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姉と父
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グラーフ伯爵家に行ったメルベールは、鬱蒼とした状態に驚いた。いつもなら、花などが飾ってあるはずが、一切取り除かれている。
「メルベールお嬢様…」
呼び掛けたのは、祖父の頃から勤めている執事であった。
「お父様とお母様は?」
「旦那様は執務室に、奥様は出掛けられています」
「お父様に会いに行くわ…」
メルベールですと声を掛けると、戻ったのか入って来いと、邸に似つかわしくない明るい声がした。ドアを開けるといつも通りの表情の父がいた。
「無事、戻っていたんだな」
「…ええ」
「アベリーはどうしている?泣いたりしていないか?」
「それだけのことをしたのですから、仕方ありません」
アベリーは玩具やお菓子を与えないことで、罰を与えているが、癇癪を起してばかりで、まだ落ち着いて話をすることも出来ない。
「そうだが…可哀想だろう、メルベールが優しくしてやるんだぞ?あの子も怪我をさせようとしたわけじゃないんだ」
「でも奪おうとしたのでしょう!」
「子どものやり取りだったんだ。よくあるじゃないか、分かるだろう?ぬいぐるみくらい、私が買ってあげたというのに」
よくあるはずない、人様の物を奪おうとするなんておかしいに決まっている。どうして分かっていないのか、理解出来ない。
「どうして、お父様が謝罪に行かなかったの?」
「それは、アベリーが不安そうにしていて、離れなかったんだ…だからユーリなら叔母だろう?」
「お母様でも任せれば良かったじゃない!」
「可哀想じゃないか」
「それでユーリを殺したって言うの…?」
「違う!謝罪をして来いと言っただけなのに、毒なんて知らなかった。そんなもの飲めなどと言ってはいない。勝手に死んだんだ…」
ふざけるな、連れて行ったお父様のせいなのに、どうしてユーリが責任と取らなくてはいけないのか。ユーリはどんな思いで…どうして毒なんて飲んだのよ。
私が早く戻っていれば、私が領地に行かなければ、こんなことは起こらなかった。
「時間を戻してよ!ユーリを返して!」
「そんなこと出来るわけないだろう、落ち着きなさい。ユーリのことは残念だったが、あれは勝手にやったことだ。お前が責任を感じることはない」
責任を感じないわけがないじゃない、私の子どものせいで、私はなんてことをしてしまったのか。
「どうしてお父さまが毒を飲まなかったのよ!」
「っな」
「どう考えても、お父様が死ねば良かったじゃない!」
「親に向かってなんてことを」
「何が親だ!いつもユーリが言うことを聞くからって、ユーリにばかり我儘を言っていたのはお父様でしょう!」
私がいないところでユーリを責めていたのは分かっていたが、ユーリは大丈夫だからと、きっと謝罪に行くように言われて、無理やり行かされたのだ。
「何だと!」
「アベリーもお父様の人形じゃないのよ!我儘で言うことを聞かないのに、どうしてそんなところに連れて行ったのよ!お父様は嫌われたくないからいい顔だけして!あの子も被害者かもしれないけど、もう無理よ、人を殺したんだから!」
「っな、意識は戻ったと」
「違うわ、アベリーはユーリを殺したのよ!」
「それは違う!あいつが勝手に、死んだんだ!アベリーが殺したなんて言うもんじゃない!」
「責任を取って来いと言ったのはお父様でしょう!お父様が取ればよかったのよ、大公様もそう思ってらっしゃるはずよ」
「そんなわけないだろう!」
もう何を言ってもユーリは戻って来ない、頭では分かっているのに、実感がないのに怒りが湧いて来る。どうしたらいいの。
「もうアベリーは終わりよ、修道院で人生を終えるしかないわ。お父様のせいよ!」
「反省をすればいい、子どものやったことだ。いずれ忘れるさ」
「そんなはずないじゃない!あの子は自分のしたことを気付けた時、お父様を恨むでしょうね…」
「っな」
「メルベールお嬢様…」
呼び掛けたのは、祖父の頃から勤めている執事であった。
「お父様とお母様は?」
「旦那様は執務室に、奥様は出掛けられています」
「お父様に会いに行くわ…」
メルベールですと声を掛けると、戻ったのか入って来いと、邸に似つかわしくない明るい声がした。ドアを開けるといつも通りの表情の父がいた。
「無事、戻っていたんだな」
「…ええ」
「アベリーはどうしている?泣いたりしていないか?」
「それだけのことをしたのですから、仕方ありません」
アベリーは玩具やお菓子を与えないことで、罰を与えているが、癇癪を起してばかりで、まだ落ち着いて話をすることも出来ない。
「そうだが…可哀想だろう、メルベールが優しくしてやるんだぞ?あの子も怪我をさせようとしたわけじゃないんだ」
「でも奪おうとしたのでしょう!」
「子どものやり取りだったんだ。よくあるじゃないか、分かるだろう?ぬいぐるみくらい、私が買ってあげたというのに」
よくあるはずない、人様の物を奪おうとするなんておかしいに決まっている。どうして分かっていないのか、理解出来ない。
「どうして、お父様が謝罪に行かなかったの?」
「それは、アベリーが不安そうにしていて、離れなかったんだ…だからユーリなら叔母だろう?」
「お母様でも任せれば良かったじゃない!」
「可哀想じゃないか」
「それでユーリを殺したって言うの…?」
「違う!謝罪をして来いと言っただけなのに、毒なんて知らなかった。そんなもの飲めなどと言ってはいない。勝手に死んだんだ…」
ふざけるな、連れて行ったお父様のせいなのに、どうしてユーリが責任と取らなくてはいけないのか。ユーリはどんな思いで…どうして毒なんて飲んだのよ。
私が早く戻っていれば、私が領地に行かなければ、こんなことは起こらなかった。
「時間を戻してよ!ユーリを返して!」
「そんなこと出来るわけないだろう、落ち着きなさい。ユーリのことは残念だったが、あれは勝手にやったことだ。お前が責任を感じることはない」
責任を感じないわけがないじゃない、私の子どものせいで、私はなんてことをしてしまったのか。
「どうしてお父さまが毒を飲まなかったのよ!」
「っな」
「どう考えても、お父様が死ねば良かったじゃない!」
「親に向かってなんてことを」
「何が親だ!いつもユーリが言うことを聞くからって、ユーリにばかり我儘を言っていたのはお父様でしょう!」
私がいないところでユーリを責めていたのは分かっていたが、ユーリは大丈夫だからと、きっと謝罪に行くように言われて、無理やり行かされたのだ。
「何だと!」
「アベリーもお父様の人形じゃないのよ!我儘で言うことを聞かないのに、どうしてそんなところに連れて行ったのよ!お父様は嫌われたくないからいい顔だけして!あの子も被害者かもしれないけど、もう無理よ、人を殺したんだから!」
「っな、意識は戻ったと」
「違うわ、アベリーはユーリを殺したのよ!」
「それは違う!あいつが勝手に、死んだんだ!アベリーが殺したなんて言うもんじゃない!」
「責任を取って来いと言ったのはお父様でしょう!お父様が取ればよかったのよ、大公様もそう思ってらっしゃるはずよ」
「そんなわけないだろう!」
もう何を言ってもユーリは戻って来ない、頭では分かっているのに、実感がないのに怒りが湧いて来る。どうしたらいいの。
「もうアベリーは終わりよ、修道院で人生を終えるしかないわ。お父様のせいよ!」
「反省をすればいい、子どものやったことだ。いずれ忘れるさ」
「そんなはずないじゃない!あの子は自分のしたことを気付けた時、お父様を恨むでしょうね…」
「っな」
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