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延期
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罰が決まった日、父であるリッツソード侯爵がカナンに報告を行うと、あからさまに残念というとぼけた声を出している。
「裁かれることになった、王女もだ」
「えええ」
「本当に婚約解消が通るとは思っていなかっただろう?」
「そんなことないわ、保身に走る道もあったでしょう?」
「あれが保身か?」
「ええ、だって自分たちは痛むことはないのですから。汚いものに蓋をして、生きていくのもいいでしょう?」
「いつか蓋は壊れると言いたいのか?」
「いいえ、気付いたら開いているのですよ?」
まさに王太子殿下がそうなっていたであろう。レアリ嬢と結婚しても一生、興奮剤を盛った事実が付き纏う。渡された飲み物だって、もう飲めないかもしれない。
リファには怪我のことを言うわけにはいかないので、お見舞いとは言わなかったが、アランズ公爵とルーフランがやって来たことは伝えた。
元々アランズ公爵夫妻からは何度も謝罪の手紙を貰っており、改めて双方から謝られたが、卒業後すぐ結婚する気にはなれないというと、アランズ公爵の方から延期しようと提案を受けた。
まだカナンは1年は学園生活があるため、最低でも2年ということになった。ただし、辺境に魔獣盗伐の応援に行くという条件となり、カナンも問題ないので了承し、ルーフランだけは納得できない様子だった。
「延期?」
「そう、延期。最低2年」
「その間に何かあればってことね…ふふふ、いい傾向じゃない」
「でしょう?」
「私はあれと結婚するしかないのよね…」
再構築として、アルームは自由恋愛を止めたらしい。リファとしてはやらかして欲しいところである。
「でも最初から諦めている私たちは、ひと時の愛情すらないけど、別の楽しみを見つけることは出来るわ」
「例えば?」
「私、犬を飼おうと思っているの」
「犬!?とってもいいわね」
「夫よりも手に職と、愛するものがいれば、いい人生と呼べるのではないかしら」
「そうね、私も治癒も翻訳も頑張っているわ」
リファはカナンの影響で、ニュートラ王国のラト語を習得しており、通訳や翻訳の仕事を請け負っている。治癒で稼ぐことも出来たが、どちらも請け負い、稼げるだけ稼ぐと息巻いている。
カナンも翻訳の道に進むことも出来たが、身体を動かす方が好きだった。もし困るようなことがあれば、リファの伝手を借りようとも思っている。
「リファは小さな犬がいいんじゃない?猫でもいいけど。散歩して、お手入れして、お世話して、一緒に遊んで、一緒に寝るの」
「まあ、すごくいいわ!カナンは大きな犬?」
「私は身体強化すると、怯えられる可能性があるじゃない?前に小さな狼に逃げられたことがあるのよ…」
「それは、それはご愁傷様ね」
確かに領地での様子を見ていると、狼は本能的に逃げて行ったのかもしれない。
「だから、小さな犬はさすがに止めて置くわ。レモに相談したら、ルーでもフランとでも名付けて、躾けてみたらどうですかって言うのよ!可愛い犬にそんな名前付けて、呼ぶ方が嫌だわって」
「私もカナンに賛成。名前を呼びたくもないもの。結婚の条件に入れようかしら、凄くいいわ」
「私はもう探して貰っているの」
慰謝料が入ったとは言えないが、父から全て貰ったので、犬の費用は賄える。傷は痛かったが、可愛い犬に変わるのならば、まさに慰謝料と呼べるだろう。
「ええ!羨ましい!」
「大きくて強い子を」
「勇ましいわね!」
「ルーフランには吠え掛かるように躾けるつもりよ」
「最高じゃない」
リファも子どもを持つことはしないが、犬や猫ならば飼ってみたい。早速、どの程度お金が掛かるか調べて貰おうと思っていた。
「王太子殿下の婚約も解消にはビックリね、しかも罪を犯したって」
「そうらしいわね」
公に発表をされたわけではないが、お互い侯爵家ともなれば、自ずと耳には入って来る環境のため、リファに怪しまれることはない。
「裁かれることになった、王女もだ」
「えええ」
「本当に婚約解消が通るとは思っていなかっただろう?」
「そんなことないわ、保身に走る道もあったでしょう?」
「あれが保身か?」
「ええ、だって自分たちは痛むことはないのですから。汚いものに蓋をして、生きていくのもいいでしょう?」
「いつか蓋は壊れると言いたいのか?」
「いいえ、気付いたら開いているのですよ?」
まさに王太子殿下がそうなっていたであろう。レアリ嬢と結婚しても一生、興奮剤を盛った事実が付き纏う。渡された飲み物だって、もう飲めないかもしれない。
リファには怪我のことを言うわけにはいかないので、お見舞いとは言わなかったが、アランズ公爵とルーフランがやって来たことは伝えた。
元々アランズ公爵夫妻からは何度も謝罪の手紙を貰っており、改めて双方から謝られたが、卒業後すぐ結婚する気にはなれないというと、アランズ公爵の方から延期しようと提案を受けた。
まだカナンは1年は学園生活があるため、最低でも2年ということになった。ただし、辺境に魔獣盗伐の応援に行くという条件となり、カナンも問題ないので了承し、ルーフランだけは納得できない様子だった。
「延期?」
「そう、延期。最低2年」
「その間に何かあればってことね…ふふふ、いい傾向じゃない」
「でしょう?」
「私はあれと結婚するしかないのよね…」
再構築として、アルームは自由恋愛を止めたらしい。リファとしてはやらかして欲しいところである。
「でも最初から諦めている私たちは、ひと時の愛情すらないけど、別の楽しみを見つけることは出来るわ」
「例えば?」
「私、犬を飼おうと思っているの」
「犬!?とってもいいわね」
「夫よりも手に職と、愛するものがいれば、いい人生と呼べるのではないかしら」
「そうね、私も治癒も翻訳も頑張っているわ」
リファはカナンの影響で、ニュートラ王国のラト語を習得しており、通訳や翻訳の仕事を請け負っている。治癒で稼ぐことも出来たが、どちらも請け負い、稼げるだけ稼ぐと息巻いている。
カナンも翻訳の道に進むことも出来たが、身体を動かす方が好きだった。もし困るようなことがあれば、リファの伝手を借りようとも思っている。
「リファは小さな犬がいいんじゃない?猫でもいいけど。散歩して、お手入れして、お世話して、一緒に遊んで、一緒に寝るの」
「まあ、すごくいいわ!カナンは大きな犬?」
「私は身体強化すると、怯えられる可能性があるじゃない?前に小さな狼に逃げられたことがあるのよ…」
「それは、それはご愁傷様ね」
確かに領地での様子を見ていると、狼は本能的に逃げて行ったのかもしれない。
「だから、小さな犬はさすがに止めて置くわ。レモに相談したら、ルーでもフランとでも名付けて、躾けてみたらどうですかって言うのよ!可愛い犬にそんな名前付けて、呼ぶ方が嫌だわって」
「私もカナンに賛成。名前を呼びたくもないもの。結婚の条件に入れようかしら、凄くいいわ」
「私はもう探して貰っているの」
慰謝料が入ったとは言えないが、父から全て貰ったので、犬の費用は賄える。傷は痛かったが、可愛い犬に変わるのならば、まさに慰謝料と呼べるだろう。
「ええ!羨ましい!」
「大きくて強い子を」
「勇ましいわね!」
「ルーフランには吠え掛かるように躾けるつもりよ」
「最高じゃない」
リファも子どもを持つことはしないが、犬や猫ならば飼ってみたい。早速、どの程度お金が掛かるか調べて貰おうと思っていた。
「王太子殿下の婚約も解消にはビックリね、しかも罪を犯したって」
「そうらしいわね」
公に発表をされたわけではないが、お互い侯爵家ともなれば、自ずと耳には入って来る環境のため、リファに怪しまれることはない。
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