【完結】本音を言えば婚約破棄したい

説得

「彼女は別居することになり、これで夫婦関係が成立することはなくなりました。本来なら悲しむべきことでしょうけど、彼女はいずれこうなるだろうと言っていました。信じていたら上手くいったと思いますか？」

　アレヴァーは答えられなかった、彼女の友人となればグランフォード侯爵家から、ビター侯爵家に嫁いだリファ嬢だ。

　子どもが出来たと騒動になったこともあったと聞く。例に習って、結婚はしたが、上手くいかなかったのだろう。これでビター侯爵はアルームではなく、弟の方に継がせる可能性が高いだろう。

「ですが、信じることが出来ていたら、愛人は作らなかったかもしれませんよ」
「可能性はゼロではありませんが、友人もそんな状態です。私にはとてもじゃないですが結婚に意義を見出せないのです。殿下、どうか私ではなく、アランズ公爵令息に他の方と結婚して貰うように頼んではいただけませんか」

　カナンは貴族としてならば、嫡男であるルーフランを説得すべきだと思っていた。

「だが…」
「あなたは本当にそれでいいのですか」
「はい、問題であれば、どこか別のところに養子に入っても良いですし」
「ルーフランが嫌いなのか？」
「嫌い？そんなことを考えたこともありませんでした。貴族の結婚なんて、そんなものではありませんか？ニュートラ王国でもそうではないですか？ほとんど会ったこともないような相手と結婚することもありませんか？」
「…あります」

　ニュートラ王国でも自由恋愛の部分を抜けば、貴族の結婚なんてそんなものだ。親に決められて、そこから互いに折り合いを付けていく。でもペリラール王国はその前提の婚約の時点で、躓いてしまっているというわけである。

「まして元々親しいわけでもありませんし、忙しくて約束の場にも来ない、２人で思い出を作って来たわけでもなく、気付けば不貞を犯していた相手ですよ？」
「忙しかったのには私にも責任がある」

　約束の日に限って、職務で行けなくなってしまうことが重なっていた。理解してくれていると言ってたが、理解はしていたとしても、信頼されてはいなかった。

「自由恋愛、結婚の延期くらいの罰はあってもいいと思いませんか」
「でも、延期して解消となったら、あなたは良くても他の方は罰のつもりだったのに、捨てられたとなりませんか」
「人はそれぞれ考えがありますから、試し行動として行ってみた、そういった方もいるでしょう。ですが、延期にしたいと言った以上、解消になってもいいと含まれていると思いますよ。私は少なくともそうでした。これはいいきっかけになるのではないですか？不貞を犯して延期になってから、延期を不満に解消になる、自由恋愛の解消ではないけど、自由恋愛の延長線上にあるとはなりませんかね？」
「…それは」

　確かにカナンに影響されたのか、延期になった婚約もある。延期では困ると解消になった者もいる。これからはこの手段が増えるかもしれない。

　アレヴァーとカオーラは、ルーフランに結果を伝えることになった。

「説得は無理だった…」
「…そうですか」
「後継者のためにも、別の方との人生を考えてみてはいかがですか」

　ニュートラ王国の考えを持つカオーラはそれがいいとしか思えない。

「それだけは出来ません。後継者は養子でも、別の誰かに産ませた子でもいいんです。両親もそれでいいと言っています」
「えっ」
「我が国は夫婦の子ではなく、庶子や親戚からの養子ということも多い。だからこそ親子の鑑定が発展したとも言えるけどね。ビター侯爵家のアルームも愛人を連れ込んだらしい」
「まさか…」
「状況は非常に悪い」

　結局は待つしかないと言う結論に至っただけであった。