上 下
11 / 51

サマーパーティー2

しおりを挟む
「で、次はあの子よ、編入生のラシーネ・コルトバ」
「まさか?」
「ええ、自由恋愛派になったみたいよ。ご両親のことも怪しくなって来るわよね」
「嘘だと?」
「全部ではないかもしれないけど、私たちが同情したように、同情したとしたら?どうも、自由恋愛派と反自由恋愛派が、それぞれ彼女に吹き込んでいたようだけど、選んだのは自由恋愛派だったみたい。まあ、婚約者もいないし、あり得ると言えば、あり得るけど」
「相手は?」
「多分、ベーシ伯爵令息」
「うわ、スマック子爵令嬢、療養中じゃない」

 婚約者の自由恋愛のせいで心を病んで療養中なのが、このベーシ伯爵令息の婚約者である、カルミナ・スマック子爵令嬢である。

「寄りにもよってよね、狙っていたとしか思えないわ」
「ええ、婚約者が心壊した男なんて、最悪だものね」
「だから何も知らない彼女に近づいたんでしょうね」
「誰か教えてあげればいいものを…」
「でも心を壊したってペラペラ話すのも気が引けたのかもね」
「それはそうだわ。私も配慮不足だわ、戻ってきた時に知らない人に知られているなんて、嫌よね」

 カルミナは休学としているため、戻って来る可能性はある。

「結構知っているとは思うけど、あまり話すのはね。まあ、これで反自由恋愛派からは総スカンよ。さすがにCクラスがギスギスするでしょうね」
「それはそうでしょうね、彼女にとっては知らない令嬢でも、皆は知っているんだから。その中にはスマック子爵令嬢の友人もいるでしょうしね」

 カルミナが療養に入ってから、ラシーネが編入しているため、同じクラスではあるが、2人は顔を合わせていない。

「知っていたら、さすがによね…」
「でも友人の婚約者となんてことも結構あるらしいじゃない」
「あり得ないわよね…」
「どういった思考なのかしらね、実は嫌いだったとかしかないわよね」
「そういった場合は親が婚約解消に動いてくれるらしいわ」
「でも友人を失って…辛過ぎないかしら?」
「そうね、代償が大き過ぎるわ」
「心の傷もそれこそ、療養が必要じゃない」

 そんなことになれば、心を壊してしまうのも当然だが、これまでも起こっており、起こり得るのが恐ろしいところだ。

「私たちは避暑に行っていて良かったわね、リッツソード侯爵家さまさまよ!すっごく面白かったし」
「ふふっ、それは良かったわ」
「アルームもさすがに参加していなかったようだしね」
「これで参加していたら、どうかしているわよ」

 アルームも去年は友人と参加していた。だがこの状態で、婚約者が参加しないのに、自身だけ参加しているとなれば、ますます立場は危ういだろう。

「でも追い打ち掛けて、やらかしてくれても良かったのだけど」
「それもありだったわね」
「来週辺りで、両家集まって、話し合いになりそうなの。憂鬱で仕方ないわ」
「しっかり戦うのよ!」
「分かっているわ、人生掛かっているんだから」

 その意気だなんて言っていると、カナンの部屋のドアが叩かれ、返事をした。

「やあ、リファ嬢。カナンがいつも世話になっているね」

 部屋のドアを開けたのは、カナンの1つ年上の兄であるリガロである。見た目だけは優しそうで、美しい男である。

「こちらこそお世話になっております」
「兄様、ルビー・プロプラン様のこと聞きまして?」

 兄妹は自由恋愛については意見が合わないが、兄妹としての仲は悪くはない。

「カナンの耳にも入っているのか、参ったな」
「国の問題になるのではなくて?」
「ああ、やってくれたものだよ。捨て身だったんだろうな」
「捨て身?」
「ああ、カナンたちは何と聞いている?」
「ラベック・プレモ様と消えたと、後は護衛騎士と関係を持っていたという噂です」
「前者は合っているが、事情があった。後者は事実だな」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

裏切りの先にあるもの

マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。 結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。

初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。

豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」 「はあ?」 初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた? 脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ? なろう様でも公開中です。

妹に一度殺された。明日結婚するはずの死に戻り公爵令嬢は、もう二度と死にたくない。

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
恋愛
婚約者アルフレッドとの結婚を明日に控えた、公爵令嬢のバレッタ。 しかしその夜、無惨にも殺害されてしまう。 それを指示したのは、妹であるエライザであった。 姉が幸せになることを憎んだのだ。 容姿が整っていることから皆や父に気に入られてきた妹と、 顔が醜いことから蔑まされてきた自分。 やっとそのしがらみから逃れられる、そう思った矢先の突然の死だった。 しかし、バレッタは甦る。死に戻りにより、殺される数時間前へと時間を遡ったのだ。 幸せな結婚式を迎えるため、己のこれまでを精算するため、バレッタは妹、協力者である父を捕まえ処罰するべく動き出す。 もう二度と死なない。 そう、心に決めて。

あなたが私を捨てた夏

豆狸
恋愛
私は、ニコライ陛下が好きでした。彼に恋していました。 幼いころから、それこそ初めて会った瞬間から心を寄せていました。誕生と同時に母君を失った彼を癒すのは私の役目だと自惚れていました。 ずっと彼を見ていた私だから、わかりました。わかってしまったのです。 ──彼は今、恋に落ちたのです。 なろう様でも公開中です。

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

【完結】旦那様は、妻の私よりも平民の愛人を大事にしたいようです

よどら文鳥
恋愛
 貴族のことを全く理解していない旦那様は、愛人を紹介してきました。  どうやら愛人を第二夫人に招き入れたいそうです。  ですが、この国では一夫多妻制があるとはいえ、それは十分に養っていける環境下にある上、貴族同士でしか認められません。  旦那様は貴族とはいえ現状無職ですし、愛人は平民のようです。  現状を整理すると、旦那様と愛人は不倫行為をしているというわけです。  貴族の人間が不倫行為などすれば、この国での処罰は極刑の可能性もあります。  それすら理解せずに堂々と……。  仕方がありません。  旦那様の気持ちはすでに愛人の方に夢中ですし、その願い叶えられるように私も協力致しましょう。  ただし、平和的に叶えられるかは別です。  政略結婚なので、周りのことも考えると離婚は簡単にできません。ならばこれくらいの抵抗は……させていただきますよ?  ですが、周囲からの協力がありまして、離婚に持っていくこともできそうですね。  折角ですので離婚する前に、愛人と旦那様が私たちの作戦に追い詰められているところもじっくりとこの目で見ておこうかと思います。

王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。 目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。 「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」 存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。  王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

処理中です...