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建国祭4
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給仕は痛みをこらえながら、一瞬、殿下の方を見て、渋い顔をした。
「王太子殿下の婚約者であります、レアリ・マルカン様です」
「っな、なぜ…」
「やっぱりそうでしたか…」
「分かっていたのか?」
「違うといいなと思っていました。でも正直許せませんし、犯人は見付けたいですし、腕は痛かったですし、この給仕がバーストン姉弟の弟ですよ?マルカン伯爵令嬢のいとこじゃないですか」
「嘘だろ…なぜ…」
「その前に指の治癒をお願いします」
兵士の中から、一人の男性が出て来て、治癒を行い、カナンは父は治癒を使える者を必ず用意していると思っていた。
「始めは僕も姉も反対しました、でもレアリ様にこれは良いことなのだと、媚薬も身体には害がないものだと」
「どこがだ?リッツソード侯爵令嬢は、抗うために腕を切って、怪我をすることになった」
「っえ、申し訳ありません」
縛られているので、首だけを動かして、頭を下げている。
「彼女は何と言ったのだ?」
「良いことなどと言いながら、実は嫌ってらして、醜聞にさせたいのかと思いました。僕もそんなことは出来ないと言ったんです」
「ならば、なぜそのような…」
「でもレアリ様は自分を信じられないのかと。バレても問題にはならない、一応2人は似ているから、リッツソード侯爵令嬢に会う時は姉の姿にして、その後に僕に戻れば分からないと言われて、仕方なく指示に従いました」
アレヴァーはなぜ自身も酷い目に遭ったというのに、カナンを嫌っていたというのか、接点もなかったはずなのに、どうしてなのか分からなかった。
「借金があるの?援助でも受けてるの?」
「マルカン伯爵家から援助を受けています。なので、機嫌を損ねたくなくて…本当に申し訳ございませんでした」
「私を介抱したメイドは知り合いですか?」
「メイド?いえ、そのようなことは聞いていません。私はレアリ様の指示したシャンパンをリッツソード侯爵令嬢に渡しただけです」
メイドのことは嘘ではないことが分かり、給仕は聴取のために連れて行かれ、殿下は今日は王宮に泊まるために、部屋に戻らせたレアリを従者に呼びに行かせた。
「メイドもおそらく、関係者でしょうね。マルカン伯爵令嬢は、私を傷物にしたかったのかしら?確かに叶ってはいるけど」
「なぜ…」
「殿下、メイドは事実ですけど、給仕も見付かっていないことにしてください。あと私共はしばらく隠れております。私の勘が正しければ、ルーフランも一緒に隠れましょう。残りの皆様であぶってください」
カナンはベッドメイクを乱し、ルーフランを引っ張り、レモとパドラと息の合った様子で、そそっと物置部屋に入っていった。
「王太子殿下、王太子殿下の婚約者と扱うべきですか、それともマルカン伯爵令嬢として扱うべきですか」
リッツソード侯爵は父ではなく、宰相の顔で、王太子殿下に問いかけている。
「婚約者ではあるが、まだ伯爵令嬢だ」
「承知しました。伯爵令嬢が侯爵令嬢に興奮剤を盛るように指示したという認識でよろしいですね?」
「…ああ、それが事実なら、私は理由が知りたい」
お連れしましたという声が聞こえ、アレヴァーは顔を整え、入って来たレアリは驚いたような顔をした。
「え、皆様、お揃いで何かあったのですか」
「薬を盛られる事件が発生したのだ。それで調べている」
「それは大変でしたね、犯人は」
「いや、まだ犯人が見付かっていないんだ。それで君に何も告げていなかったから、心配しているだろうと思って、呼んで貰ったんだ。私はここを離れられなくてね、すまないね」
アレヴァーはレアリが室内を見渡しているのに気付いた。
「いえ、被害に遭われた方はどちらですか、私もお手伝いします」
「助かるよ、怪我が酷くてね…そこのバスルームに、血まみれのタオルがあるだろう?酷いと思わないか?」
「っひ、ルーフラン様はどちらですか」
「王太子殿下の婚約者であります、レアリ・マルカン様です」
「っな、なぜ…」
「やっぱりそうでしたか…」
「分かっていたのか?」
「違うといいなと思っていました。でも正直許せませんし、犯人は見付けたいですし、腕は痛かったですし、この給仕がバーストン姉弟の弟ですよ?マルカン伯爵令嬢のいとこじゃないですか」
「嘘だろ…なぜ…」
「その前に指の治癒をお願いします」
兵士の中から、一人の男性が出て来て、治癒を行い、カナンは父は治癒を使える者を必ず用意していると思っていた。
「始めは僕も姉も反対しました、でもレアリ様にこれは良いことなのだと、媚薬も身体には害がないものだと」
「どこがだ?リッツソード侯爵令嬢は、抗うために腕を切って、怪我をすることになった」
「っえ、申し訳ありません」
縛られているので、首だけを動かして、頭を下げている。
「彼女は何と言ったのだ?」
「良いことなどと言いながら、実は嫌ってらして、醜聞にさせたいのかと思いました。僕もそんなことは出来ないと言ったんです」
「ならば、なぜそのような…」
「でもレアリ様は自分を信じられないのかと。バレても問題にはならない、一応2人は似ているから、リッツソード侯爵令嬢に会う時は姉の姿にして、その後に僕に戻れば分からないと言われて、仕方なく指示に従いました」
アレヴァーはなぜ自身も酷い目に遭ったというのに、カナンを嫌っていたというのか、接点もなかったはずなのに、どうしてなのか分からなかった。
「借金があるの?援助でも受けてるの?」
「マルカン伯爵家から援助を受けています。なので、機嫌を損ねたくなくて…本当に申し訳ございませんでした」
「私を介抱したメイドは知り合いですか?」
「メイド?いえ、そのようなことは聞いていません。私はレアリ様の指示したシャンパンをリッツソード侯爵令嬢に渡しただけです」
メイドのことは嘘ではないことが分かり、給仕は聴取のために連れて行かれ、殿下は今日は王宮に泊まるために、部屋に戻らせたレアリを従者に呼びに行かせた。
「メイドもおそらく、関係者でしょうね。マルカン伯爵令嬢は、私を傷物にしたかったのかしら?確かに叶ってはいるけど」
「なぜ…」
「殿下、メイドは事実ですけど、給仕も見付かっていないことにしてください。あと私共はしばらく隠れております。私の勘が正しければ、ルーフランも一緒に隠れましょう。残りの皆様であぶってください」
カナンはベッドメイクを乱し、ルーフランを引っ張り、レモとパドラと息の合った様子で、そそっと物置部屋に入っていった。
「王太子殿下、王太子殿下の婚約者と扱うべきですか、それともマルカン伯爵令嬢として扱うべきですか」
リッツソード侯爵は父ではなく、宰相の顔で、王太子殿下に問いかけている。
「婚約者ではあるが、まだ伯爵令嬢だ」
「承知しました。伯爵令嬢が侯爵令嬢に興奮剤を盛るように指示したという認識でよろしいですね?」
「…ああ、それが事実なら、私は理由が知りたい」
お連れしましたという声が聞こえ、アレヴァーは顔を整え、入って来たレアリは驚いたような顔をした。
「え、皆様、お揃いで何かあったのですか」
「薬を盛られる事件が発生したのだ。それで調べている」
「それは大変でしたね、犯人は」
「いや、まだ犯人が見付かっていないんだ。それで君に何も告げていなかったから、心配しているだろうと思って、呼んで貰ったんだ。私はここを離れられなくてね、すまないね」
アレヴァーはレアリが室内を見渡しているのに気付いた。
「いえ、被害に遭われた方はどちらですか、私もお手伝いします」
「助かるよ、怪我が酷くてね…そこのバスルームに、血まみれのタオルがあるだろう?酷いと思わないか?」
「っひ、ルーフラン様はどちらですか」
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