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姉夫妻3
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「キリアム!お母様が伯爵家から出て行ったの!」
出掛けていたキリアムが戻って来ると、慌てた様子で着替えている最中にメルベールがやって来た。
「え?」
「今日、急に訪ねて来て出て行くって」
「離縁ってこと、かい?」
「それはお父様に任せるって言っていたけど…顔を見たくないのは分かるけど、お母様、何だか別人みたいで」
「別人?」
「嫌ならここに住んだらいいと言ったのよ。そうしたら、伯爵家が見えるようなところ、吐き気がするって…」
もし思っていたとしても、そんなことを言う人ではない。何かの間違いだろう。
「聞き間違いじゃないのか?義母上が言うはずないだろう」
「いいえ、本当にそう言ったの。葬儀に間に合わなかったことも責めるように言われて…」
「それは…オーランドが言っていたんだ。ユーリを看取ったのは、義母上だけだったそうだ」
「そんな…何かユーリがお母様に話したってこと?」
「何かって何だい?別に話して困るようなことはないだろう?」
「私を責めるようなことを言ったのかもしれない」
それは仕方のないことではないか、責められて当然だろう。毒を飲んだのはユーリの意思だとしても、叔母というだけで大公家に一人で謝罪に行って、文句をも言いたくもなるだろう。
「言われても仕方ないじゃないか」
「えっ、でもお母様に言う必要はないでしょう?」
自身の母親に、側にいた、たった一人の人に言う方が自然だろう。
「なぜだい?ユーリは命を懸けたんだよ、最期に文句を言いたくもなるだろう?」
「だって、そんな死ぬ人が何を言っても、信じるでしょう?」
だから何だというのだろうか、死に際に嘘を付く必要もなければ、もし嘘を言ったとしても、それが何だというのだ?
ユーリしか知らない、何か後ろめたいことでもあったというのか?今まで何も言わなかった母親に言われたことがショックだったのだろうか?
「義母上に自分を悪く言われたことが気に入らないってことかい?」
「そういうわけじゃないけど…ずるいじゃない」
「ずるい?何がずるい?」
「だって、私とルオンに使った時間をユーリに使うって。私はいないと思って頂戴とまで言ったのよ。私だって娘なのに!私だって毎日辛いのに、支えてくれるのが母親でしょう!酷いじゃない…」
アベリーのことで参っており、娘としてはショックだったのかもしれないが、確かに一番時間を掛けられていないのはユーリだろう。
「あと、パーシ子爵家が援助を頼んで来ても見捨てろって。オーランド様にも伝えておいて欲しいって」
「そこまでの覚悟で出て行かれたんだろう」
「キリアムは心配じゃないっていうの!お母様は働いたこともないのに」
今まで貴族夫人だった人が、ひとりで生きていくのは難しいことだろう。だが、何もかも切り捨てたように出て行ったのならば、覚悟は出来ているはずだ。
もしかしたら、既に仕事が決まっているのかもしれない。
「それはそうだが、どうするって言っていたんだ?」
「針仕事は出来るからって、落ち着いたら手紙を書くとは言っていたけど」
「どこへ行ったか、心当たりがあるのか?」
「子爵家でないなら、分からないわ」
それならば探しようはない、無事だと信じるしかない。
「それなら、待つしかないんじゃないか。自らの意思で出て行かれたのなら、連れ戻せないだろう?義父上に探してもらうように頼むか、そのくらいじゃないか」
「お父様は意固地になって絶対探さないわよ、戻って来ると高を括っているはずよ!いい罰にはなるけど、話を聞いてくれる人が二人もいなくなるなんて…」
義父上は当分は探すことはしないだろう、だが戻って来なければ、動くのではないか。メルベールもアベリーのことで、余裕がなくなっていることは分かっているが、アベリーが理解するか、寄宿学校に入るのが先か、見通しの悪いままだ。
出掛けていたキリアムが戻って来ると、慌てた様子で着替えている最中にメルベールがやって来た。
「え?」
「今日、急に訪ねて来て出て行くって」
「離縁ってこと、かい?」
「それはお父様に任せるって言っていたけど…顔を見たくないのは分かるけど、お母様、何だか別人みたいで」
「別人?」
「嫌ならここに住んだらいいと言ったのよ。そうしたら、伯爵家が見えるようなところ、吐き気がするって…」
もし思っていたとしても、そんなことを言う人ではない。何かの間違いだろう。
「聞き間違いじゃないのか?義母上が言うはずないだろう」
「いいえ、本当にそう言ったの。葬儀に間に合わなかったことも責めるように言われて…」
「それは…オーランドが言っていたんだ。ユーリを看取ったのは、義母上だけだったそうだ」
「そんな…何かユーリがお母様に話したってこと?」
「何かって何だい?別に話して困るようなことはないだろう?」
「私を責めるようなことを言ったのかもしれない」
それは仕方のないことではないか、責められて当然だろう。毒を飲んだのはユーリの意思だとしても、叔母というだけで大公家に一人で謝罪に行って、文句をも言いたくもなるだろう。
「言われても仕方ないじゃないか」
「えっ、でもお母様に言う必要はないでしょう?」
自身の母親に、側にいた、たった一人の人に言う方が自然だろう。
「なぜだい?ユーリは命を懸けたんだよ、最期に文句を言いたくもなるだろう?」
「だって、そんな死ぬ人が何を言っても、信じるでしょう?」
だから何だというのだろうか、死に際に嘘を付く必要もなければ、もし嘘を言ったとしても、それが何だというのだ?
ユーリしか知らない、何か後ろめたいことでもあったというのか?今まで何も言わなかった母親に言われたことがショックだったのだろうか?
「義母上に自分を悪く言われたことが気に入らないってことかい?」
「そういうわけじゃないけど…ずるいじゃない」
「ずるい?何がずるい?」
「だって、私とルオンに使った時間をユーリに使うって。私はいないと思って頂戴とまで言ったのよ。私だって娘なのに!私だって毎日辛いのに、支えてくれるのが母親でしょう!酷いじゃない…」
アベリーのことで参っており、娘としてはショックだったのかもしれないが、確かに一番時間を掛けられていないのはユーリだろう。
「あと、パーシ子爵家が援助を頼んで来ても見捨てろって。オーランド様にも伝えておいて欲しいって」
「そこまでの覚悟で出て行かれたんだろう」
「キリアムは心配じゃないっていうの!お母様は働いたこともないのに」
今まで貴族夫人だった人が、ひとりで生きていくのは難しいことだろう。だが、何もかも切り捨てたように出て行ったのならば、覚悟は出来ているはずだ。
もしかしたら、既に仕事が決まっているのかもしれない。
「それはそうだが、どうするって言っていたんだ?」
「針仕事は出来るからって、落ち着いたら手紙を書くとは言っていたけど」
「どこへ行ったか、心当たりがあるのか?」
「子爵家でないなら、分からないわ」
それならば探しようはない、無事だと信じるしかない。
「それなら、待つしかないんじゃないか。自らの意思で出て行かれたのなら、連れ戻せないだろう?義父上に探してもらうように頼むか、そのくらいじゃないか」
「お父様は意固地になって絶対探さないわよ、戻って来ると高を括っているはずよ!いい罰にはなるけど、話を聞いてくれる人が二人もいなくなるなんて…」
義父上は当分は探すことはしないだろう、だが戻って来なければ、動くのではないか。メルベールもアベリーのことで、余裕がなくなっていることは分かっているが、アベリーが理解するか、寄宿学校に入るのが先か、見通しの悪いままだ。
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