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帰国
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ジョセラ・シーバ公爵令息一行はニュートラ王国へ帰国する準備をしていた。ルビーとのことは、ショックではあったが、会う機会もほとんどないまま、よく知り合う前に解消になったという気持ちが強かった。
「ジョセラ様、本当に違うのです。話を聞いてください」
「話は戻ってから聞く」
メディエドは行きは、常にジョセラの側にいたが、帰りは側に寄ることも出来なかった。どうにか近付こうとするも、ジョセラにいい加減にしろと怒鳴られてからは、ようやく大人しくなった。
ニュートラ王国、公爵邸ではシーバ公爵が応接室で待ち構えていた。
「どうだった?」
「護衛騎士の方はハニートラップだったそうです」
「何?」
「ルビー嬢の護衛騎士を仕向けたのはメディエドです。護衛騎士本人も認めており、妹の治療費に困っていたそうです。何人か残して来ましたから、事実かどうか確認が取れるでしょう。慰謝料は受け取りましたが、それ以上は望みませんでした」
「メディエド、何てことをしたんだ!」
「メディエドは、私の妻の座を狙っていたそうです」
「は?たかが子爵令嬢が?」
「違います、事実ではないのです」
メディエドは皆から信じられないという視線を向けられても、まだ諦めていないようで、首を振っている。
「まだ認めないのか、チョアスが私に届かないようにしていたようだが、ルビー嬢とは不本意な婚約で、周りに私と親密な素振りもしていたそうだ。馬鹿馬鹿しい」
「何だと!チョアス、事実か」
「はい、申し訳ございません。メディエド様から」
「メディエド様だと?年上なのは分かるが、君は伯爵令息だ、なぜそのような呼び方をする?」
せめて、メディエド嬢くらいであるべきだろう。
「それは、私がいずれ妻になるから、今から慣れて置きなさいと初めに言われて」
「メディエドっ!!妻が折角、雇ってやったというのに。なぜお前が妻になれる?誰かにそう言われたのか?お前の母親か?」
メディエドは妻の妹の娘だった。侯爵令嬢でありながら、引っ込み思案で、器量があまり良くなかったため、あまり社交の必要のない裕福な子爵家に嫁いでいた。妹から仕事先を頼まれて、メイドとして雇ったが、秘書が急遽退職することになって、周りに女性を置くのはと思ったが、婚約者は他国で、メディエドはジョセラより3つも年上であったからことから、抜擢したのだ。
秘書の仕事はきちんとしていたことから、問題ないと思っていたが、まさか妻になれるなどと愚かなことを思っていたとは。
「ち、違います」
「じゃあ、何だ」
「周りにお似合いだと言われて…」
「周りって誰だ?」
「メイド達に…」
「お前はメイドの言ったことを鵜呑みにするのか!愚か者が」
メイドの軽口を鵜呑みにする馬鹿がどこにいる。
「だって、私の方がペリラール王国の令嬢なんかより相応しいです、子爵令嬢なだけじゃないですか。何がいけないのですか」
「じゃあ、君は何をした?家柄以上に何か勝るようなことがあるのか?」
「秘書として、お側でお支えしたではありませんか」
「それは仕事でしょう?給料を貰っているのですから、当たり前ではないのか?」
「体調を気遣ったり…」
「それは執事もチョアスだってしてくれます。他には?」
「そ、それは…」
「よくもそんな素振りが出来たものだ。解雇だ、すぐ出て行ってくれ」
「待ってください」
「君は昨日から違う、待ってばかりだ。迷惑を掛ける者は要らない」
メディエドは泣き叫びながら、連れて行かれた。
「上手くいかず申し訳ございませんでした」
「別に金が欲しかったわけでもない」
「ですが愛人などと」
「治癒が使えるからだけではないぞ、あの国は不貞など大したことないと思っていることが不快なんだよ」
ニュートラ王国で治癒を使える者は少ない、魅力的ではあった。まさか大人しそうなルビー嬢も、不貞を犯すなどとは思いもしなかった。
「宰相の娘がいたのですが、彼女は我が国のことをよく分かっており、メディエドを見透かしたようでした」
「さすが宰相というべきか、喧嘩をしたいわけではない。不快だが、仕方ないな」
「ジョセラ様、本当に違うのです。話を聞いてください」
「話は戻ってから聞く」
メディエドは行きは、常にジョセラの側にいたが、帰りは側に寄ることも出来なかった。どうにか近付こうとするも、ジョセラにいい加減にしろと怒鳴られてからは、ようやく大人しくなった。
ニュートラ王国、公爵邸ではシーバ公爵が応接室で待ち構えていた。
「どうだった?」
「護衛騎士の方はハニートラップだったそうです」
「何?」
「ルビー嬢の護衛騎士を仕向けたのはメディエドです。護衛騎士本人も認めており、妹の治療費に困っていたそうです。何人か残して来ましたから、事実かどうか確認が取れるでしょう。慰謝料は受け取りましたが、それ以上は望みませんでした」
「メディエド、何てことをしたんだ!」
「メディエドは、私の妻の座を狙っていたそうです」
「は?たかが子爵令嬢が?」
「違います、事実ではないのです」
メディエドは皆から信じられないという視線を向けられても、まだ諦めていないようで、首を振っている。
「まだ認めないのか、チョアスが私に届かないようにしていたようだが、ルビー嬢とは不本意な婚約で、周りに私と親密な素振りもしていたそうだ。馬鹿馬鹿しい」
「何だと!チョアス、事実か」
「はい、申し訳ございません。メディエド様から」
「メディエド様だと?年上なのは分かるが、君は伯爵令息だ、なぜそのような呼び方をする?」
せめて、メディエド嬢くらいであるべきだろう。
「それは、私がいずれ妻になるから、今から慣れて置きなさいと初めに言われて」
「メディエドっ!!妻が折角、雇ってやったというのに。なぜお前が妻になれる?誰かにそう言われたのか?お前の母親か?」
メディエドは妻の妹の娘だった。侯爵令嬢でありながら、引っ込み思案で、器量があまり良くなかったため、あまり社交の必要のない裕福な子爵家に嫁いでいた。妹から仕事先を頼まれて、メイドとして雇ったが、秘書が急遽退職することになって、周りに女性を置くのはと思ったが、婚約者は他国で、メディエドはジョセラより3つも年上であったからことから、抜擢したのだ。
秘書の仕事はきちんとしていたことから、問題ないと思っていたが、まさか妻になれるなどと愚かなことを思っていたとは。
「ち、違います」
「じゃあ、何だ」
「周りにお似合いだと言われて…」
「周りって誰だ?」
「メイド達に…」
「お前はメイドの言ったことを鵜呑みにするのか!愚か者が」
メイドの軽口を鵜呑みにする馬鹿がどこにいる。
「だって、私の方がペリラール王国の令嬢なんかより相応しいです、子爵令嬢なだけじゃないですか。何がいけないのですか」
「じゃあ、君は何をした?家柄以上に何か勝るようなことがあるのか?」
「秘書として、お側でお支えしたではありませんか」
「それは仕事でしょう?給料を貰っているのですから、当たり前ではないのか?」
「体調を気遣ったり…」
「それは執事もチョアスだってしてくれます。他には?」
「そ、それは…」
「よくもそんな素振りが出来たものだ。解雇だ、すぐ出て行ってくれ」
「待ってください」
「君は昨日から違う、待ってばかりだ。迷惑を掛ける者は要らない」
メディエドは泣き叫びながら、連れて行かれた。
「上手くいかず申し訳ございませんでした」
「別に金が欲しかったわけでもない」
「ですが愛人などと」
「治癒が使えるからだけではないぞ、あの国は不貞など大したことないと思っていることが不快なんだよ」
ニュートラ王国で治癒を使える者は少ない、魅力的ではあった。まさか大人しそうなルビー嬢も、不貞を犯すなどとは思いもしなかった。
「宰相の娘がいたのですが、彼女は我が国のことをよく分かっており、メディエドを見透かしたようでした」
「さすが宰相というべきか、喧嘩をしたいわけではない。不快だが、仕方ないな」
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