【完結】本音を言えば婚約破棄したい

野村にれ

文字の大きさ
上 下
49 / 51

夜会1

しおりを挟む
 王家主催の夜会に参加していたカナンとルーフラン。カナンがリファと話すためにルーフランから離れ、手洗いの帰りにルーフランに近付く令嬢がいた。

「シャンパンを2つ受け取ってしまったのですが、お1ついかがですか」
「いや、結構だ」
「そうおっしゃらず、受け取ってください」
「いや、要らない」
「私にこのまま2つ持って歩けとおっしゃるのですか」
「ああ、ではいただくよ」

 ルーフランはマリッツアに盛られて以来、飲み物や食べ物に非常に敏感になっており、断ったにもかかわらず、非常に勧めて来る様におかしいと判断したが、受け取って飲もうとすると口角が上がったのが見え、飲むのを止める。

「君は飲まないのかい?」
「ええ、いただきますわ。ルーフラン様もお飲みになって」
「やっぱりワインにしようかな」
「っえ、でもシャンパンも美味しいですわよ。さあ、お飲みになって」
「黙れっ!」

 グラスを持っていない片手で拘束し、彼女のグラスは落として割れたが、渡されたグラスは持っており、駆け付けた父・アランズ公爵がグラスを受け取っていた。

 騒ぎにカナンが慌てて駆け付けると、ルーフランは女性を後ろ手に拘束していた。

「グラスを調べてくれ」

 アレヴァー王太子が指示を出してグラスを回収して、調べさせると、興奮剤が入れられており、知らない、何かの間違いだと騒いだが、勧めている様子を見ていた者もおり、現行犯となった。

「ああ、あなた、Cクラスの」

 その女性は編入生であったラシーネ・コルトバであった。卒業後も結婚しておらず、仕事もしていないことから、相手を見付けるのに躍起になっていた。

 自由恋愛をしていたベーシ伯爵令息とはやはり別れてというよりは、遊ばれただけであった。

 そのベーシ伯爵令息は、カルミナ・スマック子爵令嬢はまだ療養中で、婚約は解消となり、別の相手と結婚したが、上手くいっていないという噂だ。

 別室に連れて行っても、止めて触らないでと喚くので、皆が困惑する中、カナンが急に駆け寄り、がっしりと抱きしめると、ううぅと言う声と共に大人しくなった。

 事情を知っているアレヴァーの護衛騎士たちは、そのまま抱き殺すのではないかとハラハラしたが、令嬢だからできる芸当である。男性騎士が行えば、後で何を言われるか分からない。

 ぐったりした様子のラシーネをカナンが椅子に座らせると、アランズ公爵が手慣れた様子で紐で縛り付け、辺境でのチームプレーが役に立ったというべきである。

 そしてアレヴァーとルーフランがラシーネに問いかけた。

「興奮剤を盛ったな?」
「知りません」
「薬の入手ルートは」
「知らない…」
「誰かから買ったのか?それとも貰ったのか?」
「知りません…」

 ラシーネは縛られたまま泣き出し、腕を縛られて、拭えないためグズグズになってるが、誰も気にも留めない。

「殿下、お手伝いしましょうか」
「頼めるか」
「両足を消毒して貰えますか?」

 アレヴァーは侍女を呼び、両足を消毒するように指示を出した。護衛騎士たちはまた始まるぞとドキドキ半分、ワクワク半分となっている。

「なぜ足を消毒するのですか?」
「水虫です」
「ああ…」
「私の侍女が言うには、女性にも多いんですって」
「そうなんですか」
「ええ、しかも女性は水虫ですかって聞いても、そうであっても違うと言うんですって。皆様もお気を付けくださいね」

 待っている間に護衛騎士が話し掛けると、カナンはさも当たり前のように答えている。これから恐ろしいことをする令嬢の顔とは思えない。

「殿下、麻薬も検出されました!」

 検査薬でグラスを調べていた医者が声を上げた。

「何だと!?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初恋の相手と結ばれて幸せですか?

豆狸
恋愛
その日、学園に現れた転校生は私の婚約者の幼馴染で──初恋の相手でした。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

親切なミザリー

みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。 ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。 ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。 こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。 ‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。 ※不定期更新です。

婚約者に選んでしまってごめんなさい。おかげさまで百年の恋も冷めましたので、お別れしましょう。

ふまさ
恋愛
「いや、それはいいのです。貴族の結婚に、愛など必要ないですから。問題は、僕が、エリカに対してなんの魅力も感じられないことなんです」  はじめて語られる婚約者の本音に、エリカの中にあるなにかが、音をたてて崩れていく。 「……僕は、エリカとの将来のために、正直に、自分の気持ちを晒しただけです……僕だって、エリカのことを愛したい。その気持ちはあるんです。でも、エリカは僕に甘えてばかりで……女性としての魅力が、なにもなくて」  ──ああ。そんな風に思われていたのか。  エリカは胸中で、そっと呟いた。

【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました

紫崎 藍華
恋愛
ヘレンは婚約者のティルソンから、面白みのない女だと言われて婚約解消を告げられた。 ティルソンは幼馴染のカトリーナが本命だったのだ。 ティルソンとカトリーナの愛は真実の愛だと貴族たちは賞賛した。 貴族たちにとって二人が真実の愛を貫くのか、それとも破滅へ向かうのか、面白ければどちらでも良かった。

嘘をありがとう

七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」 おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。 「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」 妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。 「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

処理中です...