【完結】似て非なる双子の結婚

野村にれ

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シュアト公爵家の茶会4

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「トスター侯爵家は、嫁に誕生日の贈り物を催促されるんでしょう?いくら舅、姑とはいえ、図々しいわよ。あなたは働いているから、高い物でもいいでしょうって、おっしゃるのでしょう?」
「夫人のために働いているんじゃないのに、図々しいこと」
「っいえ、そのようなことは」

 なぜそんなことを知っているのかと、ユーリが皆に話していたのか、だから好意的ではなかったのかと、怒りが湧いていた。

「一応、言っておくけど、ユーリが話したわけじゃないわよ。ユーリはそんなこと言わないもの。皆、知っているだけよ?有名だもの」

 レイアはその言葉に唖然とした。皆、知っている?

「今年はウイスキーが欲しい、あのバックが欲しいとか言うんでしょう?そのネックレスもよくも嫁に強請れるものだこと…」
「そういう舅や姑って嫌われるのよ?知らないの?」
「違います、聞かれたら答えているだけです」

 どうにか挽回しなければ、嫁に物を強請っていると思われては堪らない。ユーリはもう弁解は出来ないのだから、嘘を言っても分からないはず。

 レイアとメルベールの思考は、現在、完全に一致していた。

「姉も姑も嘘ばかりね、わざわざ誕生日になると言いに来るのでしょう?手紙だと催促したみたいだと思っているのかしら?」
「言いに来るのも同じじゃない」
「メルベール嬢は言われていないの?本当のことを言った方がいいわ、恥ずかしいことなのよ?」
「…あの」
「メルベール!」

 言っていると言ったようなものだったが、メルベールは再び黙った。

 レイアは気持ちが込められていても、要らない物を貰うより、自分の欲しいものを貰いたかった。だから義娘にも欲しい物を誕生日前に伝えていた。

 だが、他者から見れば強請っていると思われることは考えず、ユーリは子どももおらず、働いているから、メルベールよりも高額な物を伝えていた。

 夫も同じようにユーリに言うようになったのも、レイアが教えて欲しいと言っていると、誘導したからである。

 だが、息子たちにはそんなことは言わない。そういった姑は嫌われることも分かっていないが、息子には嫌われたくないという思いはあったのだろう。

「善意で言っていただけです。迷わせるよりいいかと思いまして…」
「善意?高額なネックレスが善意?」
「善意って意味が分かっていないのではなくて?」

 レイアは返す言葉が見付からなかった、確かにこのネックレスは高かったはずだ。それでも贈ってくれたのだから、勝手に大丈夫だと思っていた。

「それなのにユーリには何も送らないのよね?」
「いいえ、誤解です。贈っております」
「ハンカチ一枚?」
「毎年、高い物を買ってもらうのに、ユーリにはハンカチ一枚でしょう?贈っていない年すらある。しかも当日ではなく、思い出したかのように、使用人に送っておいてって言うんでしょう?恥ずかしくないの?」
「あの、それは…」

 なぜ知られているのだろうか、確かにハンカチでも贈っておいてと使用人に頼んでいた。メルベールは隣に住み、孫もいることから、自ずと祝うことになっていたが、その時にユーリのことを思い出し、使用人に頼んでいたら当日ではなくなってしまう。確かに贈ったかしらと思うこともあったが、気にしていなかった。

 でも自身の子どもではないのだから仕方ないではないか。しかもユーリのところには孫もいないから、気にしなくなってしまうのも、私になってみれば分かるはずだ。

 双子でなかったら、きっとレイアは誕生日すら分かっていなかっただろう。

「だから有名なのよ?知らなかったの?もうお開きにしましょう、嘘つきは嫌いよ」

 レイアとメルベールは失意のまま帰ることになった。
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