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いいわけ
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付いて来て欲しいところがあると連れて行かれたのは、王宮の王太子殿下の執務室であった。
「王太子殿下にご挨拶申し上げます」
「リッツソード侯爵令嬢、久しぶりだな。楽にしてくれ」
「は!失礼いたします」
お茶の準備がされて、3人だけが残された。カナンはアレヴァー殿下とは数えるほどしか会ったことがない。
「どうしてここへと思っていると思うが、ルーフランが口下手なのもあるが、私にも責任があるゆえ、もし上手く説明が出来なかったら、君と一緒に来るように言ってあったのだ」
「さようでございましたか」
「婚約を解消したい原因は自由恋愛のことだな?」
「はい、概ねはそうです」
「実は他言無用でお願いしたいのだが、きっかけは私の姉だった」
王女殿下は、現在、他国に側妃として嫁いでいる。
「1年半前くらいになるだろうか。当時、姉上は婚約が白紙になって、荒れており、憂さ晴らしで、ルーフランと私の婚約者レアに媚薬を盛ったのだ」
「う」
カナンはうわと言いたいところを、どうにか抑えたが漏れてしまった。
「いや、2人がどうこうなったわけではない」
「さようでしたか」
さすがに憂さ晴らしの度が過ぎていると思ったが、そうではなかったらしい。
「関係を持たねば収まらないなどというバカげたものだった。姉上はルーフランと関係を持ちたかったようだが、そんなことはさせられない。秘密裏に娼婦を呼んで、相手をさせた。レアは私が。それで姉上は側妃として輿入れすることになったんだ」
王女殿下の結婚は急に決まり、慌ただしく輿入れされたのは憶えている。
「その前からルーフランは体調が悪かった。疲れているのに眠れず、食事も摂れていなかった。無理をさせているせいだと思っていたが、令嬢にこんな話をするのもどうかと思うが、その媚薬のおかげとは言い難いが、精を出すことで体調がよくなることが分かった。魔素が溜まってしまっていたようで、体調のために、そういった関係を持つように言ったのは私なのだ…すまなかった」
「はい」
「今は改善されてそのようなことはない、一時的なことだったらしい。そうだな、ルーフラン」
「はい、説明していただき、ありがとうございます」
「だから自由恋愛を楽しんでいたわけではないのだ」
ルーフランはさすがに罰が悪そうな表情をしているが、殿下は分かってくれというような表情だ。
「私に言いに来た令嬢がおりますが、令嬢には手を付けていないとおっしゃるわけですね?」
「あっ、いや、それは」
「何人か関係を持った令嬢はいる…」
「そうでしょうね、証拠は念のため集めておりますから」
「証拠…」
この国で不貞の証拠は集めやすい、だが同時に婚約解消の手札にはならない。
「この国では意味をなさないとおっしゃりたいのでしょうけど、駆け引きには使えますから」
「宰相の娘だものな…」
目の前のカナンの猫目と、宰相の猫目がぴったりと重ねった瞬間であった。父からも宰相が娘が捲し立てる様が自身に似ていて、ゾッとしたと聞いていた。
「だが、もう半年以上、そのようなことはない」
「あなたが私に何と言って欲しいのかは分かっておりますが、言いません。思っていませんから」
「正直な気持ちで構わない」
「では、だから何ですか?」
「えっ」
「分からないのは無理もないが、気持ちを察してあげることは出来るのではないか」
「ええ、ですが異能を使わなければいいではありませんか。私だったら、そんなことになるくらいなら、使いません」
「だが、私は国を、辺境を守らなければならない」
「私を頼ればいい話ではありませんか?」
「あ、それは…」
ルーフランは急にカナンを見つめて、もじもじしている。
「ああ、関係を持つ方じゃないですよ」
「そ、そうか」
「私より適任者います?一応、婚約者だったのでしょう?格好が付かないからですか?不貞を犯すことの方が格好悪いと思います」
ルーフラン、これは駄目だ、口下手のお前に敵うはずがない。理屈じゃない、気持ちの問題だなどということが通じる質ではない。
「カナンは強くたって女性だ」
「だから?女性は守られるものだから?女性騎士への侮辱ですわよね?」
「君は相当、強かったんだな…」
アレヴァーはカナンが苦言を呈すこともなかったことから、宰相に言われているのか、耐えているのかと思っていたが、放っていただけだったのだろう。
「王太子殿下にご挨拶申し上げます」
「リッツソード侯爵令嬢、久しぶりだな。楽にしてくれ」
「は!失礼いたします」
お茶の準備がされて、3人だけが残された。カナンはアレヴァー殿下とは数えるほどしか会ったことがない。
「どうしてここへと思っていると思うが、ルーフランが口下手なのもあるが、私にも責任があるゆえ、もし上手く説明が出来なかったら、君と一緒に来るように言ってあったのだ」
「さようでございましたか」
「婚約を解消したい原因は自由恋愛のことだな?」
「はい、概ねはそうです」
「実は他言無用でお願いしたいのだが、きっかけは私の姉だった」
王女殿下は、現在、他国に側妃として嫁いでいる。
「1年半前くらいになるだろうか。当時、姉上は婚約が白紙になって、荒れており、憂さ晴らしで、ルーフランと私の婚約者レアに媚薬を盛ったのだ」
「う」
カナンはうわと言いたいところを、どうにか抑えたが漏れてしまった。
「いや、2人がどうこうなったわけではない」
「さようでしたか」
さすがに憂さ晴らしの度が過ぎていると思ったが、そうではなかったらしい。
「関係を持たねば収まらないなどというバカげたものだった。姉上はルーフランと関係を持ちたかったようだが、そんなことはさせられない。秘密裏に娼婦を呼んで、相手をさせた。レアは私が。それで姉上は側妃として輿入れすることになったんだ」
王女殿下の結婚は急に決まり、慌ただしく輿入れされたのは憶えている。
「その前からルーフランは体調が悪かった。疲れているのに眠れず、食事も摂れていなかった。無理をさせているせいだと思っていたが、令嬢にこんな話をするのもどうかと思うが、その媚薬のおかげとは言い難いが、精を出すことで体調がよくなることが分かった。魔素が溜まってしまっていたようで、体調のために、そういった関係を持つように言ったのは私なのだ…すまなかった」
「はい」
「今は改善されてそのようなことはない、一時的なことだったらしい。そうだな、ルーフラン」
「はい、説明していただき、ありがとうございます」
「だから自由恋愛を楽しんでいたわけではないのだ」
ルーフランはさすがに罰が悪そうな表情をしているが、殿下は分かってくれというような表情だ。
「私に言いに来た令嬢がおりますが、令嬢には手を付けていないとおっしゃるわけですね?」
「あっ、いや、それは」
「何人か関係を持った令嬢はいる…」
「そうでしょうね、証拠は念のため集めておりますから」
「証拠…」
この国で不貞の証拠は集めやすい、だが同時に婚約解消の手札にはならない。
「この国では意味をなさないとおっしゃりたいのでしょうけど、駆け引きには使えますから」
「宰相の娘だものな…」
目の前のカナンの猫目と、宰相の猫目がぴったりと重ねった瞬間であった。父からも宰相が娘が捲し立てる様が自身に似ていて、ゾッとしたと聞いていた。
「だが、もう半年以上、そのようなことはない」
「あなたが私に何と言って欲しいのかは分かっておりますが、言いません。思っていませんから」
「正直な気持ちで構わない」
「では、だから何ですか?」
「えっ」
「分からないのは無理もないが、気持ちを察してあげることは出来るのではないか」
「ええ、ですが異能を使わなければいいではありませんか。私だったら、そんなことになるくらいなら、使いません」
「だが、私は国を、辺境を守らなければならない」
「私を頼ればいい話ではありませんか?」
「あ、それは…」
ルーフランは急にカナンを見つめて、もじもじしている。
「ああ、関係を持つ方じゃないですよ」
「そ、そうか」
「私より適任者います?一応、婚約者だったのでしょう?格好が付かないからですか?不貞を犯すことの方が格好悪いと思います」
ルーフラン、これは駄目だ、口下手のお前に敵うはずがない。理屈じゃない、気持ちの問題だなどということが通じる質ではない。
「カナンは強くたって女性だ」
「だから?女性は守られるものだから?女性騎士への侮辱ですわよね?」
「君は相当、強かったんだな…」
アレヴァーはカナンが苦言を呈すこともなかったことから、宰相に言われているのか、耐えているのかと思っていたが、放っていただけだったのだろう。
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