、茶葉のブレンドをしていたことも知らないんだな?」
「…知らない」
「やはり、シュアト公爵夫人に聞くしかないな」
「シュアト公爵夫人?」
「ユーリはシュアト公爵夫人、コンクエッツ公爵夫人と、マクシス伯爵夫人と、スカラット侯爵夫人と、ガルツ侯爵夫人と親しかったそうだ」
「っな」
語り合うような時間はなかったが、そのような話を聞いたこともない。茶会なども行っている様子はあったが、相手まで聞くことはなかった。
私はユーリについて何も知らなかった。知ろうとしなかった。
「おそらくマクシス伯爵夫人が、同じ医院の医師だからだろうな。その方々が集まる茶会で、母上とメルベールは自分の愚かな行為を暴露されたそうだ」
「ユーリが言ったのか?いや、想像が出来ないのだが…」
「ああ、私もそうだよ。ユーリが言ったことは思えない。誰かに見られていたか、使用人が話したとも考えられる」
手紙ではなく、言いに行っていたようだから、誰かに聞かれていてもおかしくはない。手紙だと証拠が残るとでも思っていたのだろうか。
直接言う方が、よほどみっともないとは思わないのか。
「母上はただのたかりじゃないか」
「ああ、そうだ。だがメルベールはバレないと思って、ユーリに半分払ったと嘘までついてしまった。シュアト公爵夫人が会ってくれるかどうかだが、オーランドが支払っていないなら、ユーリに支払うことも出来ない」
「ああ、私に払うくらいなら義母上に払って欲しい」
「居場所が分かったのか?」
義母・サイラはグラーフ伯爵家に戻っておらず、サイラの弟・トアス・パーシ子爵が当分、金の無心に来ていたが、何度門前払いしてもやって来るので、通報すると言ってからは、ようやく来なくなった。サイラからの連絡はまだない。
「いや、分からない。見付かったら義母上に支払ってくれ。それがユーリにとって一番いいだろう」
「そうだな…」
義父・アレクスに渡すことは、ユーリにとって最も不本意だろう。トアス・パーシ子爵は論外である。
「明日、両親に時間を貰った。話をするから、仕事が終わってからでいい、オーランドも付き合ってくれ。いくらユーリが亡くなったからと言って、御夫人方の前で暴露されて、このままというわけにはいかない」
「そうだな…母上はどういうつもりで、たかりのようなことをしたのか知りたい」
「私たちの両親はそんなに非常識な人だったのかと思っていた」
キリアムとオーランドにとって、両親は頼りになる存在だった。
「おそらく、私たちには言わず、嫁だから言っていたんだろうな。嫌われたくない存在だから、言っても構わないだろうと」
「義母上に言われたら、贈るかもしれないが…言わないだろうな」
「そうなんだよ、義母上も、あんな義父上でも私たちには言わないだろう?余計にどれだけ常識外れか、分かると言うものだ…」
二人は溜息を付き、また明日と別れた。オーランドは意を決して、ユーリの本棚や机の引き出しを探したが、それらしきものはなかった。
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