【完結】本音を言えば婚約破棄したい

野村にれ

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建国祭6

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「いくらメイドを手配していても、許されることではありません。あなたは私が媚薬でアランズ公爵令息と関係を持つように仕向けたのですよね?婚約者だから関係を持っても問題ないと決め付けて。これは強姦を強要したことと変わらないと思いますけど、いかがですか?」
「そんな、全く違うわ!」

 レアリは大きな声で否定した。強姦なんて私が指示するはずないじゃない。なぜそのような受け取り方になるのかが分からない。

「マルカン伯爵令嬢は、性交がお好きなようですけど、それはあなたの主観です。自由恋愛を押し付ける者と何が違うのです?」
「そんな、一緒にしないで」
「助言しておきますが、こんな大勢の場で性交の良さを伝えるのは控えた方がよろしいかと思います」
「っあ、ちっ、がうのです…そういう意味ではなくて」

 レアリは周りを見渡して真っ赤になっていたが、カナンは最近、違うばかり聞いて、もううんざりしていた。

「殿下、犯人の顔面を殴る件ですが」
「あっ、それは…」
「さすがに王太子殿下の婚約者の顔面を殴るわけには参りませんでしょう。鼻がひん曲がった王太子妃は見栄えが良くありませんよね、許可していただけるのならやらせていただきますが、いかがしますか」
「カナン、鼻だけでは済まない」

 さすがに父が助言した、周りもそうだろうと頷くしかなかった。

「何を言っているの?殴るって…」
「王太子殿下に犯人の顔を殴る許可を得ていたのです。ですので、あなたの顔を殴る権利があります」
「は?私の顔を殴るっていうの?」
「あなたが指示をしなければ、クート・バーストンも、あのメイドも罪を犯さずに済んだのですよ。もちろん私も腕を切る必要はなかった。理解できますわよね?」
「っでも、理由があったからで」
「でも犯人でしょう?主犯、犯罪者です」
「そんな、あなたがルーフラン様に抱かれればよかったことじゃない!私は良いことをしたはずなのよ…」
「ですから、それはあなた側の話です。私側の話では強姦です」
「そんなの認めないわ」

 殿下もまさか自身の姉が行った憂さ晴らしが、こんな形で返って来るとは思いもしなかっただろう。

「あなたは殿下に愛されて幸せだったのは良きことでしょう。これから国の象徴になっていくことは、この国では良き指針となったはずです。ですが、あなたの行ったことは許せません。まるで人の気持ちを無視し、都合良く、操れる人形だとでも思っているのですか!」
「そんなこと思っていないわ」
「ならばなぜこのような人権を無視したことが出来たのでしょうか」
「だから、私は良くなるようにと」

 なってもいないのに、何を信じているのか、自身を信じすぎだろう。それぞれ考え方も違えば、受け取り方も違うと思えないのだろうか。

「では、それで子が授かっていたら、その子は強姦で出来た子となるのですよ?私が愛することが出来ない、憎む可能性すらあります。その場合はあなたはその子の人生の責任を取れるのですか?」
「そんな、婚約者との子どもじゃない!愛せないなんてはずないわ」
「王太子妃になろうという者が、なぜ一面しか見ないのですか?お立場上、多方面から見なければならないのではありませんか?それともあなたはご自身こそがすべて正しいと思いなのですか?」

 こう言った時のカナンは容赦がない。今回は被害者ということもあって、かつてないほど切れ味抜群だ。

「あなたは王太子殿下の婚約者ですが、まだ結婚はしていないので、伯爵令嬢が侯爵令嬢に毒を盛った責任を取っていただきます」
「毒じゃないわ」
「毒ですよ、私の自由を奪おうとしたのですから。もし私が腕ではなく、首を切っていたら、死んでいたんですよ?」
「それはあなたが勝手に」

 愚かなことしか言わないレアリにさすがの殿下もこれ以上は無駄だと判断した。

「リッツソード侯爵令嬢、もういい…君は安静にしていてくれ」
「殿下は分かってくれますよね、私はこんなつもりじゃなかったこと、分かるでしょう?そうでしょう?」

 アレヴァーはレアリを無視し、リッツソード侯爵に声を掛けた。

「宰相、この話はまた皆で話そう。腕の怪我が心配だ」
「はい、そういたしましょう」
「皆の者も、今日のことは他言無用で頼む」
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