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解釈1
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帰ることになったマルカン伯爵とレアリ、アレヴァー様はいつもなら見送ってくれるはずが、今日はそうもいかないのが、少し寂しく感じる。
「お前は何てことをしてくれたんだ、本当に…」
「ですが、お父様も王家がどうにかしてくれるだろうと、おっしゃっていたではありませんか」
「希望でも持たぬとやってられないからだ…」
帰りの馬車で父はそう言ったまま、項垂れてしまった。
確かにこのままでは父は婚約解消の窓口をさせられることになるようだ。私の周りにも不満を持っている人も多いので、忙しくなるだろう。でも自由恋愛と言って不貞を犯す人たちにはいい罰ではないだろうか。
アレヴァー様も私もお互い一途だから、皆に羨ましがられ、嫉妬の対象であることも分かっている。だからこそ、今回はいい機会になるかもしれない。皆が一途の良さに気付けば、今よりもっと憧れてくれるはずだ。
婚約した時からアレヴァー様も自由恋愛の風潮を変えたいと言っていた、その窓口を王太子妃の父が行うことは、いいアピールにも繋がるはずだ。
「お父様に無理をさせることになるのは申し訳ないと思っております」
「我が家は終わりだな」
「そんなことはありません。不貞で悲しんでいる方は、沢山います。婚約解消が出来るいいアピールになりますでしょう」
「は?何を言っている?」
「ですから婚約解消になるのではありませんか」
「誰がだ?お前がか?」
「いえ、私ではなくお二人が。そうでしょう?」
私が婚約解消なんてあり得ない。関係を持つことになった際に、責任を取ると言ってくださっているのだから、約束が守られないことはない。
あの後で何度か殿下は私を求めて来られて、私は愛される喜びを知ってしまった。最近は我慢しているようで、何度か私からもお誘いしてみたことだってある。とても喜んで、興奮されてらして、嬉しくなってしまった。
だからリッツソード侯爵令嬢にもきっかけさえあればと思っただけなのに、こんなことになるとは思わなかった。
腕を切るなんて野蛮なことをして、身を委ねるということを知らないから仕方ないとはいえ、上手くいっていれば二人は今頃、距離を縮めていたはずなのに。
どうすれば、良かったのかしら。親しくもないから、身を委ねるのが愛される秘訣だと伝えられなかった。
「はあ…リッツソード侯爵令嬢が言っていただろう、自分のことしか考えていない証拠だと」
「ですが」
「何だ?」
「殴るなんて物騒なことを強いることはないでしょうから」
「ああ、あちらの婚約解消になれば、我が家は無事では済まない。お前が裁かれても無事では済まない」
「王太子殿下が守ってくださるはずです」
アレヴァー様はリッツソード侯爵令嬢が怪我をされたことで、責任を感じているようだけど、傷はいずれ治るのだからそんなに重く受け止めなくてもいいと思う。
真っ赤なタオルには驚いたけど、酷い状況だとはいえ、元気そうなのだから、それでいいじゃない。しかも治癒を受けていないなんて、慰謝料でも請求する気なのか、何だか浅ましく感じてしまった。
「お前は本当にリッツソード侯爵家の婚約が解消になると思っているのか?」
「それが一番よろしいではありませんか。リッツソード侯爵令嬢は不満をお持ちなのですから」
「愚かな娘だな…我々の選択肢は殴られるか、裁かれるかしかないんだよ」
「どうして?」
父は何を言っているのだろうか、リッツソード侯爵令嬢の婚約が解消になるに決まっている。陛下も婚約解消を一番に口にしてらっしゃった、父だってそう思ったはずなのに、どうしてこんなに弱気なのか分からない。
窓口になるのが余程嫌なのだろうか、確かに伯爵家より上の立場の人には意見を言うのは難しいだろう。でも娘が王太子殿下の婚約者、王太子妃になるのだから、上手く使えばいい。
「お前は何てことをしてくれたんだ、本当に…」
「ですが、お父様も王家がどうにかしてくれるだろうと、おっしゃっていたではありませんか」
「希望でも持たぬとやってられないからだ…」
帰りの馬車で父はそう言ったまま、項垂れてしまった。
確かにこのままでは父は婚約解消の窓口をさせられることになるようだ。私の周りにも不満を持っている人も多いので、忙しくなるだろう。でも自由恋愛と言って不貞を犯す人たちにはいい罰ではないだろうか。
アレヴァー様も私もお互い一途だから、皆に羨ましがられ、嫉妬の対象であることも分かっている。だからこそ、今回はいい機会になるかもしれない。皆が一途の良さに気付けば、今よりもっと憧れてくれるはずだ。
婚約した時からアレヴァー様も自由恋愛の風潮を変えたいと言っていた、その窓口を王太子妃の父が行うことは、いいアピールにも繋がるはずだ。
「お父様に無理をさせることになるのは申し訳ないと思っております」
「我が家は終わりだな」
「そんなことはありません。不貞で悲しんでいる方は、沢山います。婚約解消が出来るいいアピールになりますでしょう」
「は?何を言っている?」
「ですから婚約解消になるのではありませんか」
「誰がだ?お前がか?」
「いえ、私ではなくお二人が。そうでしょう?」
私が婚約解消なんてあり得ない。関係を持つことになった際に、責任を取ると言ってくださっているのだから、約束が守られないことはない。
あの後で何度か殿下は私を求めて来られて、私は愛される喜びを知ってしまった。最近は我慢しているようで、何度か私からもお誘いしてみたことだってある。とても喜んで、興奮されてらして、嬉しくなってしまった。
だからリッツソード侯爵令嬢にもきっかけさえあればと思っただけなのに、こんなことになるとは思わなかった。
腕を切るなんて野蛮なことをして、身を委ねるということを知らないから仕方ないとはいえ、上手くいっていれば二人は今頃、距離を縮めていたはずなのに。
どうすれば、良かったのかしら。親しくもないから、身を委ねるのが愛される秘訣だと伝えられなかった。
「はあ…リッツソード侯爵令嬢が言っていただろう、自分のことしか考えていない証拠だと」
「ですが」
「何だ?」
「殴るなんて物騒なことを強いることはないでしょうから」
「ああ、あちらの婚約解消になれば、我が家は無事では済まない。お前が裁かれても無事では済まない」
「王太子殿下が守ってくださるはずです」
アレヴァー様はリッツソード侯爵令嬢が怪我をされたことで、責任を感じているようだけど、傷はいずれ治るのだからそんなに重く受け止めなくてもいいと思う。
真っ赤なタオルには驚いたけど、酷い状況だとはいえ、元気そうなのだから、それでいいじゃない。しかも治癒を受けていないなんて、慰謝料でも請求する気なのか、何だか浅ましく感じてしまった。
「お前は本当にリッツソード侯爵家の婚約が解消になると思っているのか?」
「それが一番よろしいではありませんか。リッツソード侯爵令嬢は不満をお持ちなのですから」
「愚かな娘だな…我々の選択肢は殴られるか、裁かれるかしかないんだよ」
「どうして?」
父は何を言っているのだろうか、リッツソード侯爵令嬢の婚約が解消になるに決まっている。陛下も婚約解消を一番に口にしてらっしゃった、父だってそう思ったはずなのに、どうしてこんなに弱気なのか分からない。
窓口になるのが余程嫌なのだろうか、確かに伯爵家より上の立場の人には意見を言うのは難しいだろう。でも娘が王太子殿下の婚約者、王太子妃になるのだから、上手く使えばいい。
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