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私の決めた責任
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「それで、どう責任を取るつもりだ」
「こちらに慰謝料と、私の命で償わせてはいただけませんか。足りませんでしたら、さらにアレクス・グラーフからお願いします」
「命とは何だ?」
「ここに十時間以内に亡くなる毒があります。感染するものではありません」
ユーリはポケットから黒い液体の入った小瓶を出して、大公夫妻に見せた。
「薬学を学んでいた私が調合したものです。これを飲みます。姪は別に罰を受けるべきですが、大公様と親が決めるべきことでしょう。いかがでしょうか」
「命を懸けると言うのか」
「はい、頭部はどのような問題が起こるか分かりません。それほどのことをしたと思っております。私は姉のための存在ですから、私が姉の代わりに命を持って償いたいと思います。勿論、大公様にはたいした命ではないと思いますが、多少怒りも収まるのではないでしょうか、では」
ユーリは返答の前に迷いなく、グイっと飲み干した。大公夫妻は本物なのかは分からないが、迷いのない様子に驚くしかなかった。
「っな!」
「こちらで亡くなってはご迷惑ですから、明日どなたかをグラーフ伯爵家に確認に寄こしてください」
「話せるのか?」
すぐさま倒れてしまうのではないかと思ったが、そうではないらしい。偽物なのか?いや、彼女の目は真剣そのものである。
「はい、数時間は話せると思います。徐々に毒が回るようにしてあります。解毒剤は作っていないので、確実に死に至ります。お嬢様に痛み止めをお持ちしようかとも思いましたが、私が持って来たようなものを信用できないと思い、これが最善だと思い持って参りました」
「落ち着いているのだな。そんなに姪が大事か」
「いえ、役立たずで愚かな私は関わるなと遠ざけられておりまして、ほとんど会ったこともありません」
「ならば、なぜ」
「それが私の役目だからと言えばいいのでしょうか、私と姉、姉と言っても双子なのです。一卵性の双子、私は間違って生まれただけで、父は本来一つの存在だったと、ですので責任を取るのは当たり前だそうです」
「なんだそれは…」
無理やり生まれて来た要らない存在だと、だからメルベールが常に優位でなければならない。お前が奪うことは許されないと、本来メルベールのものだったのだからと父は考えている。
「あなた、夫は?」
「おります。王太子殿下の側近をしております。ですが、つい最近、恋人が大きなお腹で妊娠したとやって来まして、知らぬ内に離縁となっているかもしれません」
「は?」
「愛人がいるのか」
「政略結婚のようなものでしたので、問い詰めたことはございませんが、いらっしゃるようです」
「最低ね…」
「明日、使いを出す」
「はっ!この度は誠に申し訳ございませんでした。お孫様の回復と、後遺症が出ないことを、心より祈っております」
ユーリは再度、深々と頭を下げて部屋を出た。
孫娘はすぐに目を覚まして、頭が痛いという程度だったおかげもあるが、まさか迷いなく命を懸けると思っておらず、さすがの大公夫妻も呆気に取られた。先手を打たれたというべきか、だが姪は国王である兄もとても可愛がっている、争いにしないためにも厳罰は必要だった。
ユーリはふらつく足取りで、邸に入ろうとすると、今度は父が待ち構えていた。
「どうなったんだ!」
「お孫様は一度目を覚まされたようで、後遺症は分かりませんが、ご無事の様子です。納得されれば、許してくださると思います」
「そうか、それなら良かった。ちょっと頭を打ったくらいで」
ユーリがあっさり帰って来たということは大したことはなかったということだろう。無駄にビクビクしてしまった。
「明日、私が死んだか大公家の使いの方が確認に来られますので、お通しして、確認をして貰ってください」
「は?何だと?」
「こちらに慰謝料と、私の命で償わせてはいただけませんか。足りませんでしたら、さらにアレクス・グラーフからお願いします」
「命とは何だ?」
「ここに十時間以内に亡くなる毒があります。感染するものではありません」
ユーリはポケットから黒い液体の入った小瓶を出して、大公夫妻に見せた。
「薬学を学んでいた私が調合したものです。これを飲みます。姪は別に罰を受けるべきですが、大公様と親が決めるべきことでしょう。いかがでしょうか」
「命を懸けると言うのか」
「はい、頭部はどのような問題が起こるか分かりません。それほどのことをしたと思っております。私は姉のための存在ですから、私が姉の代わりに命を持って償いたいと思います。勿論、大公様にはたいした命ではないと思いますが、多少怒りも収まるのではないでしょうか、では」
ユーリは返答の前に迷いなく、グイっと飲み干した。大公夫妻は本物なのかは分からないが、迷いのない様子に驚くしかなかった。
「っな!」
「こちらで亡くなってはご迷惑ですから、明日どなたかをグラーフ伯爵家に確認に寄こしてください」
「話せるのか?」
すぐさま倒れてしまうのではないかと思ったが、そうではないらしい。偽物なのか?いや、彼女の目は真剣そのものである。
「はい、数時間は話せると思います。徐々に毒が回るようにしてあります。解毒剤は作っていないので、確実に死に至ります。お嬢様に痛み止めをお持ちしようかとも思いましたが、私が持って来たようなものを信用できないと思い、これが最善だと思い持って参りました」
「落ち着いているのだな。そんなに姪が大事か」
「いえ、役立たずで愚かな私は関わるなと遠ざけられておりまして、ほとんど会ったこともありません」
「ならば、なぜ」
「それが私の役目だからと言えばいいのでしょうか、私と姉、姉と言っても双子なのです。一卵性の双子、私は間違って生まれただけで、父は本来一つの存在だったと、ですので責任を取るのは当たり前だそうです」
「なんだそれは…」
無理やり生まれて来た要らない存在だと、だからメルベールが常に優位でなければならない。お前が奪うことは許されないと、本来メルベールのものだったのだからと父は考えている。
「あなた、夫は?」
「おります。王太子殿下の側近をしております。ですが、つい最近、恋人が大きなお腹で妊娠したとやって来まして、知らぬ内に離縁となっているかもしれません」
「は?」
「愛人がいるのか」
「政略結婚のようなものでしたので、問い詰めたことはございませんが、いらっしゃるようです」
「最低ね…」
「明日、使いを出す」
「はっ!この度は誠に申し訳ございませんでした。お孫様の回復と、後遺症が出ないことを、心より祈っております」
ユーリは再度、深々と頭を下げて部屋を出た。
孫娘はすぐに目を覚まして、頭が痛いという程度だったおかげもあるが、まさか迷いなく命を懸けると思っておらず、さすがの大公夫妻も呆気に取られた。先手を打たれたというべきか、だが姪は国王である兄もとても可愛がっている、争いにしないためにも厳罰は必要だった。
ユーリはふらつく足取りで、邸に入ろうとすると、今度は父が待ち構えていた。
「どうなったんだ!」
「お孫様は一度目を覚まされたようで、後遺症は分かりませんが、ご無事の様子です。納得されれば、許してくださると思います」
「そうか、それなら良かった。ちょっと頭を打ったくらいで」
ユーリがあっさり帰って来たということは大したことはなかったということだろう。無駄にビクビクしてしまった。
「明日、私が死んだか大公家の使いの方が確認に来られますので、お通しして、確認をして貰ってください」
「は?何だと?」
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