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旅立ちの後(トスター侯爵家2)
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侯爵夫妻にも声が聞こえ、二人の姿を捉えた瞬間に、歩きながら怒鳴りつけた。
「どうしてホテルを変えたんだ!何度も連絡したんだぞ!」
「どうしてこんなに遅いの!楽しんでいた?ふざけないで!」
「えっ、なんで、あの、その…ホテルは…」
キリアムは連絡を入れなかったのは悪かったが、まあいいだろうと考え、なぜそんなにも怒られているのか分からなかった。
「そのヘラヘラした顔を止めろ!」
「一体、どうしたっていうんだよ!三日遅くなっただけじゃないか、そんなに怒ることか?何かあったのか?」
「ああ…応接室に来なさい」
使用人に旅の荷解きを頼み、キリアムとメルベールは何かあったのかと使用人を見るも、目を逸らされて、応接室に向かった。
「まず細かい話は抜きにして、結論だけ言う。黙って聞きなさい」
マトムは、六日前にアベリーが茶会でスイク王国の大公家のお孫さんを怪我させ、一時意識不明になるほどだったこと。現在は目を覚まされたが、後遺症を含めて様子を見ている状況で、アベリーは全く反省していないこと。
そして、連れて行ったのはグラーフ伯爵だったが、その謝罪になぜかユーリを行くように指示して、ユーリは責任のために毒を飲んで自害したこと。葬儀は三日前に終わっていると告げた。
「…は?」
「ユーリが……なん…で」
キリアムは理解が追い付かない様子だったが、メルベールはソファから力をなくして、ずり落ちて、しゃがみ込んでしまった。
「だから連絡をしていたんだ!アベリーのことも、ユーリのことも!それがいくら経っても返事がない」
「オーランドは?」
「オーランドの連絡は王家に任せてある。知らせは届いたようだが、まだどこにいるのか分からない」
オーランドには昨日、知らせが届いて、急いで戻っていると連絡を貰っている。
「ユーリが死んだって言うの?どうして…」
「アベリーが怪我させたのは大公様の孫、大公様もだが、兄君の国王陛下も大変可愛がってらっしゃるそうだ。国の問題になるのを、ユーリは過剰な責任を取ることで収めようとしたのではないかと私は考えているが、もう聞くことは出来ない」
「そんな…そんなユーリが死ぬはずないわ」
遺体も見ていないメルベールには信じられないことだった。
「行く前にお土産を買って来ると言ったのよ、楽しみにしているって…それなのに…いやーーーーーっ!!いやよ、ユーリが、嘘に決まっているわ、嘘そうよ、嘘よ」
「メルベール、落ち着くんだ」
急な喪失感に襲われたメルベールは、発狂し、髪の毛を掻きむしっている。
「信じたくないのは分かるが、私たちは葬儀もに参列している。それよりも、大公様に謝罪と、アベリーの今後について話さなければならない」
国の問題に発展する前に、どうにか収めて貰わなくてならない。
「アベリーはどうしているのですか」
「今は部屋で謹慎させている」
「どうして怪我をさせたんだ?事故じゃないのか?」
「事故じゃない、お孫様が持ってらしたぬいぐるみを頂戴と強請ったらしい。それを大事なものだからと断られたことで、無理やり奪おうとアベリーが引っ張ったせいで、お孫様が転ばれて、頭を打たれたんだ」
「それは…」
「見ていた者も多く、間違いないということだ」
マトムは全て鵜呑みにするわけにはいかないと、内々に調査をしたが、間違いはなかった。あちらには何の非もない。
「アベリーは十二まで監視し、そのまま修道院に入れる」
「それは」
「修道院…」
「もし大公様が許されたとしても、余程でない限りアベリーに嫁ぎ先はないだろう。二人はアベリーと十二歳になるまで一緒に暮らしなさい」
「トスカーとミエルは」
トスカーとミエルはアベリーの双子の弟の名前だ、まだ三歳である。
「消えることはないかもしれないが、二人のためには切り離した方がいいだろう」
「どうしてホテルを変えたんだ!何度も連絡したんだぞ!」
「どうしてこんなに遅いの!楽しんでいた?ふざけないで!」
「えっ、なんで、あの、その…ホテルは…」
キリアムは連絡を入れなかったのは悪かったが、まあいいだろうと考え、なぜそんなにも怒られているのか分からなかった。
「そのヘラヘラした顔を止めろ!」
「一体、どうしたっていうんだよ!三日遅くなっただけじゃないか、そんなに怒ることか?何かあったのか?」
「ああ…応接室に来なさい」
使用人に旅の荷解きを頼み、キリアムとメルベールは何かあったのかと使用人を見るも、目を逸らされて、応接室に向かった。
「まず細かい話は抜きにして、結論だけ言う。黙って聞きなさい」
マトムは、六日前にアベリーが茶会でスイク王国の大公家のお孫さんを怪我させ、一時意識不明になるほどだったこと。現在は目を覚まされたが、後遺症を含めて様子を見ている状況で、アベリーは全く反省していないこと。
そして、連れて行ったのはグラーフ伯爵だったが、その謝罪になぜかユーリを行くように指示して、ユーリは責任のために毒を飲んで自害したこと。葬儀は三日前に終わっていると告げた。
「…は?」
「ユーリが……なん…で」
キリアムは理解が追い付かない様子だったが、メルベールはソファから力をなくして、ずり落ちて、しゃがみ込んでしまった。
「だから連絡をしていたんだ!アベリーのことも、ユーリのことも!それがいくら経っても返事がない」
「オーランドは?」
「オーランドの連絡は王家に任せてある。知らせは届いたようだが、まだどこにいるのか分からない」
オーランドには昨日、知らせが届いて、急いで戻っていると連絡を貰っている。
「ユーリが死んだって言うの?どうして…」
「アベリーが怪我させたのは大公様の孫、大公様もだが、兄君の国王陛下も大変可愛がってらっしゃるそうだ。国の問題になるのを、ユーリは過剰な責任を取ることで収めようとしたのではないかと私は考えているが、もう聞くことは出来ない」
「そんな…そんなユーリが死ぬはずないわ」
遺体も見ていないメルベールには信じられないことだった。
「行く前にお土産を買って来ると言ったのよ、楽しみにしているって…それなのに…いやーーーーーっ!!いやよ、ユーリが、嘘に決まっているわ、嘘そうよ、嘘よ」
「メルベール、落ち着くんだ」
急な喪失感に襲われたメルベールは、発狂し、髪の毛を掻きむしっている。
「信じたくないのは分かるが、私たちは葬儀もに参列している。それよりも、大公様に謝罪と、アベリーの今後について話さなければならない」
国の問題に発展する前に、どうにか収めて貰わなくてならない。
「アベリーはどうしているのですか」
「今は部屋で謹慎させている」
「どうして怪我をさせたんだ?事故じゃないのか?」
「事故じゃない、お孫様が持ってらしたぬいぐるみを頂戴と強請ったらしい。それを大事なものだからと断られたことで、無理やり奪おうとアベリーが引っ張ったせいで、お孫様が転ばれて、頭を打たれたんだ」
「それは…」
「見ていた者も多く、間違いないということだ」
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「アベリーは十二まで監視し、そのまま修道院に入れる」
「それは」
「修道院…」
「もし大公様が許されたとしても、余程でない限りアベリーに嫁ぎ先はないだろう。二人はアベリーと十二歳になるまで一緒に暮らしなさい」
「トスカーとミエルは」
トスカーとミエルはアベリーの双子の弟の名前だ、まだ三歳である。
「消えることはないかもしれないが、二人のためには切り離した方がいいだろう」
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