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社交界
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トスター侯爵家はユーリは嫁ではあったが、クレナ伯爵夫人だったため、半年後には社交界にも復帰することになった。
アベリーが怪我をさせたことは一部に知られはいたが、大事に至らなかったこと、ラオン大公家には一応は謝罪は終わっていると、侯爵家とレイアの実家である伯爵家の力を使って、話題にはさせないようにした。だが口には出さないだけで、娘は問題児ということは変わらない。
アベリーは我儘が通らないことで、大人しくはなったが、私を愛していない、だからそんなことが言えると、不幸を振りかざすようになっていた。
グラーフ伯爵家は嫁には出したが、娘を亡くしたことで、一年は喪に服すという体で社交は控えるとしたが、実際はサイラがいないので社交が出来るはずもない。
意味深に大変だったわねと声を掛けて来る者もおり、アベリーのことなのかユーリのことなのか分からず、曖昧に返答するしかなかった。
特にメルベールはユーリについて聞かれることになる。
「ユーリ、具合が悪かったの?」
「それが、私は領地に行っていた時で、急なことだったの」
「えっ、そうなの」
看取らなかったの?酷いと顔に書いてあった、でも責められるのはおかしい。看取ったと嘘を付いた方が良かったのだろうか。
葬儀はサイラがお世話になったというクレア夫人を呼んではいたが、概ね親族だけで行われたために、友人たちは参列していない。
「ユーリにはなかなか会えなかったから」
「私、おじが骨折して入院していたものだから、医院で何度か会ったの。わざわざ案内してくれてね、相変わらず優しかったわ」
「ユーリは控えめだけど、優しかったわね…こんなに早くいなくなってしまうなんて、信じられないわ」
「字が綺麗だったわね…ユーリのノートを借りて、自分の字を見る恐ろしさよ。メルベールも寂しいでしょう?片割れみたいなものだものね」
「ええ…ユーリがいなくなって、ぽっかりと心に穴が開いたみたいで」
皆、そうよねと頷いてくれ、娘の暴挙と、妹の急死で、どうにか非難を浴びずに済んでいることに気付いてはいなかった。
そして、個別に茶会や夜会に呼ばれることはなかった。メルベールはユーリのことばかり聞かれることが嫌になり、行かなくて済むと思っていたが、レイアは違った。やっぱりアベリーのことが尾を引いているのだと分かってはいるが、社交界に力のあった自身の立場が揺らいでいることに、耐えられなかった。
サイラのことは侯爵夫妻も聞いてはいたが、責任を感じて出て行ったこと、アレクスに思うところもあったので、喪に服している間に解決すればいいじゃないかとしか思っておらず、相変わらず自身のことばかりであった。
「シュアト公爵夫人に文を出してみようかしら、あれだけユーリを可愛がっていたのだから、喜ぶのではないかしら?」
「だが、今まで呼ばれたこともないのだろう?」
レイアもメルベールも個人的にシュアト公爵家に呼ばれたことはない。
元は王族から始まっているシュアト公爵家は、他国の王女が嫁いでいることもあり、他国との交流も盛んで、公爵家の中でも抜きに出た、財力と発言権を持っている。マクシス伯爵夫人であるクレアとニーナ姉妹も、一番の財力を誇るバエルン侯爵家の令嬢であった。
「でもユーリの話がしたいと言えば、お誘いくださるのではないかしら?」
「確かにそうだな」
「メルベールも連れて行って、同じ顔なのだから、メルベールのことも可愛がってくれれば、最高じゃない?」
「ああ、シュアト公爵家と親しいとなれば、アベリーのことも払拭出来るだろう」
レイアがニーナに文を出すと、茶会にご招待しますと返事を貰った。
アベリーが怪我をさせたことは一部に知られはいたが、大事に至らなかったこと、ラオン大公家には一応は謝罪は終わっていると、侯爵家とレイアの実家である伯爵家の力を使って、話題にはさせないようにした。だが口には出さないだけで、娘は問題児ということは変わらない。
アベリーは我儘が通らないことで、大人しくはなったが、私を愛していない、だからそんなことが言えると、不幸を振りかざすようになっていた。
グラーフ伯爵家は嫁には出したが、娘を亡くしたことで、一年は喪に服すという体で社交は控えるとしたが、実際はサイラがいないので社交が出来るはずもない。
意味深に大変だったわねと声を掛けて来る者もおり、アベリーのことなのかユーリのことなのか分からず、曖昧に返答するしかなかった。
特にメルベールはユーリについて聞かれることになる。
「ユーリ、具合が悪かったの?」
「それが、私は領地に行っていた時で、急なことだったの」
「えっ、そうなの」
看取らなかったの?酷いと顔に書いてあった、でも責められるのはおかしい。看取ったと嘘を付いた方が良かったのだろうか。
葬儀はサイラがお世話になったというクレア夫人を呼んではいたが、概ね親族だけで行われたために、友人たちは参列していない。
「ユーリにはなかなか会えなかったから」
「私、おじが骨折して入院していたものだから、医院で何度か会ったの。わざわざ案内してくれてね、相変わらず優しかったわ」
「ユーリは控えめだけど、優しかったわね…こんなに早くいなくなってしまうなんて、信じられないわ」
「字が綺麗だったわね…ユーリのノートを借りて、自分の字を見る恐ろしさよ。メルベールも寂しいでしょう?片割れみたいなものだものね」
「ええ…ユーリがいなくなって、ぽっかりと心に穴が開いたみたいで」
皆、そうよねと頷いてくれ、娘の暴挙と、妹の急死で、どうにか非難を浴びずに済んでいることに気付いてはいなかった。
そして、個別に茶会や夜会に呼ばれることはなかった。メルベールはユーリのことばかり聞かれることが嫌になり、行かなくて済むと思っていたが、レイアは違った。やっぱりアベリーのことが尾を引いているのだと分かってはいるが、社交界に力のあった自身の立場が揺らいでいることに、耐えられなかった。
サイラのことは侯爵夫妻も聞いてはいたが、責任を感じて出て行ったこと、アレクスに思うところもあったので、喪に服している間に解決すればいいじゃないかとしか思っておらず、相変わらず自身のことばかりであった。
「シュアト公爵夫人に文を出してみようかしら、あれだけユーリを可愛がっていたのだから、喜ぶのではないかしら?」
「だが、今まで呼ばれたこともないのだろう?」
レイアもメルベールも個人的にシュアト公爵家に呼ばれたことはない。
元は王族から始まっているシュアト公爵家は、他国の王女が嫁いでいることもあり、他国との交流も盛んで、公爵家の中でも抜きに出た、財力と発言権を持っている。マクシス伯爵夫人であるクレアとニーナ姉妹も、一番の財力を誇るバエルン侯爵家の令嬢であった。
「でもユーリの話がしたいと言えば、お誘いくださるのではないかしら?」
「確かにそうだな」
「メルベールも連れて行って、同じ顔なのだから、メルベールのことも可愛がってくれれば、最高じゃない?」
「ああ、シュアト公爵家と親しいとなれば、アベリーのことも払拭出来るだろう」
レイアがニーナに文を出すと、茶会にご招待しますと返事を貰った。
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