5 / 51
暗き未来
しおりを挟む
「解消が出来なかったら、白い結婚と別居を勝ち取るわよ。カナンもでしょう」
「当たり前じゃない、子どもが可哀想じゃない」
離婚できない期間が設けられるため、身分はそのままに貴族社会から離脱することが多い。王都から離れ、ひっそりと過ごす、2人はそんな生活に憧れている。
「その子どもも、自由恋愛になると思ったら、産めないわよね」
「それよ、男でも女でも同じよね。こうなったら、自分の子じゃないということくらいしか逃げ場なんてないでしょう」
この国は後継者が庶子ということはあり得るのだ。婚約を解消しても続けても、未来は暗い。そんな空気を砕くように扉が開かれた。
「リファ、婚約解消なんて嘘だろう」
「出た、パパがこんなところで、どうされたの?」
リファの婚約者であるアルーム・ビター侯爵令息である。私たちは昼食は個室を借りているので、他に人はいない。
「パ、パパなんてあり得ない」
「あり得ることをしたんでしょう?」
「皆、しているじゃないか」
「あなたが選んで行っただけでしょう?人のせいにするものじゃないわ」
「だが、まだ出来ているか分からない」
婚約者以外に子どもが出来ても、その相手が格上でもない限り、婚約を解消して、責任を取って結婚することはまずない。
では母子はどうなるのか。婚約者同士でも、先に子どもが出来ることは、良いこととされない。しかも自由恋愛の影響から、托卵を疑われてしまう。
それが妻の子ではないとなれば、庶子の待遇も余程でない限りはいいとは言えない。それでも子がおらず、別に養子を取る者が多いが、後継者になれる場合がある、だが後継者になる条件として、母親は切り捨てられることが多い。
「まあ、酷い話ね、親になるというのに」
「だから子どもが出来ているとも、私の子どもだとも決まったわけではない」
あの元貴族の平民は、カナンとリファより2つ年上のキャスティン・ビーガンという男爵令嬢であったが、自由恋愛で自国ではなく、他国の貴族とは知らずに関係を持って、高額の慰謝料を請求され、男爵家は没落した。
借金はなかったが、両親も弟も去って行き、キャスティンは一人になった。酒場で働いている際に、アルームを見付けて、言い寄って関係を持った。
リファは邸に来た際にどこかで見たようなと思っていたが、名前を聞いて、ああと思ったという。
男爵令嬢時代、キャスティンは婚約者はおらず、自由恋愛に託けて、高位貴族を狙っていたが、身体だけで、結婚はおろか愛人にもなれなかった。
キャスティンはアルームを知っていたが、アルームはキャスティンを知らず、たまたま誘われたから手を出しただけであった。リファが婚約者だったことを知っていたために、グランフォード邸に押し掛けた。
あわよくば妻に、愛人にはなれると思っただろうが、まだ妊娠しているか分からないようで、現在侯爵家の手配で病院に入院して、監視されている。妊娠していなかったら、貴族相手の詐欺となり、妊娠していても、托卵の可能性が消えていない。
せめて身分が貴族ならば、子が出来ていれば、愛人という扱いになっただろうが、さすがに平民は何の後ろ盾もない。文句など言えばどうなるか分からない。あまりに危険な賭けにどうして挑んだのか。
平民になっても考えは貴族のままで、子どもを作ってしまえば、自身をどこかの養子にしてもらって、貴族に戻れるとでも思っていたのだろう。
「父親になるのですから、喜ばしいことではありませんか。お幸せに」
「待ってくれ、リファが許せば解消はされないと聞いている」
リファは顔を歪ませた、父がリファが許すのであればと言った可能性はある。
「当たり前じゃない、子どもが可哀想じゃない」
離婚できない期間が設けられるため、身分はそのままに貴族社会から離脱することが多い。王都から離れ、ひっそりと過ごす、2人はそんな生活に憧れている。
「その子どもも、自由恋愛になると思ったら、産めないわよね」
「それよ、男でも女でも同じよね。こうなったら、自分の子じゃないということくらいしか逃げ場なんてないでしょう」
この国は後継者が庶子ということはあり得るのだ。婚約を解消しても続けても、未来は暗い。そんな空気を砕くように扉が開かれた。
「リファ、婚約解消なんて嘘だろう」
「出た、パパがこんなところで、どうされたの?」
リファの婚約者であるアルーム・ビター侯爵令息である。私たちは昼食は個室を借りているので、他に人はいない。
「パ、パパなんてあり得ない」
「あり得ることをしたんでしょう?」
「皆、しているじゃないか」
「あなたが選んで行っただけでしょう?人のせいにするものじゃないわ」
「だが、まだ出来ているか分からない」
婚約者以外に子どもが出来ても、その相手が格上でもない限り、婚約を解消して、責任を取って結婚することはまずない。
では母子はどうなるのか。婚約者同士でも、先に子どもが出来ることは、良いこととされない。しかも自由恋愛の影響から、托卵を疑われてしまう。
それが妻の子ではないとなれば、庶子の待遇も余程でない限りはいいとは言えない。それでも子がおらず、別に養子を取る者が多いが、後継者になれる場合がある、だが後継者になる条件として、母親は切り捨てられることが多い。
「まあ、酷い話ね、親になるというのに」
「だから子どもが出来ているとも、私の子どもだとも決まったわけではない」
あの元貴族の平民は、カナンとリファより2つ年上のキャスティン・ビーガンという男爵令嬢であったが、自由恋愛で自国ではなく、他国の貴族とは知らずに関係を持って、高額の慰謝料を請求され、男爵家は没落した。
借金はなかったが、両親も弟も去って行き、キャスティンは一人になった。酒場で働いている際に、アルームを見付けて、言い寄って関係を持った。
リファは邸に来た際にどこかで見たようなと思っていたが、名前を聞いて、ああと思ったという。
男爵令嬢時代、キャスティンは婚約者はおらず、自由恋愛に託けて、高位貴族を狙っていたが、身体だけで、結婚はおろか愛人にもなれなかった。
キャスティンはアルームを知っていたが、アルームはキャスティンを知らず、たまたま誘われたから手を出しただけであった。リファが婚約者だったことを知っていたために、グランフォード邸に押し掛けた。
あわよくば妻に、愛人にはなれると思っただろうが、まだ妊娠しているか分からないようで、現在侯爵家の手配で病院に入院して、監視されている。妊娠していなかったら、貴族相手の詐欺となり、妊娠していても、托卵の可能性が消えていない。
せめて身分が貴族ならば、子が出来ていれば、愛人という扱いになっただろうが、さすがに平民は何の後ろ盾もない。文句など言えばどうなるか分からない。あまりに危険な賭けにどうして挑んだのか。
平民になっても考えは貴族のままで、子どもを作ってしまえば、自身をどこかの養子にしてもらって、貴族に戻れるとでも思っていたのだろう。
「父親になるのですから、喜ばしいことではありませんか。お幸せに」
「待ってくれ、リファが許せば解消はされないと聞いている」
リファは顔を歪ませた、父がリファが許すのであればと言った可能性はある。
452
お気に入りに追加
2,674
あなたにおすすめの小説
初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。
豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」
「はあ?」
初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた?
脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ?
なろう様でも公開中です。
今夜で忘れる。
豆狸
恋愛
「……今夜で忘れます」
そう言って、私はジョアキン殿下を見つめました。
黄金の髪に緑色の瞳、鼻筋の通った端正な顔を持つ、我がソアレス王国の第二王子。大陸最大の図書館がそびえる学術都市として名高いソアレスの王都にある大学を卒業するまでは、侯爵令嬢の私の婚約者だった方です。
今はお互いに別の方と婚約しています。
「忘れると誓います。ですから、幼いころからの想いに決着をつけるため、どうか私にジョアキン殿下との一夜をくださいませ」
なろう様でも公開中です。
理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました
ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。
このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。
そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。
ーーーー
若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。
作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。
完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。
第一章 無計画な婚約破棄
第二章 無計画な白い結婚
第三章 無計画な告白
第四章 無計画なプロポーズ
第五章 無計画な真実の愛
エピローグ
【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った
冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。
「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。
※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。
傲慢令嬢にはなにも出来ませんわ!
豆狸
恋愛
「ガルシア侯爵令嬢サンドラ! 私、王太子フラカソは君との婚約を破棄する! たとえ王太子妃になったとしても君のような傲慢令嬢にはなにも出来ないだろうからなっ!」
私は殿下にお辞儀をして、卒業パーティの会場から立ち去りました。
人生に一度の機会なのにもったいない?
いえいえ。実は私、三度目の人生なんですの。死ぬたびに時間を撒き戻しているのですわ。
この朝に辿り着く
豆狸
恋愛
「あはははは」
「どうしたんだい?」
いきなり笑い出した私に、殿下は戸惑っているようです。
だけど笑うしかありません。
だって私はわかったのです。わかってしまったのです。
「……これは夢なのですね」
「な、なにを言ってるんだい、カロリーヌ」
「殿下が私を愛しているなどとおっしゃるはずがありません」
なろう様でも公開中です。
※1/11タイトルから『。』を外しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる