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私の決めた最期

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「私の作った毒を既に大公家の皆様の前で、責任を取るために飲みました。あと数時間もすれば死に至ります。解毒剤はありません。謝罪と慰謝料と、私の命で足りれば、これ以上の咎はないかと思います」
「…な」

 何を言っているんだ?毒?死ぬ?

「足りなかったら、申し訳ございません。そろそろ、呼吸が苦しくなって来ましたので、私の部屋はまだありますか?あと明日、医師も呼んで置いてください。あとはよろしくお願いいたします」
「なっ、なぜ私が任されなければならない!」
「でしたら、お父様も責任の毒を飲みますか。本来なら本日、保護者であったお父様が責任を取るべきでしょう」
「なぜ私が!」
「そうでしょう?でしたら、もういいではありませんか。これでお怒りは収められるかもしれないのですよ」

 ゴッホ、咳で口を手で押さえると、そこには血がべっとりと付いていた。だが、これで父も流石に静かになるだろう。

「っな、血が…」
「もういいですか」
「死ぬのか…お前が…」
「そうだと、ゴッホ」
「もういい、部屋に行け」

 ユーリの部屋は物置の様にはなっていたが、残っていた。ベットに横たわって、死を待つことにした。だが、話を聞いたのだろう、母が血相を変えてやって来た。

「ユーリ、どうして…あなたが」
「いいのです。私の命で許されるなら、幸運でしょう」
「解毒薬は本当にないの?作って貰うことは?」
「ないわ…ゴッホ、ゴッホ…私が作った物だから、誰にも分からないわ…ゴフッ」
「そんな…ユーリ、しっかり」

 母は起き上がったユーリの背中をさするが、既に全身に毒の回るユーリに効果はない。それでも母の温かい手はユーリの心を温かい気持ちにさせた。

「おかあさま?」

 開けっ放しになっていたドアから入って来たのはアベリーだった。

「どうしたの?」
「お母様ではなく、叔母さんよ」
「お母様じゃないの?」
「双子だから、同じ顔なのよ」
「ふーん」

 アベリーに会っていたのは赤子の頃だったので、ユーリのことを憶えておらず、母親と同じ顔をしている人がもう一人いるとは思っていない。

「反省していたのではないの?」
「あのこがわるいのよ」
「どうして?」
「ちょうだいっていってもくれないんだもん」
「どうして人の大事な物を取ろうとしたの?」
「かわいかったんだもん。わたしにくれてもいいじゃない」
「大切な物でも?」
「そんなのしらないもん。ケチっていうんでしょう?」

 おそらく、父にケチだなとでも言われたのだろう。奪おうとして、怪我をさせて、ケチだと言える神経が恐ろしい。

「アベリー、お祖父様のところに行きなさい」
「うん、そうする」

 母に促されて、アベリーはスタスタと歩いて行くが、おそらくあの子の未来は暗く険しい道になるはずだ。自身で受け止められなければ、両親を恨み、祖父母を恨むようになるかもしれない。

「いくらお父様が甘やかしても、メルベールは躾をしていないの?」
「ええ、言っても聞かないからと」
「修道院に入れるしかないかもね。メルベールに影響がないといいけど」
「メルベールには責任があるわ。ごめんなさい、私がちゃんとしていれば、離縁してあなたと逃げれば良かったわ。結婚も反対すれば良かった、せめてあなたを嫁がせていたら、アベリーをあの人から引き剥がしていたら」
「無理だったでしょう?全てたらればよ、ゴッホ…」
「ユーリ…」

 母は何も言って来なかったわけではない、強く出られない部分はあったが、どうにか宥めようと、改善しようとしたが、父は聞く耳を持っていなかった。

「これでメルベールの役に立てたかしら?」
「そんな、そんなことしなくて良かったのよ」
「国王陛下も可愛がってらっしゃる、お嬢様なの」
「っ、そうだったの…」
「だから、ゴッホ、先手を打ったけど、これ以上の咎も考えられるわ…」
「それはユーリが考えなくてもいいことよ」
「お母様にお願いがあるの…」

 きっと、罪悪感と、後悔でいっぱいの母は願いを叶えてくれるはずだ。
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