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姉の子どもたち
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メルベールとキリアムの長女・アベリーはすくすく育ち、ユーリが妊娠しないまま、メルベールが再び妊娠した。産まれた子は双子の男の子だった。
ユーリはお祝いには訪れたが、関わらなくなっていた。原因はメルベールの出産後、父にまた呼び出されたことであった。
「お前はもういい。メルベールが男の子を二人産んだ。お前はもう子どもなぞ、産むな。よく考えれば、いくらオーランドくんの子どもでも、お前の子なぞ、可愛がれる気がしない。なぜ気付かなかったんだ、恥ずかしい限りだ」
「…そうですね」
「オーランドくんにもお前じゃない者に産ませた方がいいと進言しておこう。愚かな母親を持たない方が幸せだとな」
「…はい」
「メルベールに感謝するんだぞ。立派な後継者を産んでくれたんだ。お前は孫たちには絶対関わるな、お前が関わって愚か者にでもなったら困るからな、はっはは」
石女よりも、下手に産まれてメルベールの子どもの爵位を奪われることを想像したのだろう。上機嫌になった父はユーリを呼び出すこともなくなった。その代わりに、双子で手一杯の侯爵家から、アベリーを連れ出しては可愛がっていた。
「アベリー、これ欲しい」
「ああ、お祖父様が買ってやろう」
「アベリー、これ嫌い」
「ああ、こんなもの食べなくていい」
「アベリー、王子様と結婚するの」
「アベリーなら王子様も大好きになるぞ」
アベリーは父が全て受け入れてしまうため、どんどん我儘な子になっていった。母は口を出していたが、双子に掛かりきりとなっていた侯爵家の祖父母、メルベールとキリアムは面倒を看てくれて有難いと、気付かなかった。
アベリーは我慢も出来ない子になり、落ち着きもなく、自分のしたいことを優先して、じっとしていられない。家庭教師を雇うも、アベリーが泣き喚き、家庭教師を匙を投げてしまうほどになって、ようやく厳しくするようになったが、近いことが仇となって、父のところに逃げてしまう、悪循環に陥った。
だが父の孫でもあるが、侯爵家の孫でもある。さすがに侯爵夫妻にこのままでは、まともな子にならない、甘やかさないで欲しいと言われて、申し訳なかったと謝罪した。だが、人目のないところでは、結局甘やかし、何も変わっていなかった。
弟・ルオンも結婚していたが、子どもはまだおらず、メルベールに似たアベリーが、メルベールよりも、父にとっては一番になっていた。
ようやく双子が二歳になると、メルベールはユーリに愚痴をこぼしにやって来るようになった。侯爵家に行くと、お父様がうるさいから、控えているとメルベールに話してあった。
「お父様は甘やかしてばっかりで、どうして厳しく出来ないのかしら」
「ルオンの奥様も妊娠中でしょう?分散されるんじゃない?」
「そうかしら?」
「大丈夫よ、あなたたちの子どもなんだから」
「何であんな風になってしまったのって思っているのよ、すぐ喚くんだから」
「大丈夫よ、だって愛されて生まれて来た子じゃない。あなたたちの愛が届かないはずないんじゃない?」
「そうね、後ろ向きなことばかり言っていては駄目よね。ありがとう、ユーリ」
ユーリの子どものことは、メルベールから『もし気負うようなことがあるなら、私の子どももいるのだから、責任を感じることはないのよ』と言われて以来、触れて来ることはない。
医院でも妊娠しないことで、子どもが産めないから、働きに出ていたのだと言われていることもある。
オーランドも『子どもは難しいのかもしれないな』と言われて、『申し訳ございません』と謝って以来、何も言って来ることはない。義両親も何も言って来ない。
元から期待されていない私は必要ない、愚かな私は考えてしまうのだ。
ユーリはお祝いには訪れたが、関わらなくなっていた。原因はメルベールの出産後、父にまた呼び出されたことであった。
「お前はもういい。メルベールが男の子を二人産んだ。お前はもう子どもなぞ、産むな。よく考えれば、いくらオーランドくんの子どもでも、お前の子なぞ、可愛がれる気がしない。なぜ気付かなかったんだ、恥ずかしい限りだ」
「…そうですね」
「オーランドくんにもお前じゃない者に産ませた方がいいと進言しておこう。愚かな母親を持たない方が幸せだとな」
「…はい」
「メルベールに感謝するんだぞ。立派な後継者を産んでくれたんだ。お前は孫たちには絶対関わるな、お前が関わって愚か者にでもなったら困るからな、はっはは」
石女よりも、下手に産まれてメルベールの子どもの爵位を奪われることを想像したのだろう。上機嫌になった父はユーリを呼び出すこともなくなった。その代わりに、双子で手一杯の侯爵家から、アベリーを連れ出しては可愛がっていた。
「アベリー、これ欲しい」
「ああ、お祖父様が買ってやろう」
「アベリー、これ嫌い」
「ああ、こんなもの食べなくていい」
「アベリー、王子様と結婚するの」
「アベリーなら王子様も大好きになるぞ」
アベリーは父が全て受け入れてしまうため、どんどん我儘な子になっていった。母は口を出していたが、双子に掛かりきりとなっていた侯爵家の祖父母、メルベールとキリアムは面倒を看てくれて有難いと、気付かなかった。
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だが父の孫でもあるが、侯爵家の孫でもある。さすがに侯爵夫妻にこのままでは、まともな子にならない、甘やかさないで欲しいと言われて、申し訳なかったと謝罪した。だが、人目のないところでは、結局甘やかし、何も変わっていなかった。
弟・ルオンも結婚していたが、子どもはまだおらず、メルベールに似たアベリーが、メルベールよりも、父にとっては一番になっていた。
ようやく双子が二歳になると、メルベールはユーリに愚痴をこぼしにやって来るようになった。侯爵家に行くと、お父様がうるさいから、控えているとメルベールに話してあった。
「お父様は甘やかしてばっかりで、どうして厳しく出来ないのかしら」
「ルオンの奥様も妊娠中でしょう?分散されるんじゃない?」
「そうかしら?」
「大丈夫よ、あなたたちの子どもなんだから」
「何であんな風になってしまったのって思っているのよ、すぐ喚くんだから」
「大丈夫よ、だって愛されて生まれて来た子じゃない。あなたたちの愛が届かないはずないんじゃない?」
「そうね、後ろ向きなことばかり言っていては駄目よね。ありがとう、ユーリ」
ユーリの子どものことは、メルベールから『もし気負うようなことがあるなら、私の子どももいるのだから、責任を感じることはないのよ』と言われて以来、触れて来ることはない。
医院でも妊娠しないことで、子どもが産めないから、働きに出ていたのだと言われていることもある。
オーランドも『子どもは難しいのかもしれないな』と言われて、『申し訳ございません』と謝って以来、何も言って来ることはない。義両親も何も言って来ない。
元から期待されていない私は必要ない、愚かな私は考えてしまうのだ。
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