183 / 196
マクローズ伯爵家2
しおりを挟む
「だって、素晴らしいご縁だと思ったの」
「本当に、そんなことを…言ったのか?」
「だって、大公閣下夫人だとは知らなくて」
大公閣下夫人だとは思わず話してしまったのは良くなかったが、良い縁談を運んで来たのではないかと、ハイリーは受け取っていた。
「結べたら、大公家の一員になれるのよ?フォンターナ夫人は今でも商会をされているそうだから、いい縁談でしょう?だから勧めたのだけど」
「私のしたことを考えれば、受けるわけないだろう!誰が不貞を働いた夫妻の子を嫁に貰いたいと思うんだ!」
「でっ、でも」
「母上なら父上が不貞を犯して離縁して、不貞相手との子どもと、自分が再婚相手との子どもを結婚させたいと思うか?」
「そ、れは…」
さすがのハイリーも、思わず嫌だと思ってしまった。
「政略結婚にもならない。あちらからしたら何の利益もない相手だからな」
「それは、そんなことないわ」
「そうじゃないか、私の時と同じだろう?マクローズ伯爵家にしか利益なんてなかった!よく結んでくれたものだよ」
「そんなことない!どうしてそんなに卑下するの」
「お金も、商会も、あちらは騎士団長だったのですよ」
地位もお金も、フォンターナ伯爵家の方が、マクローズ伯爵家よりすべて勝っていた。だからこそ、マクローズ伯爵家は目を付けたのに、ハイリーは事実だとしても認めたくなかった。
「でも、エルムさんは」
「大公閣下夫人だ!」
「っ!大公閣下夫人は、ジェフのことを好きだったじゃない」
「それはないだろう」
「いいえ、エルムさんは」
「大公閣下夫人だと、何度言ったら分かるんだ!誰かに聞かれて、相手は王族だぞ!不敬を問われて、母上に責任が取れるのか!」
「ご、ごめんなさい…」
ハイリーも、不敬という言葉に怯んだ。
「でもジェフのことが好きだから、何も言わなかったのよ」
「そうだとしても、過去のことだ。しかも、あんな風に邪険にして、婚約破棄して、国からも出て行き、憎まれて当然だろう?」
「でも、一度は好意を持ってくれた相手なら、優しくしてあげたいと思うでしょう」
「はあ…そうではないことは分かっているだろう?呆けたのか?」
「ジェフまでなんて酷いことを言うの!」
エルムに散々言われて、ハイリーは呆けたのかに過剰に敏感になっていた。
「ディールは、アジェル王国をあなた方のせいで見限ったと言われたのよ!それがショックだったの」
ハイリーは伏し目がちに、辛そうに吐露した。
「当然だろうな」
「え?ジェフは知っていたの?」
「この前、王太子殿下にお聞きしたよ。ディールが、アジェル王国に商会を置くことは二度とないと」
「でもあちらだって商売なのに」
「商売だからこそ、信頼の出来ない国には出さないということだよ」
ディールはアニバーサリーを通じて、アジェル王国を見限った。フォンターナ家が出て行ったのだから、当然だろう。
「でも」
「現在、オルタナ王国にあるフォンターナ家の商会はディールの商会で、大公閣下夫人と兄君が経営されている」
「………え」
「あちらに移ったということだよ」
「え、大公閣下夫人が?」
「ああ」
「フォンターナ夫人が…商会をされていると」
ハイリーはオルダ夫人が今でも商会をされていると聞いて、また融通して貰いたいと強く思った。だから、エルムは関わっていないと考えていた。
「今でも手伝ってらっしゃるのだろう、大公閣下夫人がおっしゃったのならば、経営者の言葉だよ」
「そんな…じゃあ、大公閣下夫人なのに商会を…」
「そう言っているじゃないか」
「じゃあ!アニバーサリーは…お願いしたのに」
「お願い?」
「アニバーサリーだけでも戻してくださらないかと、お願いしたの」
「は?」
再びジェフは、愚かなハイリーに言葉を失うことになった。
「本当に、そんなことを…言ったのか?」
「だって、大公閣下夫人だとは知らなくて」
大公閣下夫人だとは思わず話してしまったのは良くなかったが、良い縁談を運んで来たのではないかと、ハイリーは受け取っていた。
「結べたら、大公家の一員になれるのよ?フォンターナ夫人は今でも商会をされているそうだから、いい縁談でしょう?だから勧めたのだけど」
「私のしたことを考えれば、受けるわけないだろう!誰が不貞を働いた夫妻の子を嫁に貰いたいと思うんだ!」
「でっ、でも」
「母上なら父上が不貞を犯して離縁して、不貞相手との子どもと、自分が再婚相手との子どもを結婚させたいと思うか?」
「そ、れは…」
さすがのハイリーも、思わず嫌だと思ってしまった。
「政略結婚にもならない。あちらからしたら何の利益もない相手だからな」
「それは、そんなことないわ」
「そうじゃないか、私の時と同じだろう?マクローズ伯爵家にしか利益なんてなかった!よく結んでくれたものだよ」
「そんなことない!どうしてそんなに卑下するの」
「お金も、商会も、あちらは騎士団長だったのですよ」
地位もお金も、フォンターナ伯爵家の方が、マクローズ伯爵家よりすべて勝っていた。だからこそ、マクローズ伯爵家は目を付けたのに、ハイリーは事実だとしても認めたくなかった。
「でも、エルムさんは」
「大公閣下夫人だ!」
「っ!大公閣下夫人は、ジェフのことを好きだったじゃない」
「それはないだろう」
「いいえ、エルムさんは」
「大公閣下夫人だと、何度言ったら分かるんだ!誰かに聞かれて、相手は王族だぞ!不敬を問われて、母上に責任が取れるのか!」
「ご、ごめんなさい…」
ハイリーも、不敬という言葉に怯んだ。
「でもジェフのことが好きだから、何も言わなかったのよ」
「そうだとしても、過去のことだ。しかも、あんな風に邪険にして、婚約破棄して、国からも出て行き、憎まれて当然だろう?」
「でも、一度は好意を持ってくれた相手なら、優しくしてあげたいと思うでしょう」
「はあ…そうではないことは分かっているだろう?呆けたのか?」
「ジェフまでなんて酷いことを言うの!」
エルムに散々言われて、ハイリーは呆けたのかに過剰に敏感になっていた。
「ディールは、アジェル王国をあなた方のせいで見限ったと言われたのよ!それがショックだったの」
ハイリーは伏し目がちに、辛そうに吐露した。
「当然だろうな」
「え?ジェフは知っていたの?」
「この前、王太子殿下にお聞きしたよ。ディールが、アジェル王国に商会を置くことは二度とないと」
「でもあちらだって商売なのに」
「商売だからこそ、信頼の出来ない国には出さないということだよ」
ディールはアニバーサリーを通じて、アジェル王国を見限った。フォンターナ家が出て行ったのだから、当然だろう。
「でも」
「現在、オルタナ王国にあるフォンターナ家の商会はディールの商会で、大公閣下夫人と兄君が経営されている」
「………え」
「あちらに移ったということだよ」
「え、大公閣下夫人が?」
「ああ」
「フォンターナ夫人が…商会をされていると」
ハイリーはオルダ夫人が今でも商会をされていると聞いて、また融通して貰いたいと強く思った。だから、エルムは関わっていないと考えていた。
「今でも手伝ってらっしゃるのだろう、大公閣下夫人がおっしゃったのならば、経営者の言葉だよ」
「そんな…じゃあ、大公閣下夫人なのに商会を…」
「そう言っているじゃないか」
「じゃあ!アニバーサリーは…お願いしたのに」
「お願い?」
「アニバーサリーだけでも戻してくださらないかと、お願いしたの」
「は?」
再びジェフは、愚かなハイリーに言葉を失うことになった。
3,870
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄、その後の話を誰も知らない
あめとおと
恋愛
奇跡によって病を癒す存在――聖女。
王国は長年、その力にすべてを委ねてきた。
だがある日、
誰の目にも明らかな「失敗」が起きる。
奇跡は、止まった。
城は動揺し、事実を隠し、
責任を聖女ひとりに押しつけようとする。
民は疑い、祈りは静かに現実へと向かっていった。
一方、かつて「悪役」として追放された令嬢は、
奇跡が失われる“その日”に備え、
治癒に頼らない世界を着々と整えていた。
聖女は象徴となり、城は主導権を失う。
奇跡に縋った者たちは、
何も奪われず、ただ立場を失った。
選ばれなかった者が、世界を救っただけの話。
――これは、
聖女でも、英雄でもない
「悪役令嬢」が勝ち残る物語。
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~
水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」
夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。
王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。
「左様でございますか」
彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【3月中ーー完結!!】
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
二十年の裏切りの果て、その事実だけを抱え、離縁状を置いて家を出た。
そこで待っていたのは、凍てつく絶望――。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と縋られても、
死の淵を彷徨った私には、裏切ったあなたを許す力など残っていない。
「でも、子供たちの心だけは、
必ず取り戻す」
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔い、歪な愛でもいいと手を伸ばした彼女が辿り着いた先。
それは、「歪で、完全な幸福」か、それとも――。
これは、"石"に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる