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愛さない方がいい

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「この国なんて言われているか知ってる?慰謝料を払わなくても不貞が出来る国ですって。おかげで令息も令嬢も伴侶としては人気がない」
「最低過ぎて、吐きそうね。他国で見付けようにも難しいものね」

 他国で探そうにもペリラール王国の貴族というだけで、いい顔をされない。でも自国の男は自由恋愛、八方塞がりである。

「だから遊びにやって来る人が多いのよ、楽しんで、帰って行く」
「男性は良いけど、女性はそうもいかないんじゃない?この国に来たってだけで疑われるでしょうに」

 ペリラール王国に遊びに行くなどと言えば、不貞を犯しに行くと言っているようなものじゃないか。

「そこはうまくやるんじゃない?はあ…本当に嫌になる」
「私たちみたいに嫌になる人と、諦める人と、受け入れて自分も楽しむ人かしらね」
「ええ、咎められないし、その上、結婚相手は決まっているから、探す必要もない」
「自由恋愛に本気になって、解消ってこともあるけど、稀よね」
「修羅場もあるけどね!結婚は私とするって言ったじゃない、みたいな」

 婚約解消で大喜びする人が時々現れる。嬉しさが抑えきれないのだ。慰謝料も手に入り、自由も手に入れられる。修羅場の方は結婚前だからと、我慢していたのにという怒りが抑えられない。

「貴族なんだから愛だの恋だのよりも、まず誠意を持つべきよね」
「本当よ、不貞がなくて仮面夫婦と、不貞があって仮面夫婦、ない方がいいわよ」
「何だか夢も希望もない2つね。でも好きになって婚約するほど、この国でリスクが高いことはないかもしれないわね」
「確かに、愛さないことがいいだなんて」

 愛してしまえば、相手が自由恋愛をして苦しむことになる。ならば、愛さない、気を許さないことが逃げ道になる。だが人の心はままならない。

「婚約者が自由恋愛して、苦しんでいる人を見るとね…」
「何で好きになっちゃったのよと言いたくなるけど…言えないわよね」

 自由恋愛で泣く令嬢をよく目にする。婚約者に苦言を呈しても、見苦しいと言われて、親に言ってもまだ婚約中だからと言われてしまう。

 仲睦まじい両親であっても、泣く我が子を慰めることしか出来ない。

 この前も婚約者を愛していた令嬢が、婚約者の自由恋愛に心を病んでしまった。両親は、さすがにこのまま結婚させるわけにはいかないから療養させるために、婚約解消を願い出たが、治るまで待つと言われたそうだ。

 自由恋愛をしている者は、自由恋愛が理由の婚約解消は、恥ずかしいことだと思っているのだ。

 彼女は領地に療養に行ったが、婚約者はこんなことで心を壊すなんて、心が弱すぎると周りに言い、こういった横柄な態度に出る方が爵位が上なのである。

「本当なら解消ではなく、破棄してやりたいところを我慢しているっていうのに。それでも私は解消を祈るわ。とは言っても、次の当てもないのだけど」
「結婚するなら後妻とかの方がいいのかもしれないわね」
「ええ、他国でペリラールってだけで嫌な顔をされるのも辛いしね」

 まだまだ現役という他国の男女と会う場合、ペリラール王国の貴族と分かると、言いはしないが、奔放なんでしょうという顔で見られる。

「やっぱり夢も希望もないわね。これが他国なら、婚約者のいない親族を紹介ところなのでしょうけど、結局は同じだもの」
「それを言うなら私もよ」

 親族も結局、自由恋愛をしている、興味本位で数人という者もいれば、存分に楽しんでいる者もいる。とてもじゃないが、婚約者がいなくても、紹介できない。
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