似て非なる双子の結婚

野村にれ

文字の大きさ
上 下
38 / 115

シュアト公爵家の茶会3

しおりを挟む
「お金も一切出していないのに、二人から貰ったっていうのは、とても気持ち悪いわ。どういう神経してらっしゃるの?教えて頂戴」
「半分、出しました」
「いくらだったか覚えてる?」
「いえ、そこまでは…」

 メルベールは値段なんて知らない、そんな高位貴族が値段を聞くのって、どうなのかとすら思っていた。

「支払ったのなら、帰れば分かるんじゃない?」
「そうね、教えていただける?」
「そこまでは書き記していないかもしれません」
「まあ、随分と大雑把なんですのね」
「え…」
「調べていいのですね?」
「調べる?」

 ユーリはいないのに、どうして調べることが出来るのか。ユーリは何も言えないからバレることはない。

「ええ、ユーリは収支を全て付けていましたから、あなたが半分出したという入金があるはずです。そうでしょう?」

 えっ?どういうこと…書き忘れているかもしれないなどと言えば、ますます疑われることは分かっている。証明しろと言われたら、金額も、アルビナート夫人が手配したなら、買った場所も分からない。

「…どうして収支を?」
「ユーリは茶葉をブレンドしていたの。こういった茶会の時なんかにね、その収入もあったから、何かあった時のために全て付けるように進言していたのよ」
「このお茶も?」
「ええ、そうよ。さっきユーリのおすすめって言ったでしょう?」

 メルベールは言葉が出て来ず、何とか言い訳を考えているようにしか見えない。

 そんなことをしているなんて聞いたこともなかった、支払っていない上に、もうユーリに口裏を合わせて貰うことも、庇って貰うことも不可能だった。

「…半分ではなかったかもしれません」
「払ってもいないのに、払っているような顔が出来る方なのね」
「双子だから?姉だからいいと思ったの?お金がないならないって言えばいいのに…姉の矜持なの?」
「ただ義母にお金を使うのが、嫌だったんじゃない?」

 皆が口々に捲し立て、買いに行く時間がなかったから、義母がユーリから貰ったと言うから、便乗しただけだ。支払っていないが、妹なんだからいいと思っていた。

 毎回ではなかったが、何度か行った。せめて支払うべきだった。ユーリに一緒に買おうとも選ぼうとも、私も一緒に買ったことにしてとも言っていないが、やり取りは分からなくても、収支に書いてあったはずだ。

 沁み込んでいたメルベールのユーリへの驕りは、顕著に表れていたのだった。

「メルベール、嘘なの?」
「…嘘では、ありません」
「あなた言ったわよね?嫁たちからの贈り物ですねって」

 レイアはユーリから贈られたネックレスを付けていると、メルベールに言われた。高そうだったので、二人で買ったのかとしか思わなかった。その年、メルベールからは何も貰ってはいない。

 思い出してみれば、別の年も同じようなことがあった、ユーリに全て払わせて、自分も贈ったと思わせたというのか。なんて恥知らずなのだろうか。

「あの、その」
「何てことかしら!皆様、失礼いたしました。私はまさか嘘を付かれているとは知らなくて」
「お義母様、違うの」
「違うなら調べて貰えばいいわ」

 メルベールは唯一の味方だと思っていたレイアに言われて、何も言えずに下を向いて、黙り込んでしまった。

 レイアは二人からだと信じていた、だからこそ今日は、別のお気に入りのネックレスがあるにも関わらず、貰ったネックレスを付けて来たのだ。

 それなのにこんなことになるなんて、レイアはメルベールに嘘を付かれていたことも、恥を掻かされたことで、見限った。

 これで自身は騙されていただけと証明できたと思ったが、そうではなかった。

「似た者同士ね?」
「え…」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

mの手記

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:198pt お気に入り:0

どこまでも醜い私は、ある日黒髪の少年を手に入れた

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:1,740

親友彼氏―親友と付き合う俺らの話。

BL / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:19

楽しい幼ちん園

BL / 連載中 24h.ポイント:177pt お気に入り:133

勇者のこども

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:426pt お気に入り:1

お兄ちゃんと内緒の時間!

BL / 連載中 24h.ポイント:78pt お気に入り:59

スパイだけが謎解きを知っている

ミステリー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

処理中です...