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久し振りの婚約者1
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トースはプロプラン侯爵が、ルビーの責任でもあると、解雇以上の問題にはしなかった。お金は返そうとしたが、シーバ公爵家は護衛騎士の発言が嘘ではなかったことから、メディエドのお金なので、返さなくていいと言われ、妹と近くに病院のある地域に引っ越して行った。
メディエドは事態を知った父親に怒鳴り散らされ、二度と公爵家と関わらないと約束させ、母親と子爵家の領地に去って行った。
ペリラール王家、プロプラン侯爵家にシーバ公爵家から不貞を重く受け止め、愛人も鉱山も欲を出したわけではなく、貴族として責任を取らせたかった気持ちが大きかったと伝えられた。
ルビーは領地の修道院に送られて、厳しい生活を送らせてから、領地で両親が面倒を看ることになった。ペリラール王国では異例のことである。
「これで少しは変わるといいのだけど」
「よっ、カナン様!」
煽てているのはリファである、ルビーのことは今一番の話題であるが、当人たちは王都に既にいない。
「偶然よ、レモが見付けなかったら気付かなかったし」
「それでも、やっぱり強運よね…」
「でも強運なら婚約解消出来てもいいと思わない?はあ…」
「それはそうね、でも一発逆転ってことはあるかもしれないじゃない…で、なぜ溜息なの?」
「明日、婚約者が邸に来るのよ。発声練習しておかなくちゃ」
ルーフランから明日、邸に行くという文が届き、断ろうとしたのを父に阻止されてしまったのだ。
凄まじく憂鬱に目を覚まし、レモに準備を整えて貰っていた。
「来ない可能性はどれくらいかしらね」
「いつもなら、100と言いたいところですが、おそらくこの前の件がお耳に入ったのではないでしょうか」
「やっぱりそうよね。はあ…10分、いや5分くらいで帰ってくれるかしら」
「なるべく、のどに詰まりそうな菓子を用意しておきます」
「ありがとう」
珍しく、いや、いつ振りか、時間ぴったりにルーフランはやって来た。
「ああ、時間を取って貰って済まない。プロプラン侯爵家の話を聞いて、慌てて会いに来たのだ」
ルーフランは目を細めてにっこりと笑っており、カナンは嘘くさい笑顔に鳥肌が立ちそうだった。
「王太子殿下も感謝しておられて、感謝を伝えて欲しいと言われてきたのだ」
机の上にはモソモソした粉っぽいクッキーが並べられており、クッキーを食べるか、早く帰って欲しいと心から思っていた。
「リガロ殿から偶然、護衛騎士を見付けられたと聞いたのだが」
「強運だと聞いて、納得したよ。凄いな。あと、ラート語が出来るとは知らなかった、皆が素晴らしかったと言っておった」
何だか今日は妙に話して来る、喉が辛いので、さっさと帰って欲しい。
「王太子殿下が何か褒美をと言ってらっしゃるのだが、何かあるだろうか」
「っえ」
思わず、声が大きくなってしまったが、願いが叶うというのか。そろそろ、言ってみるだけも言ってみた方がいいだろう。
「何かあるだろうか、遠慮なく言って欲しい」
「あなたと私の婚約を解消してください」
「っな、なぜだ」
「なぜ?自分の行ってらっしゃることが、この国では許されても、私には許せることではないからですが?」
「待ってくれ」
「褒美、いただけるんでしょう?くださいませ」
「婚約解消などしない」
「では、婚約破棄」
「破棄もしない」
「それは…別のものでは駄目か」
なぜか目の前のルーフランは絶望的な表情をしており、この男も何も言わないことから、代表だと思っていたのだろうと、蔑みたくなるだけであった。
「だが、カナンは婚約を解消したいと思っているのだろう。このまま帰るわけには」
「今日は帰る、だが、また話をさせて欲しい」
ルーフランは時折、振り返りながら、重い足取りで帰って行った。
メディエドは事態を知った父親に怒鳴り散らされ、二度と公爵家と関わらないと約束させ、母親と子爵家の領地に去って行った。
ペリラール王家、プロプラン侯爵家にシーバ公爵家から不貞を重く受け止め、愛人も鉱山も欲を出したわけではなく、貴族として責任を取らせたかった気持ちが大きかったと伝えられた。
ルビーは領地の修道院に送られて、厳しい生活を送らせてから、領地で両親が面倒を看ることになった。ペリラール王国では異例のことである。
「これで少しは変わるといいのだけど」
「よっ、カナン様!」
煽てているのはリファである、ルビーのことは今一番の話題であるが、当人たちは王都に既にいない。
「偶然よ、レモが見付けなかったら気付かなかったし」
「それでも、やっぱり強運よね…」
「でも強運なら婚約解消出来てもいいと思わない?はあ…」
「それはそうね、でも一発逆転ってことはあるかもしれないじゃない…で、なぜ溜息なの?」
「明日、婚約者が邸に来るのよ。発声練習しておかなくちゃ」
ルーフランから明日、邸に行くという文が届き、断ろうとしたのを父に阻止されてしまったのだ。
凄まじく憂鬱に目を覚まし、レモに準備を整えて貰っていた。
「来ない可能性はどれくらいかしらね」
「いつもなら、100と言いたいところですが、おそらくこの前の件がお耳に入ったのではないでしょうか」
「やっぱりそうよね。はあ…10分、いや5分くらいで帰ってくれるかしら」
「なるべく、のどに詰まりそうな菓子を用意しておきます」
「ありがとう」
珍しく、いや、いつ振りか、時間ぴったりにルーフランはやって来た。
「ああ、時間を取って貰って済まない。プロプラン侯爵家の話を聞いて、慌てて会いに来たのだ」
ルーフランは目を細めてにっこりと笑っており、カナンは嘘くさい笑顔に鳥肌が立ちそうだった。
「王太子殿下も感謝しておられて、感謝を伝えて欲しいと言われてきたのだ」
机の上にはモソモソした粉っぽいクッキーが並べられており、クッキーを食べるか、早く帰って欲しいと心から思っていた。
「リガロ殿から偶然、護衛騎士を見付けられたと聞いたのだが」
「強運だと聞いて、納得したよ。凄いな。あと、ラート語が出来るとは知らなかった、皆が素晴らしかったと言っておった」
何だか今日は妙に話して来る、喉が辛いので、さっさと帰って欲しい。
「王太子殿下が何か褒美をと言ってらっしゃるのだが、何かあるだろうか」
「っえ」
思わず、声が大きくなってしまったが、願いが叶うというのか。そろそろ、言ってみるだけも言ってみた方がいいだろう。
「何かあるだろうか、遠慮なく言って欲しい」
「あなたと私の婚約を解消してください」
「っな、なぜだ」
「なぜ?自分の行ってらっしゃることが、この国では許されても、私には許せることではないからですが?」
「待ってくれ」
「褒美、いただけるんでしょう?くださいませ」
「婚約解消などしない」
「では、婚約破棄」
「破棄もしない」
「それは…別のものでは駄目か」
なぜか目の前のルーフランは絶望的な表情をしており、この男も何も言わないことから、代表だと思っていたのだろうと、蔑みたくなるだけであった。
「だが、カナンは婚約を解消したいと思っているのだろう。このまま帰るわけには」
「今日は帰る、だが、また話をさせて欲しい」
ルーフランは時折、振り返りながら、重い足取りで帰って行った。
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