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罪の償い2

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「そしてアランズ公爵家と敵対する覚悟もしなければならない」
「ですが、不貞行為もあったようですから」
「だからいいだろうと、アランズ公爵に言うといい」

 筋肉隆々の威厳しかないアランズ公爵に一介の伯爵家が物申せるはずがない、何て説明をすればいいのか、簡単なことではない。

「有事の際、協力は得られない覚悟もして置きなさい。アランズ公爵は粘っこい性格をしている、死ぬまで恨み続けると思え」

 アランズ公爵家は王家の血筋だ、息子にも私にも厳しいが、どうやらカナンには優しいそうだ。魔獣を抱えて歩いてきた時にこんな娘が欲しかった、嫁でなくてもいい、養女に来ないかとも誘っていたそうだ。

 ルーフランとの縁談がなくなれば、おそらく養子縁組に動くと思われる。ルーフランの不貞を怒ってはいたそうだが、そこまで深刻になっていないのは嫁でなくてもいいからだ。ただし、ルーフランにとっては義妹になれば、地獄でしかないだろう。

 そしてカナンを傷付けたマルカン伯爵家を許すことはないだろう。さらに言えば、リッツソード侯爵家は勿論、下手すればモンタナ王国、リッツソード侯爵領にも、前リッツソード侯爵の部下たちや、引退した騎士たちも集まったりしていると聞く。

 しかもアレヴァーの話だと、その者たちもカナンをお嬢と呼んで、皆で可愛がっているという。

 一番はっきりしたのはカナン嬢はどうも結婚に興味がないことだ。宰相がそう言ってはいたが、強くても女性という者は結婚するものだと思っていたが、不貞を犯す夫なんて、はなから要らない、しかもアランズ公爵の養女になれば、正直結婚しなくてもいい気がする。

 辺境は強さこそ全て、魔獣と戦えることが全て、そこでの価値は計り知れない。だからこそ王都に魔獣が入って来ることなどないのだ。

 正直レアリ嬢は殴られてしまえば、いいと思っている。

「あとレアリ嬢、薬はどこで手に入れた?まだ残っているのか?」
「いえ、もうありません。バーストン姉弟に手に入れて貰いました。でも、本当に危険なものではないのです」
「全て入れたのか」
「…はい」

 クート・バーストンが、性的能力が加齢とともに低下した、中年期向けの興奮剤を2回分購入して、レアリに渡したと供述しており、購入の確認も取れている。2回分となれば、カナン嬢は相当辛かったことだろう。

「そなたの立場も今以上に良くなることはないと思っておくように」
「…あっ、はい」
「あの、万が一、1つ目となった場合は」
「お父様、私が殴られてもいいと言うの?」

 いくら言われてもレアリは立場が危ういことに気付いておらず、だが、さすがに殴られる選択肢をされることは想定していない。

「黙りなさい、怪我をされているのだぞ」
「でも腕がなくなったわけではないわ」
「ならばお前の鼻もなくなるわけではないだろう」
「…その通りだな」

 アレヴァーは今日初めて、マルカン伯爵がまともなことを言ったと思った。これで腕がなくなっていたら、こんな提案などという甘いものにはなっていない。

「アレヴァー様も鼻が曲がってもいいと言うの?」
「ならば、腕を切るか?」
「っえ」
「彼女はおそらく治癒を受けていない。全治がどれくらいか数えているのだろう」

 あの日も治癒を使える者がいたにも関わらず医師に縫って貰い、その後も受けずに帰った。今日も包帯が巻かれ、痛くとも治癒を受ける気はないのだろう。

「っな」
「リッツソード侯爵家を甘く見るな」
「甘く見てなどおりません。殴られた理由はどうするのですか。リッツソード侯爵令嬢に殴られたとなれば、問題になります」
「はあ…おそらく宰相なら、そちらが明かすならばレアリ嬢が毒を盛ったからと言うだろうな。それで罰として犯人を殴ったと」
「それでは公になってしまいます」
「レアリ嬢が言い出したのではないか、相手は明かしておいて、自分の罪は言わないのか?おかしなことを言うものだ」
「そっ、それは…」

 こういった時に人の本性が分かるというものだろう、レアリ嬢に問題はないと思っていたが、害のない顔をしている分、妙な気持ち悪さがある。

「マルカン伯爵、互いに話し合って結論を出そう」
「…はい、承知しました」
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