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久し振りの婚約者2
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「本当にこのクッキー美味しいけど、モソモソしているわね」
「はい、このモソモソするところが売りだそうです。お茶も飲んでくださいね、のどに詰まります」
「っんん、ありがとう」
案の定、のどに詰まらせたカナンはレモの淹れてくれたお茶を慌てて飲んだ。
「今日は声を出してしまいましたね」
「思わず出ちゃったわ。一応、意思表示はしておいて、損はないと思ってね」
「ええ、ここまで何も言わなかったのですから、言って良かったと思います。しかし、絶対に蚊の鳴くような声を指摘しませんよね」
「ね?おかしいと思わないのかしら?思わないのでしょうね」
「それこそ、のどの調子が悪いと思われているのでは?」
「あり得るわね、私の苦労が…父様に伝わるでしょうけど、まあいいわ」
残されたクッキーでティータイムを過ごすカナンとは真逆のルーフランは、アレヴァー王太子殿下の元へ戻った。
「早かったな、どうだった?」
「褒美に婚約を解消したいと」
「っな、そう言われたのか」
「はい…」
「初めて言われたのか」
「はい、今日はのどの調子も良かったようで、しっかり声も聞こえましたが、それが婚約解消でした」
アレヴァーはルーフランの婚約者であるカナンが、プロプラン侯爵家のことで尽力したことを知り、ルーフランを忙しくさせて、なかなか会えないことから、何か褒美でも思って、今日送り出したのだが、まさか婚約解消とは思わなかった。
ルーフランはカナンを好いているのだ、見た目も好みではあったそうだが、それ以上に彼女の異能に、いや異能を使う彼女に惚れてしまったそうだ。
国としてもいい縁組ではある。宰相も理解しているだろうから、解消をさせようなどの動きはなかったはずだ。ただ、兄のリガロから自由恋愛を嫌悪していることを最近、聞いたのだ。
「何と言って帰って来たんだ?」
「説得するのかと言われたので、どう説得するべきか、どこまで話していいか分からず、また話をさせて欲しいと言って帰ってきました」
「そうか、彼女にはきちんと話をすべきだろうな。そろそろ結婚の話も出てくる時期だろう?」
「はい、ああ…」
「早めに話をした方がいい、後回しにしてもいいことはない」
「上手く話せる自信がありません」
ルーフランは口下手である、気の利いたことも言えなければ、余計なことを言ってしまうこともある。だから、普段はあまり話さない。
「もう一度話して、必要なら私も間に入ろう。私の責任でもあるからな」
カナンの元にまたルーフランから文が届き、今度は公爵邸に行くことになってしまった。あれだけ来なかったくせに、どういう変化なのだろうか。
「ごきげんよう。今日は普通に話しますね」
「のどの調子はいいのか」
「…ええ」
カナンはルーフランをふざけんなよという目で見たが、ルーフランは気付かない。
「それは良かった、この前の話の続きをしたいと思って」
「ええ、前向きに考えていただけましたか」
「前向き…」
カナンにとって前向きな話なのだと思うと、ルーフランは傷付いた。
「ええ、前向きな選択です。いかがでしょうか」
「考え直して貰えないだろうか」
「同じ思想を持つ方とご一緒になられる方が、お互いのためではありませんか。気分良く過ごせるではありませんか」
「私とでは気分が悪いと言うのか!」
無口で、冷たい印象のあるルーフランが声を荒げれれば、普通なら怖いと感じるかもしれないが、カナンに効果はない。
「逆だったらどうですか?あなたにとって私は都合のいい相手でも、私にとって都合がいいとは言えないと思いませんか?」
「自由恋愛のことを言っているんだよな?」
「はい、そうですが」
「違う、私は自由恋愛をしたいわけじゃない」
「はい?ああ、本気だというわけですか、それならば余計に解消すればいいではありませんか、情熱的な恋愛をしてくださいませ」
「違う、違うんだ…」
違うという姿がこの前のメディエドと重なって、滑稽でしかなかった。
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本日もお読みいただきありがとうございます。
ストックが切れましたので、1日1話に戻ります。
申し訳ありません。
よろしくお願いいたします。
「はい、このモソモソするところが売りだそうです。お茶も飲んでくださいね、のどに詰まります」
「っんん、ありがとう」
案の定、のどに詰まらせたカナンはレモの淹れてくれたお茶を慌てて飲んだ。
「今日は声を出してしまいましたね」
「思わず出ちゃったわ。一応、意思表示はしておいて、損はないと思ってね」
「ええ、ここまで何も言わなかったのですから、言って良かったと思います。しかし、絶対に蚊の鳴くような声を指摘しませんよね」
「ね?おかしいと思わないのかしら?思わないのでしょうね」
「それこそ、のどの調子が悪いと思われているのでは?」
「あり得るわね、私の苦労が…父様に伝わるでしょうけど、まあいいわ」
残されたクッキーでティータイムを過ごすカナンとは真逆のルーフランは、アレヴァー王太子殿下の元へ戻った。
「早かったな、どうだった?」
「褒美に婚約を解消したいと」
「っな、そう言われたのか」
「はい…」
「初めて言われたのか」
「はい、今日はのどの調子も良かったようで、しっかり声も聞こえましたが、それが婚約解消でした」
アレヴァーはルーフランの婚約者であるカナンが、プロプラン侯爵家のことで尽力したことを知り、ルーフランを忙しくさせて、なかなか会えないことから、何か褒美でも思って、今日送り出したのだが、まさか婚約解消とは思わなかった。
ルーフランはカナンを好いているのだ、見た目も好みではあったそうだが、それ以上に彼女の異能に、いや異能を使う彼女に惚れてしまったそうだ。
国としてもいい縁組ではある。宰相も理解しているだろうから、解消をさせようなどの動きはなかったはずだ。ただ、兄のリガロから自由恋愛を嫌悪していることを最近、聞いたのだ。
「何と言って帰って来たんだ?」
「説得するのかと言われたので、どう説得するべきか、どこまで話していいか分からず、また話をさせて欲しいと言って帰ってきました」
「そうか、彼女にはきちんと話をすべきだろうな。そろそろ結婚の話も出てくる時期だろう?」
「はい、ああ…」
「早めに話をした方がいい、後回しにしてもいいことはない」
「上手く話せる自信がありません」
ルーフランは口下手である、気の利いたことも言えなければ、余計なことを言ってしまうこともある。だから、普段はあまり話さない。
「もう一度話して、必要なら私も間に入ろう。私の責任でもあるからな」
カナンの元にまたルーフランから文が届き、今度は公爵邸に行くことになってしまった。あれだけ来なかったくせに、どういう変化なのだろうか。
「ごきげんよう。今日は普通に話しますね」
「のどの調子はいいのか」
「…ええ」
カナンはルーフランをふざけんなよという目で見たが、ルーフランは気付かない。
「それは良かった、この前の話の続きをしたいと思って」
「ええ、前向きに考えていただけましたか」
「前向き…」
カナンにとって前向きな話なのだと思うと、ルーフランは傷付いた。
「ええ、前向きな選択です。いかがでしょうか」
「考え直して貰えないだろうか」
「同じ思想を持つ方とご一緒になられる方が、お互いのためではありませんか。気分良く過ごせるではありませんか」
「私とでは気分が悪いと言うのか!」
無口で、冷たい印象のあるルーフランが声を荒げれれば、普通なら怖いと感じるかもしれないが、カナンに効果はない。
「逆だったらどうですか?あなたにとって私は都合のいい相手でも、私にとって都合がいいとは言えないと思いませんか?」
「自由恋愛のことを言っているんだよな?」
「はい、そうですが」
「違う、私は自由恋愛をしたいわけじゃない」
「はい?ああ、本気だというわけですか、それならば余計に解消すればいいではありませんか、情熱的な恋愛をしてくださいませ」
「違う、違うんだ…」
違うという姿がこの前のメディエドと重なって、滑稽でしかなかった。
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